【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

社会・メディア
朝日新聞社

独裁者と呼ばれて 渡辺恒雄「僕は民主的だよ」

初出:2011年11月28日
WEB新書発売:2011年12月9日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 「最後の独裁者」、あるいは「メディア界のドン」「政界フィクサー」。人々は畏怖(いふ)の念を込めてこう呼ぶ。読売新聞グループ本社会長・主筆の渡辺恒雄氏(85)が、「清武の乱」への反論から、混迷する政治、そして東日本大震災と世界経済危機という国難に直面する中でメディアの果たすべき役割まで、2時間半にわたり熱く語った。

◇清武の乱――僕は民主的だよ 感情と評価は別、「江川監督」もある
◇政治と報道――社論実現のための助言は正義
◇経済危機――各新聞社と共同提言出したい


清武の乱――僕は民主的だよ 感情と評価は別、「江川監督」もある

 ――読売巨人軍の代表兼ゼネラルマネジャー(GM)だった清武英利さんに「俺は最後の独裁者だ」と言ったそうですね。
 「僕は民主的だよ。物事を決めるときには必ず人に相談することにしている。独裁者と書くメディアもあるが、面白いし、売れるからね」

 ――清武さんは2011年10月20日に渡辺さんと会って、来季のコーチ人事案が了承されたと主張しています。
 「秘書部の記録によると、午後5時33分から6時22分までの49分間話した。しかもコーチ人事の説明を受けたのは15分くらい。30人のリストを渡されたが、ほとんど顔も知らないし、清武が守ろうとした岡崎郁ヘッドコーチも分からない」

 ――でも目を通したんですよね。
 「『これで発表します。確定人事です』と言われれば、『ちょっと待て』と言った。だから、『そうか』とは言ったが、実際はほとんど見ていなかった。しかもまだクライマックスシリーズを控え、シーズンは残っていた。それなのに清武は確定人事として発表までしたんだ。11月4日に報道陣に対してコーチ人事のことは聞いていないと言ったのは、発表することまでは聞いていないという意味だ」

 ――江川卓さんのコーチ入りは原辰徳監督の推薦だったとか。
 「三つ年上の先輩を連れてきたいというのは包容力があるということだし、成長したと感じたな。『江川君は来るのか』と聞いたら、原君は『大丈夫です。受けると思います』と言うから交渉役も任せた。原君は『江川ヘッドコーチ、岡崎野手総合コーチ』と言ったが、僕から『江川君を助監督、岡崎君はヘッドコーチ』と提案したんだ」

 ――渡辺さんは江川さんに対してアレルギーがあったのでは。
 「江川君が巨人と電撃契約した1978年の『空白の1日』の後始末をやらされたし、10年ほど前に助監督で呼ぼうとした時も、江川君が条件面の話ばかりしたから怒ったことがあった。しかし、テレビの野球解説は分かりやすいし、分析力もある。感情とは別に能力を評価したんだ。原君も永久に監督というわけではないから、実績次第では江川君も監督の可能性はある。だが、原監督と再契約しようとする段階で、江川君が将来の監督候補というのは原君に失礼だろ」

 ――「悪名は無名に勝る」と江川さんを評したそうですが。
 「もともとは渡辺美智雄さん(元副総理)の言葉だ。美智雄さんは口が悪くて暴言もよくあった。僕がイメージが悪くなると忠告したら、『政治家は無名じゃだめだ。悪名は無名に勝る』と。とっさにそれを引用しただけだ」
 「プロ野球の経営というのはお金がかかる。選手の年俸も上げないといけないし、慈善事業じゃないんだ。巨人はかつてと違い、観客動員やテレビ視聴率が落ちてきた。非常に危機感がある。1人か2人のスターがいれば球場は満杯になるし、視聴率も上がる。集客には宣伝しないと。それは企業努力じゃないかね」

 ――「鶴の一声」で強引に進めたことを清武さんは「コンプライアンス違反」と主張しています。
 「マスコミを操作するために、コンプライアンスという言葉を使ったに過ぎない。巨人軍の定款には、本部長以上の人事や高額の契約、重要な事項については、読売新聞グループ本社の代表取締役の事前の承認を得るものとする、となっている。江川君の人事案というのはそれに該当する。僕は不当なことは一つもしていない。逆に、清武が企業機密を漏らしたために江川助監督が実現できなくなり、会社に損害を与えた。会社法に定める取締役の忠実義務違反、民法上の不法行為にあたる」
 「清武は『江川さんを入れると誰かがはじき出される』と言っているが、コーチに定員はないから、誰かがはじき出されることにはならない。コーチ人事を発表した後で、新たに追加したことは過去に何度もある。しかも、それは清武が行ってきたんだ」

 ――清武さんを解任した際、巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄さんのコメントを出したのはやり過ぎでは。
 「長嶋君は巨人の専務取締役だよ。取締役会を開くには取締役全員に告知しないといけない。僕が出席のお願いの電話をしたとき、長嶋君は『いったい、あいつは何やっているんだ』と怒っていた。コメントを出してくれと言ったのも長嶋君だ」

 ――渡辺さんは野球を好きなのですか・・・

このページのトップに戻る