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朝日新聞社

収入も伴侶もないまま放置され 孤族の国 第4部 女たち

初出:2011年12月9日〜12月15日
WEB新書発売:2011年12月22日
朝日新聞

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 雇用と結婚のはざまに落ち込む女性たちが激増している。「働きながら子育ても」という風潮が無職女性を追い込み、母子世帯のデータからは困窮の姿が浮かび上がる。人のつながりが変化し、社会から孤立する人々が急増する風景を描く「孤族の国」。2011年12月、本紙社会面で5回に渡って掲載した第4部「女たち」をWEB新書化。

◇第1章 収入も伴侶もないままで
◇第2章 3人産んで、みごとに独り
◇第3章 「幸せが待ってる」信じて
◇第4章 「理想の家族」潜む孤独
◇第5章 人生支える緩やかな縁


第1章 収入も伴侶もないままで/置き去りにされる「家事手伝い」

 あの日々には、もう二度と戻りたくない。
 横浜市のカフェで、マフィンの乗ったトレーを手に働く女性店員(33)は時折、自分の半生を振り返って、そう思う。
 子どものころから、人が苦手だった。
 短大を卒業した2000年は超のつく就職氷河期。仕方なく大手企業の社員食堂で調理補助のアルバイトを始めた。でも、小柄で痩せていたから重い物が運べない。半年も経たずに辞めた。
 次は、経験を積んで正社員の道を、と願いながら、スーパーのレジ打ちや住宅展示場のお茶出しをした。いずれも長く続かず、履歴書にも書けなかった。
 次第に、家にいる時間が増えた。家族6人の食事の支度が日課に。貯金はゼロで、たまの外出時は親から1、2万円もらった。
 「いつか結婚できる」。専業主婦の母はそう言うが、街でスーツ姿のOLとすれ違うだけで心がへこむ。近所の人と目を合わせることすらできない。
 5年ほどで、職探しをやめた。面接で何も答えることがないから。
 目覚めれば「今日は何をしよう」と途方に暮れ、眠る前は「今日も何もしなかった」と絶望する。収入も伴侶もないまま老いて、最後は生活保護だろうか。
 もう、いいや。何もかもから、目をそらした。
 雇用と結婚のはざまに落ち込む女性たちがいま、激増している。この店員が社会に出た頃、企業はいっせいに事務職の女性を派遣労働に切り替えた。不安定な雇用に疲れ果てて実家に戻っても「家事手伝い」として失業とは見なされない。
 見えない存在として長い間放置されている女性たち。だが、ニートや引きこもりへの支援策にたどりつく人の7割は男性だ。
 神奈川県の女性(42)は3年前、契約社員だった広告会社をいきなり解雇された。生花業でアルバイトを始めた東京都の女性(39)も2カ月足らずでクビ。どちらも「私の不手際」「力不足」と思い込んでいる。
    ◇
 こうした状態から自力で抜け出すのは難しい。
 カフェの女性店員が外に出るきっかけはリーマン・ショックだった。
 安定した職を得ていたはずの同居の妹たちが働き過ぎで体を壊し、休職や退職に追い込まれた。「もう社会に出なければ」と痛感した矢先、横浜市男女共同参画推進協会が企画した「ガールズ講座」を市の広報で知った。30代までの無職独身女性が対象という。
 無料でパソコンやメークなどを2カ月で学んだ。修了して1年経った頃、講座担当者から声がかかった。
 「カフェを始めるから、来ない?」
 わずかでも収入を得るのは久しぶりだ。基本はセルフサービスだが、子連れの母親らにはトレーを運んであげる。「ありがとう」と笑顔を向けられ、自然に笑みを返す自分に驚いた。
 カフェのスタッフは全員が講座修了生だが、6割が非正規就労の経験しかない。バイトのレジ打ちがこなせず意欲を失ったり、通販の荷造り作業さえも不採用だったり。自己評価の低すぎる点が共通している。
 カフェの運営責任者は、そんな状況から抜け出した人だ。契約スタッフの丸橋克美さん(42)は離婚経験があり、非正規で二つの仕事を掛け持ちして一人娘を養う。うつで苦しんだ経験を打ち明け、「今はどんなに弱い立場でも諦めないで」と後輩たちを励ます。
 カフェで週2、3日働いても、月給は3万円ほど。結婚や出産なんて想像できない。でも、女性店員は最近、思う。私、生きていけるかもしれない。
 チーフ職が募集されたとき、自分から手を挙げた。


第2章 3人産んで、みごとに独り/若いつもりだったけど 孤独死の影

 足腰が弱り始めたのはいつからだろう。整形外科で痛み止めの点滴を打つ。しわが目立つようになった腕がのぞいて、はっとした・・・

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