【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

政治・国際
朝日新聞社

19グラムの「鳥」がスパイ撮影  米国のテロ対策

初出:2011年4月5日〜4月8日
WEB新書発売:2011年5月2日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

◇危険任務、無人機が代替/米軍、「対テロ戦争」機に導入拡大
◇「逃げても追跡」/市民巻き添えも
◇想定外の兵器 国際法修正が必要
◇科学VS.発想の攻防
◇プリンター用品を爆弾に/空港検査の死角突く
◇「温床」となる騒乱予測も/先端研究、企業は尻込み
◇米国市民に監視の目/イスラム教徒の車にGPS
◇街角にカメラ・ネット傍受/情報収集 手当たり次第


危険任務、無人機が代替/米軍、「対テロ戦争」機に導入拡大

 大地震と津波による原発事故に見舞われた日本と、米英仏主体の多国籍軍の軍事攻撃を受けた北アフリカのリビア。米軍は3月、両国上空に、同じ最新鋭兵器を投入した。
 無人偵察機グローバルホーク(全長13メートル、全幅35メートル)。1万8千メートルの高高度で飛行し、最大で500キロ以上離れた対象物を偵察できる。遠隔操作される無人機は、福島第一原発上空を飛んでも、パイロットの被曝(ひばく)を恐れる必要はない。リビアでは、カダフィ政権の地上部隊の動きを長時間偵察できる。
 「私は中央情報局(CIA)長官だった1990年代初頭、無人機の開発を後押しした。用途が多彩で危険も少ないからだ」。ゲーツ米国防長官は3月上旬、米空軍士官学校での演説で無人機への思い入れを語った。
 10年前、米軍の目標は「2020年に無人機80機導入」だったが、今や空軍だけでも偵察機グローバルホークと攻撃機のプレデター、リーパーを合わせて計258機を運用している。
 開発が進んだきっかけは、01年9月の米同時多発テロと、その後の「対テロ戦争」だ。キーワードは「三つのD」。ダル(退屈)、ダーティー(汚染)、デンジャラス(危険)の頭文字だ。
 アフガニスタンとイラクの「二つの戦争」で、米国は広大な山岳地帯や砂漠に潜伏する武装勢力と戦ってきた。「見えない敵」の動きを追う偵察飛行は最長で連続44時間。兵士には「退屈」で過酷な任務だ。核テロへの対処や核兵器の投下後では「汚染」が懸念され、仕掛け爆弾(IED)には「危険」がつきまとう。無人機や軍事用ロボットは、戦場の兵士が直面する負担やリスクを大きく減らす効果が期待された。
 アフガンとイラクでの二つの戦争で、米兵の死者は計6千人近い。イラクの米兵死者が累計で3千人を超えた06年は、米議会中間選挙で当時の与党共和党が大敗し、ブッシュ前政権を揺さぶった。
 その直後に就任したゲーツ長官は、陸海空各軍で兵器の無人化を推進。07年末に無人機開発のロードマップをまとめた。そこには、米兵の死に伴う政治的なリスクを避けたいという思惑もにじむ。無人機は米国本土から操作できるため、米軍は海外駐留の人員削減が可能だ。
 国防総省はメリットが多い無人機の開発を精力的に進めている。11年2月には、ハチドリに似せた試作機が登場。太陽光発電で動く機体は、ビデオや通信機器を含めてわずか19グラム。鳥のように飛びながら、ビデオ撮影もできる。

 米空軍の資料によれば、今世紀半ばにはハエや蛾(が)に似た超小型無人機も開発される。体にまとわりつく小さな「虫」が、極秘の盗聴や撮影、殺害の任務を負っている、という未来が近づいている・・・

このページのトップに戻る