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朝日新聞社

抜け出せ「ぬるま湯の育成」 20年目のJリーグ

初出:2011年3月1日〜3月3日
WEB新書発売:2011年3月11日
朝日新聞

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〈ユース一貫指導〉ぬるま湯の育成、さらば/柏、入れ替えで競争促す
〈プロのクラブ経営〉身の丈伸ばせ、強くなれ
〈地域が育むクラブ〉人とのつながり広がった




 

〈ユース一貫指導〉ぬるま湯の育成、さらば/柏、入れ替えで競争促す

 日本のアジア杯優勝で、気を引き締めた人がいる。上野山信行・Jリーグ技術委員長は「日本代表選手を多く育てているのは高校の先生たち。我々Jリーグによる育成は指導力に課題がある」と語った。

 中高時代をJリーグのユースチームで育った日本代表選手は、増えてはいるがまだ少ない。5年前のW杯ドイツ大会は登録23人中6人。2010年のW杯南ア大会は7人。今度のアジア杯は9人だった。
 「一貫指導の選手育成」を参加条件の一つにJリーグクラブが設立された20年前、学校の指導者もJリーグの関係者も、選手の供給源はJリーグのユースが中心になっていくと予想した。だがJリーグユースの現状は「いい素材を集めているが育てていない」(上野山委員長)。
 強豪国ドイツで、若い代表選手が育たない問題が深刻化したことがある。1980〜90年代だ。大きな原因は育成担当のコーチの力不足だとされたが、それだけではなかった。プロが有望株をかき集めた結果、試合に出られずに経験が不足して伸び悩む選手が増えた。大人の指導抜きでプレーした経験がない選手が多くなり、創造的なプレーが減り、問題解決能力や忍耐力などが低くなった。ドイツサッカー連盟はそうした現象をつかんだ上で、育成年代の指導力向上に取り組んだ。若手の活躍が目立ったW杯南ア大会の3位はその成果だ。
 ドイツの例とJリーグが直面する問題には共通点がある。力のある指導者はプロのトップチームに行き、育成には経験や指導技術が未熟なコーチがあたることが多いこと。集めすぎや教えすぎの弊害も似ている。
 しかし、大きく異なる点もある。ドイツの事情を調査した福岡大の藤井雅人准教授がこう指摘する。「ドイツは地域のクラブがプロを頂点にしたピラミッドを作り、プロのユースチームは常に新しい選手を試す。毎年選手の入れ替えもある。全体が大きな一貫指導になっていて競争原理も厳しい。日本は自前で育てる『小さな一貫指導』しかやっていない。大きなシステムも競争も欠けている」
 Jリーグのユースは狭き門だが、入ってしまえば中学、高校の各3年間はチームから外されることがないのが通例。この「ぬるま湯」がドイツをはじめとした欧州や南米の育成現場と決定的に違う。わかっている関係者は少なくない。だが、外された側の反発や周囲の風評を恐れ、変えられないと嘆く声ばかりだ。
 今、そこに挑戦しているのは柏。小中学生のチームを持つ周辺の10クラブと提携し、いい選手がいれば柏に迎え入れ、外した選手は提携クラブで再浮上を支援・・・

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