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朝日新聞社

終わらぬオウム事件 「納得できたことなんて、一つもない」

初出:2011年11月15日〜11月25日
WEB新書発売:2012年6月15日
朝日新聞

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 無差別殺人などいくつもの凶悪犯罪に突き進んだオウム真理教。その刑事責任を問う裁判が幕を下ろした。戦後史に残る事件は、多くの人生を狂わせ、社会の形も変えた。同教団が起こした一連の事件が過去の出来事になりつつあるなか、被害者遺族の思いは――。

◇16年半かけたオウム裁判
◇事件なぜ 傍聴16年
◇「サリン計画 肯定し続けた
◇被告の母に「同じ被害者」
◇「事件 まだ現在進行形」
◇親のつらさに思いはせ
◇慰霊柱 快諾の優しさに
◇両親の手記連載に反響
◇追悼演奏会 遺族と「絆」
◇市民の手で継続へ奔走
◇合唱に児童 意味も伝え
◇魚津の人の情熱支えに


16年半かけたオウム裁判

 オウム真理教による一連の事件の刑事裁判が11年11月21日、元幹部・遠藤誠一被告(51)の死刑を確定させる最高裁判決によって終結した。教団元代表の松本智津夫死刑囚(56)が1995年5月に逮捕されてから16年半。幹部や信徒ら計189人が罪に問われた歴史的な裁判を振り返る。

■起訴された189人の裁判結果
死刑        13人
無期懲役       5人
〜懲役20年     2人
〜懲役15年     4人
〜懲役10年    13人
〜懲役 5年    15人
〜懲役 3年    26人
〜懲役 2年    20人
執行猶予つき懲役刑 87人
罰金         3人
無罪         1人
【計】       189人


◎死刑は13人に
 裁判ではこれまでに元幹部11人の死刑が確定。11年11月18日に上告審判決が言い渡された中川智正被告(49)と遠藤被告の刑の確定で13人となる。一つの組織が起こした事件での死刑確定者数としては戦後最多だ。無期懲役の5人と合わせた計18人は、坂本堤弁護士一家殺害、松本、地下鉄両サリンの3事件のいずれかにかかわっている。


 13事件で計27人を死なせた罪に問われた「教祖」の松本死刑囚の公判は、東京地裁で96年4月に始まり、257回に及んだ。松本死刑囚は当初、「地下鉄サリン事件は(弟子たちに)ストップを命令したが、彼らに負けた」などと自らの責任を否定。弁護側も「弟子の暴走だ」と強調した。
 「この裁判は異常だ」「ここは劇場じゃないか。死刑なら死刑でいい」などと冗舌だった松本死刑囚はその後、「教祖の指示」があったことを告発する弟子の証言が相次ぐと、次第に何も語らなくなった。
 04年2月の一審判決は「弟子の暴走」論を否定し、すべての事件で松本死刑囚の指示を認定した。「一連の犯行の首謀者」と位置づけ、両サリン事件について「不特定多数への無差別テロ」と断じた。
 その後、弁護側が「被告と意思疎通ができない」として期限までに控訴趣意書を提出しなかったため、東京高裁は控訴を棄却。裁判は打ち切られ、松本死刑囚の死刑が確定した。
 他方、二審で死刑とされた元幹部12人は上告。松本死刑囚によるマインドコントロールの影響や共謀の有無などを争ったが、結論は全員、変わらなかった。

◎未解明事件も
 捜査と裁判で解明できなかった疑問も残っている。
 95年3月、地下鉄サリン事件の10日後にオウム事件の捜査を指揮する警察庁トップの国松孝次長官(当時)が銃撃された。
 翌年5月に教団信徒だった元警視庁巡査長が「自分が撃った」と供述。警視庁は04年7月に元巡査長と教団元幹部ら4人を殺人未遂などの疑いで逮捕したが、供述があいまいで不起訴となり、10年3月、時効が成立した。同庁は「オウム真理教による組織的なテロ」との見方を崩していないが、誰が何のために襲撃したのかは、謎のままだ。
 95年4月に東京・青山の教団総本部前で起きた村井秀夫幹部(当時)の刺殺事件も「何者かが実行犯に殺害を指示したのでは」との見方が絶えない。村井幹部は松本死刑囚の側近だったことから、「殺害は口封じ」との説もあったが、教団は関与を否定した。



◎司法改革促す
 松本死刑囚の裁判は起訴された事件数が17と多かった。検察側は審理を速めるため、薬物関連の4事件の起訴を取り消す異例の対応をしたが、一審判決までに7年10カ月かかった。
 長い裁判への批判が高まり、99年から始まった政府の司法制度改革審議会で議論された結果、公判前に争点を整理する手続きが導入され、「一審は原則2年」とする法律ができるなど、事件は刑事裁判の進め方を見直すきっかけになった。


事件なぜ 傍聴16年

 無差別殺人などいくつもの凶悪犯罪に突き進んだオウム真理教。その刑事責任を問う裁判が11年11月21日、幕を下ろした。戦後史に残る事件は、多くの人生を狂わせ、社会の形も変えた。被害者遺族の思いは――。



「誰が本当のこと言ったのか」

〈地下鉄サリン事件・高橋さん〉

 「反省や謝罪のかけらもない被告で裁判が締めくくられた。これがオウム裁判だと改めて思った。自分かわいさ、責任の押しつけ、死刑逃れ……。誰が本当のことを言っているのか分からなかった。人生を狂わせられ、いまも苦しむ人がいることを、被告たちに知ってほしい・・・

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