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医療・健康
朝日新聞社

高額医療費どう工面  〜患者力アップ作戦〜

初出:2010年8月19日〜10月21日
WEB新書発売:2011年4月8日
朝日新聞

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【お金】
 治療進歩、かさむ出費
 公・民の保険活用を
 「障害年金」がん適用可
【闘病記】
 「読む薬」の効き目
【入院】
 闘う備え、物心両面
 見舞い、花より現金
【お便りから】
 入院の「教訓」切々
【食事】
 おいしく治す心得
 患者向けメニュー、おいしさ制限なし
【お便りから】
 良薬は知恵と工夫


【お金】 治療進歩、かさむ出費/悪性リンパ腫「半年で168万円」

 いざ病気になったとき、医師や治療の質だけでなく、患者や家族が病に向き合う力を育むことも大切です。これを「患者力」ととらえ、役立つ方策や心構えを、患者の「先輩」たちに学びつつ、シリーズで考えていきます。まずは、お金の話から。
 「いい薬ができたんですが、1本30万円するんですよ。払えますか?」
 広島市内の病院の診察室。医師から告げられた時、広島県廿日市市の自営業、中川久美子さん(47)は、隣に座っていた妹と顔を見合わせた。
 「30万、ですって」
 血液のがん「悪性リンパ腫」と診断されたのは2004年2月。当時、保険が適用されたばかりの薬「リツキサン」と従来の抗がん剤を組み合わせる最新の治療法だと言われた。
 「お金は何としても集めます」と、3月に治療を開始。約1カ月半入院した後、8月まで、約3週間おきに通院し、点滴を受けた。
 「30万円」といっても、実際には医療保険が適用されるため、7割はカバーされるが、抗がん剤と合わせ、1回の投与で約13万円を窓口で払った。ほかにも白血球を増やす薬や副作用を抑える薬代、複数の検査や診察料なども合わせ、外来で払った総額は115万円にのぼる。入院代(約53万円)も加えると、半年間の窓口での支払総額は約168万円になった。
 中川さんは「患者同士でつながりたい」と同年、悪性リンパ腫の患者団体「グループ・ネクサス」(本部・東京)に参加。08年秋には、広島支部を立ち上げた。世話人として、患者から治療費の相談をしばしば受ける。中川さんがかかった悪性リンパ腫のタイプは、今も同じ治療法で始まるという。「私が払った額は、これでも少ない方です」
 高額な治療費をどう工面したのか。
 まず、月々の治療費が一定額を超えると、一部が戻ってくる「高額療養費制度」を申請した。これで自己負担約168万のうち、77万円余りが戻ってきた。
 残りは、たまたま民間保険会社のがん保険に「つきあいで入っていた」ため、入院などの保険金が支給され、なんとかカバーできたという。
 治療のおかげで、完治した中川さん。一方、数年単位という長期の治療が必要な乳がんにかかった友人が、「飲んでもダメかもしれない」という思いの一方、苦しい家計の中からやりくりして治療費を工面しているのも見ている。「確実に治る薬が少ないがん患者の場合、高い費用と効果をてんびんにかけてすごく悩んでしまうんです」

高額療養費制度、知らない例も
 がん治療が進歩し、少ない副作用で進行を抑える特効薬が登場する一方、治療の長期化で出費がかさむ問題が出てきた。
 例えば、慢性骨髄性白血病の進行を抑える「グリベック」。骨髄移植をしない限りほとんど治らないとされたこの病気の治療を変えた。服用開始から5年後も多くの患者が再発しないなど、寿命が大幅に伸びた。
 ネックは価格の高さだ。1錠の薬価は2750円。患者や容体にもよるが、これを毎日4錠ほど飲む。保険による自己負担額は薬代だけで1日3300円、1カ月で10万円を超える。服用をやめれば再発のリスクが高まる。
 がん以外でも、医療費は高くつく。日本人に多い主な病気の医療費のモデル例をまとめてみた。手術入院で100万円を超える例は珍しくないことが分かる。
 高額治療の負担を少しでも少なくするための高額療養費制度は、申請が必要だ。
 08年に夫をがんで亡くした島根県益田市の主婦(59)は05年、夫が地元の病院に入院した当初、この制度を知らないまま、治療費や入院費を払っていた。制度を教えてくれたのは、大部屋の患者仲間。インターネットで申請先などを調べてくれた。「最初はそういうことに気が回らない。なぜ病院が教えてくれないのかと思った」と振り返る。
 入院の場合、70歳未満なら事前に申請すれば病院窓口での立て替え払いは必要なくなった。だが、通院はまだ立て替えが必要だ。過去2年分まで申請できるが、支給は申請の約3カ月後。その間の立て替えも無視できない額だ。
 高額療養費制度については、使い勝手の悪さを改善するよう求める患者団体の要望や国会での指摘が相次ぎ、国も7月、制度を見直す話し合いを始めた。・・・

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