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朝日新聞社

放射線、国が隠すなら市民が見張る  〜英仏の教訓〜

初出:2008年8月11日〜8月16日
WEB新書発売:2012年9月14日
朝日新聞

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◇放射線、市民が見張る
◇海を汚した再処理工場
◇「最終処分は研究地で」
◇高速増殖炉、夢の跡
◇廃炉に800億円、重いツケ


放射線、市民が見張る

 フランス南東部の小都市バランスにある雑居ビルの4階。廊下の壁に核物理学の基礎を教えるポスター。事務室には「トリチウム」「セシウム137」など放射性元素の名が書かれたファイルが並んでいた。
 非政府組織「クリラッド」の本部。国や電力事業者とは一線を画し、中立で第三者的立場から放射線を監視・分析する市民団体だ。
 86年6月に設立された。その2カ月前、旧ソ連でチェルノブイリ原発事故が発生し、欧州は空から降り注ぐ放射性物質の恐怖に包まれた。すでに国内電力の6割以上を原発に頼っていた仏政府は、放射能を含む雲の接近や汚染濃度をなかなか公表せず、市民らの反発を招いた。
    ■    ■
 「国が隠すのなら、市民が正しい情報を得るために独立した研究所を作る必要があった」。クリラッドのロラン・デボルデ会長(63)は、そう振り返る。設立メンバーは物理学者や生物学者、医師、看護師ら10人だった。

 設立1年で会員は千人を超え、現在は約4千人。運営費は年間約67万7千ユーロ(約1億1千万円、07年)。4割を会員が出す会費で、6割を放射線の監視・分析活動による収入などで賄っている。
 各地の市民団体だけでなく、自治体、企業など年間延べ200〜300団体から依頼を受けて調査する。最も簡単な調査で100ユーロ(約1万7千円)。地域全体の汚染を調べるため、土や水、空気のほか、草花や犬や猫の毛などまで採取・分析する大規模調査では1万ユーロ(約170万円)を超えることもある。
 調査結果が、国や原子力事業者の発表と食い違うことも少なくない。最近では、仏中部のウラン鉱山跡地の駐車場で、自然放射線量の数倍となる毎時1マイクロシーベルトを観測。「放射線の問題はない」としていた事業者を、前言の撤回に追い込んだという。
 「彼らは比較的放射線量が少ない場所を知っているんだ」とデボルデ会長。「こちらは、少し離れた地点を調べる。数メートル離れるだけで全然違う結果になることもある・・・

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