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朝日新聞社

カルト再燃 スピリチュアルと名を変えて

初出:2011年11月22日、11月23日〜25日
WEB新書発売:2012年6月15日
朝日新聞

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 95年に社会を揺るがしたオウム真理教事件。宗教団体が犯罪集団に姿を変え、「無差別テロ」まで引き起こした事件の後、姿を消していた「オカルト」が復活しつつある。カルト教団や精神世界に多くの厳しい目が注がれたあの時代は、過去のものなのか。

◇スピリチュアルと名を変えて/「オカルト」オウム後再燃
◇ネット布教 心の隙つく
◇ボランティア通じ隣に
◇テロ対策、オウムが変えた/自衛隊と警察連携・「カルト」捜査


スピリチュアルと名を変えて/「オカルト」オウム後再燃

 2011年11月の週末、北陸に住む主婦(46)は「スピリチュアル」をテーマにしたブースが並ぶ大阪市内のイベント会場を訪れた。
 《天使や守護霊のメッセージをお伝えします》《未来を知りたくないですか》
 ブースには、いろいろなうたい文句が掲げられている。会場を歩き回り、そのうちの一つのブースで腰を下ろした。外出時にいつも、ガス栓が閉まっているか気になって仕方がない――。そう相談すると「不慮の事故で人を死なせた過去世(かこぜ)の記憶が原因」と指摘された。ふっと、涙が出た。
 こうしたイベントは、大小さまざまなものが毎月のように全国のどこかで開かれている。企画会社や代理店が会場を設け、業者が出展料を払ってブースを出す。20分3千円ぐらいと、ふだんの営業より安い料金でサービスを体験してもらう仕組みだ。
 この主婦がイベントに足を運び始めたのは2003年ごろから。1990年代中ごろに精神世界の分野に興味を覚えたが、以前は知人に話すのが気恥ずかしかった。それがスピリチュアルという言葉が一般的になるにつれ、抵抗感は薄らいできた。「10年前に比べたらずいぶん市民権を得た。いい時代になりました」。満足そうに会場を後にした。
 スピリチュアル=「精神的」「霊的」。広辞苑にそんな説明が登場したのは、98年発売の第5版だ。08年の第6版で「宗教的」が加わった。
 ――霊視ができるのですか。
 「はい。まあ予知なんですけど、例えば花嫁姿が見えたら、『ああこの人結婚するな』とか」
 ――過去も。
 「はい。未来のことは7割ぐらい。過去については外さないと思います」
 11年10月中旬、名古屋地裁の法廷で「霊能力者」の女性(59)がそう説明した。
 霊能力者は、主宰する宗教法人の幹部らとともに10年1月、提訴された。訴えたのは、名古屋市の女性(51)。「霊がついている」などと不安や恐怖心をあおり、不当に高額な金を受け取ったとして損害賠償を求めた。宗教法人側も「自由意思に基づく依頼に応えたものだ」として女性を訴えている。
 女性が霊能力者を知ったきっかけは、02年に見た民放テレビの人気番組だった。女性は自分と子どもの病気や家族間のトラブルで悩んでいた。霊能力者のおかげで難病を克服したとする弟子が紹介されたのを見て、連絡を取った。
 95年に社会を揺るがしたオウム真理教事件の後、いわゆる「オカルト」や精神世界を扱う番組は、テレビ界から姿を消した。教団が「空中浮揚」などの能力を宣伝して飛躍的に信徒を増やした経緯があったからだ。
 2000年代に入ると、民放各局でそうした番組は復活し、スピリチュアルブームが巻き起こる。女性が見たのもその一つだった。
 「スピリチュアルという言葉に置き換わっただけで、本質は同じ」。08年に「テレビと宗教」を著した国学院大・石井研士教授(宗教学)は言う。「イメージがソフトで引き寄せられやすい分、新たな事件の土壌になりかねない危うさの広がりを感じる」
 《手をかざすだけでゆがんだ頭蓋骨(ずがいこつ)を整える》《飼っているペットの声を伝える》《足首を数十分持つだけで悪い物を排出する》
 科学や医学では説明のつかない宣伝文句が飛び交うイベント会場。あるイベントの関係者は話した・・・

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