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スポーツ
朝日新聞社

球の縫い目、見えた 球児たち鍛える野球部の「秘伝特訓法」

初出:2011年7月4日〜8日
WEB新書発売:2011年7月27日
朝日新聞

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◇姫路南・スリッパノック
◇神戸弘陵・綱登り
◇明石商・肩体操
◇三田松聖・眼球運動
◇市川・メンタルトレーニング

 「スリッパノック」に始まり「眼球運動」、「メントレ」にはたまた「綱登り」。それぞれのチームにそれぞれの個性があるように、練習方法も千差万別。甲子園を地元にもつ兵庫県各地の野球部をたずね、各校秘伝のユニークな特訓法を追った。


きれいな捕球、追及 姫路南・スリッパノック

◆心得
一、バウンドを読み、最も捕球しやすい位置で打球を迎える
一、スリッパの底を正面に向け、中心で打球を受け止める
一、同時に右手でしっかりボールをつかむ


 本塁上から次々放たれる鋭いゴロを、内野手らが懸命に追う。打球の正面に走って、がっちりキャッチ。だが、よく見ると、内野手の手にはグラブがない。代わりにはめているのは、ビニール製のスリッパだ。

 幅の狭い薄い靴底で打球を受け止め、素早く右手を添えてボールをつかむ。時折、打球が底をはじくと、すかさず吉本純也監督(37)の叱責(しっせき)が飛ぶ。「下手なんがようわかるぞ!」
 これが、5年前に就任した吉本監督が県立姫路南高校野球部で採り入れている名物練習「スリッパノック」である。
 2年生の冨祐磨(とみゆうま)君は入部当初、あまりに奇抜なこの練習に面食らった。小5で野球を始め、中学時代は三塁手。守備には自信があったが、勝手が違った。
 打球はことごとく底をはじき、夢中でつかもうとするほど失敗を繰り返す。「一番嫌いな練習メニュー」になりかけたころ、監督から声をかけられた。
 「違う。これはやみくもにとるための練習じゃなくて、きれいな捕球の形を作るための練習なんや」
    ◇
 きれいな捕球の形とは何か。
 ゴロが来ると内野手はまず、体の正面で打球を迎えられるよう移動し、腰を落とす。グラブは寝かさず、手のひら部分をしっかりと立て、その中心に打球を収める。と同時に、右手でグラブにふたをする。これが捕球の基本動作だ。
 でも実際には、こうした基本が少々おろそかでも、グラブの性能のお陰で捕球できてしまうことが多い。スリッパだと、靴底の角度が少しぶれただけで球がはじかれる。ごまかしのきかない条件下で技術の未熟さをあぶり出し、基本を徹底させる。それが、この練習の狙いなのだ。
 同じように捕球の精度を上げる練習として、幅の小さい市販のミニグラブを使ったり、四角い板を手のひらに装着したりしてノックを受ける方法がある。
 だが、吉本監督は言う。
 「ミニグラブは買わなきゃいけないし、板は打球が当たると響いて痛い。その点、スリッパの底は・・・

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