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政治・国際
朝日新聞社

エダノミクスVS.マエハラノミクス 混迷民主の「対立軸」

初出:2012年1月8日〜1月10日
WEB新書発売:2012年1月20日
朝日新聞

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 自民党は右肩上がりの時代に「富の分配」を担ってきた。冷戦終結で世界経済が広がり、「失われた20年」に突入。民主党は誰がコストを担うのかという議論に追われて将来像を示せていない。経済成長を追いかけるのか、新たなくらしに移るのか。前原誠司さんと枝野幸男さんの主張をより鮮明にした概念を「エダノミクス」「マエハラノミクス」と呼び、日本が選びうる道を考える。

◇脱成長か 成長か/混迷民主に対立軸
◇枝野氏―新産業育て内需拡大/前原氏―世界輸出で飛躍再び
◇〈社会保障費〉枝野氏―成長阻むコスト/前原氏―雇用生む原動力
◇〈原発〉枝野氏―成長神話の象徴/前原氏―世界に挑む目玉


脱成長か 成長か/混迷民主に対立軸

 脱原発、消費増税……。政権交代から2年。民主党は打ち上げ花火のように政策を掲げながら、なかなか着地ができない。
 2011年末、2020年度までの平均で名目3%の経済成長をめざす「日本再生の基本戦略」を決めた。バブル期以来の高い目標だ。
 政調会長の前原誠司(49)は「達成のため、あらゆる政策を実現する」と意気込んだ。ところが、経済産業相の枝野幸男(47)は「合議体の会議で決めたこと。個人的なコメントは控えたい」と冷淡だった。
 あくまで成長を追求するのか。成長にこだわらない暮らしに移るのか。民主党が一つになって物事を決めきれないのは、政権交代を優先し、どんな社会へ向かうのかという根源的な問いを煮詰めてこなかったからだ。マニフェストの哲学も共有されなかった。野田内閣が新年早々に発表した消費増税の素案も、原発を40年で廃炉にする法改正案も、このままでは実現は心もとない。
    ◇
 この連載を書く私たち2人は高度成長が終わる1970年代前半に生まれ、バブル崩壊で金融機関が破綻(はたん)しデフレがはっきりした97年に新聞記者となった。高度成長期に発表された司馬遼太郎の「坂の上の雲」に登場する「幸福な楽天家たち」の気分は想像しがたい。
 枝野は「坂の上の雲にたどり着き、もっと先に雲はないかとこの20年探してきたが、もうなかった」と言う。11年秋、首相から経産相就任を要請され、「私は人口減少社会での経済成長は難しいと思う」と一度は断った。成長の旗を掲げない初の経産相に違いない。
 人件費を削って外国と競い合うより、豊かさを実感できる社会をめざす。大企業中心の輸出型から、医療や農業など内需型へ産業を移す。なにより大切なのは「働く場」だ。より成熟した社会に向けて賢明に坂を下ろう――。その訴えは若い世代の感覚に近い。
 前原はまだ坂の上に雲はあるという。枝野の経産相就任を知り「俺がなりたかった」と漏らした。国内市場は縮んでもアジアは成長する。原発や新幹線を海外に売り込めば成長は可能だ――。
 「良い製品を日本で作って海外で売ることで、雇用が生まれ、地域経済が活性化する。世界は人口が増加し、経済は成長を続けている」。前原は12年1月1日付の後援会会報に書き込んだ。いま一度坂を駆け上がろうという前原は、各種世論調査で首相候補のトップに立つ。
 2人は93年に日本新党で初当選。さきがけから民主党に参加、同じグループで政権交代を訴えてきた。政権中枢に入り、政策の溝が露呈した。従来の「政府か市場か」の対立軸に加え、経済成長への考え方の違いが根本にある。


 自民党は右肩上がりの時代に「富の分配」を担ってきた。冷戦終結で世界経済が広がり、「失われた20年」に突入。民主党は誰がコストを担うのかという議論に追われて将来像を示せていない・・・

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