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朝日新聞社

揺れは我が家を「凶器」にする 巨大地震に備えて

初出:2011年12月1日〜12月22日
WEB新書発売:2012年5月18日
朝日新聞

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 東日本大震災以来、津波対策が注目を浴びるが、巨大地震では津波とともに揺れの怖さも、忘れてはいけない。古い木造住宅、高層マンションでは、大きな揺れにどう備えたら良いのか、東海地震が想定される名古屋において何ができるのか。朝日新聞愛知県版の連載「防災心―「揺れ」の怖さ」から。

◇まずは倒壊しない家造りを
◇危険性高い伝統的日本家屋
◇長い周期の地震動には弱い
◇「その日」の前にできることは?


まずは倒壊しない家造りを/高層の揺れ、1階の4〜5倍

 「普段くつろいでいる自宅が、地震では命を奪う『凶器』になってしまう」。大塚迪夫(みちお)さん(65)は、16年前の阪神・淡路大震災で自宅に押しつぶされそうになった体験を語り続ける。震災を機に立ち上げられた「人と防災未来センター」(神戸市中央区)の語り部ボランティアだ。
 阪神大震災では、神戸市などで震度7の揺れのため約10万5千棟の住宅が全壊し、犠牲者6434人のうち4831人が建物の倒壊などで亡くなった。一方、国の中央防災会議は、東海地震では、揺れだけで阪神を上回る約17万棟の建物が全壊し、6700人が死亡すると想定する。
 東日本大震災以来、津波対策が注目を浴びるが、東海地震では津波とともに揺れの怖さも、忘れてはいけない。
 大塚さんの体験に、もう少し耳を傾けてみよう。

◎天井破って脱出
 日の出前の暗闇に包まれた神戸市東灘区。木造2階建ての自宅の1階で、大塚さんは大きな揺れに驚き、布団から跳び起きた。
 2階で寝ていた家族に避難を呼びかけようとすると、今度は地鳴りのような大きな音。立っていられないほどの激震に、しゃがみ込んだ。倒れた水槽の水を一気に背中に浴びた。次の瞬間、轟音(ごうおん)とともに天井が落ちた。
 天井の梁(はり)がタンスに引っかかり、大塚さんの頭すれすれで止まった。
 揺れが収まり、暗い中、両手で天井を押し上げて避難路を探った。動ける空間は脇の1メートルほど。ガス臭が漂い始め、死も意識した。夢中で頭突きをして天井を突き破り、脱出した。1階がつぶれ、目の高さにある2階の窓から子どもたちを引っ張り出した。
 家族の無事を確認して辺りを見回すと、同様に1階がつぶれた家ばかりだった。冬空の下、裸足で避難所に向かった。がれきが道をふさぎ、歩くのも難しい。がれきの中から助けを求める声がした。瓦をめくって声をかけ、助け出した。消防や警察の姿はない。「自分の力で生き延びるしかない」。そう実感した。
 大塚さんは食料や水の備蓄も大切だとしながらも「すべては命あってこそ。まずは倒壊しない家造りを」と語る。

◎長周期の地震波
 大都市では木造住宅の倒壊だけでなく、高層ビルの揺れによる被害も大きい。東海・東南海地震が起きると、名古屋市の高層ビルがどうなるか。防災科学技術研究所(茨城県つくば市)が2008年と09年に実験した。
 兵庫県にある世界最大級の実験施設で、高さ80メートルの21階建てビルに生じるのと同じ揺れを再現した。4階部分まで鉄骨で組み上げ、その上にコンクリートとゴムを重ねた高さ22メートルの装置を使った。
 倒壊は免れても、上層階の室内の揺れは1階より4〜5倍に増幅された・・・

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