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政治・国際
朝日新聞社

大金入って感覚マヒ  八ツ場ダムの地元の町

初出:2011年3月4日
WEB新書発売:2011年3月18日
朝日新聞

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 首都圏の水がめと洪水への備えとして計画が進められながら、民主党政権の迷走で中止か建設か方向が見えない八ツ場ダム。予定地の群馬県長野原町は人口約6300人、過疎が進む山あいの小さな自治体だ。建設受け入れから25年、町の財政は流入する巨額のダム事業費に翻弄(ほんろう)されてきた。ダムの陰に隠れた町づくりの課題を考える。


巨額の金流入、感覚マヒ

 「長野原(の財政)は、いいと言うじゃないか」。公民館に集まった住民は皆けげんな顔をして声をあげた。
 2004年10月、町職員が町内を回り「町の財政は実は非常に悪い。行政改革が必要です」と説明したときのことだ。近隣町村との合併協議が破綻(はたん)、町はやむなく自立の道を選んだ。住民説明会はその直後だった。
 町財政の実態は1年余りの合併協議の過程で明らかになっていった。町によれば、一部の財政担当者はその前から、まずいと薄々気づいていた。だが多くの職員と住民は「町に金はある」と思いこんでいたという。
 ダム関連工事が始まる90年代まで、町の歳入・歳出は35億円ほどだった。人口7千人程度の自治体としてはごく標準的な規模だ。それが次第に増加。ダムによって水没する世帯などへの補償基準に住民と国土交通省が01年に合意し、用地交渉や工事が本格化すると70億〜85億円と2倍以上に膨らんだ。


 膨らませているのは東京、群馬、埼玉、千葉、茨城の1都4県の負担金だ。ダムによる利水の受益者が町の「振興」のために支払う金で、道路や公共下水道、保育所などに使われる。多い年で約30億円、総額で500億円を超える見込みだ。町は95年度から受けとり始め、04年度以降は地方税や地方交付税を上回る歳入の柱になっている。
 負担金が入り始めると、町の財政運営は強気になった・・・

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