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世相・風俗
朝日新聞社

シンデレラにはなれないけれど 働く女のリアルボイス

初出:2011年11月1日〜2012年1月27日
WEB新書発売:2012年2月10日
朝日新聞

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 20代から30代を中心に女性の仕事や恋愛、人生への思いをつづった朝日新聞の人気連載「彼女の事情」。2011年11月から12年1月に渡って生活面に掲載された企画から「10年目の決意」「マイ・マンション」「夫は主夫」など7シリーズを収録。働く女性たちに元気をお届けします。

◇私って婚活依存症?
◇「株式会社 家族」
◇おいしい食卓
◇全力疾走!
◇10年目の決意
◇夫は主夫
◇マイ・マンション


私って婚活依存症?

〈第1話〉理想が高いと言われても/合コン3年半で300人 おびえかな
 「オレ様すぎやん……」
 口をついて出そうな言葉をエミナ(31)は、ぐっとのみこんだ。
 夏の週末、ターミナル駅に近い居酒屋の個室。友人の開いた男女4対4の合コンで、向かいに座ったジムトレーナーときたら、しゃべりすぎ。
 「ダイエットには筋トレもせな」「ホットヨガは体に負担もあるで」――。あんたな、パンツの丈がふくらはぎまでって、中途半端やねん!
 ヌードベージュのマニキュアにロクシタンの香水まで、コンパ仕様の自分がアホらしい。3千円が無駄だった。
 結婚したい。
 私の人生、こんなはずじゃない。漠然と描く自分のイメージと帳尻を合わせるために。
 出会いを求めて、3年半で300人と合コンした。「強化週間」と自ら名づけ、恩師や知人のおばちゃんのツテを総動員し、週3回セッティングしたこともある。そんな出会いでつきあったのは2人。目的は達成していない。
 私って、婚活依存症?!
 海を望む街に育った。私大を卒業し、転職すること4回。いま、宝飾品を扱う会社で正社員として働く。月給は手取り16万円。親元暮らしだから、かつかつの生活ではない。でもこの先、ひとりで生き抜く経済的な自信はない。
 大学時代の仲良しグループでは、エミナだけがシングル。友だちの妊娠を祝う女子会を「体調が悪い」とドタキャンしたこともある。
 「悪いとは思ったけれど、幸せな子とは会いたくないっていうか。子どもだってほしい。自分だけ独身のステージに居続けるのが嫌なんです」
 ウエディングドレスにはアップが似合う。そう思って胸元まで伸ばした髪を、エミナはすくいあげる。
 出会いは、直感が第一だと思う。でも、友人には理想が高いと言われる。名の知れた企業に勤め、あっさり系の顔立ちで、おしゃれ男子に定番のショップ「ビームス」に並ぶような服を着て、軽快なトークもできる人がいい。
 でもなぜ、こんなに結婚したい? つきつめると、そこには、おびえがある。もっと違う、もっと大きな何者かであるはずの自分。でも現実との隔たりに、うすうす感づいている。他人の評価つきのとびきりの結婚で、落差を埋めようとしている。
 合コンの帰り道。「また、みんなで飲もう!」とメールがきた。「みんな」か。恋の予感はない。でも、「次」がないのは耐えられない。合コンメモ用の青いボールペンを握りしめる。



〈第2話〉ここじゃない、飛び出して上海
 2007年の夏。エミナ(31)は上海にいた。
 日系企業に数百万円のコピー機を売る営業職。朝から深夜まで、郊外の工場地帯を走り回った。バイクタクシーの後部座席で、汗と脂のにじむドライバーの背中にしがみついて。なんで、彼氏でもない男と恋人みたいな乗り方せなあかんねん!
 照る太陽に、砂ぼこりが舞っていた。
 大学を卒業し、最初に勤めたのは服飾資材の商社。だが、司法書士の資格を取りたいと言い訳し、1年半で辞めた。続く派遣事務の仕事も2年。「これが私の仕事?」。いつも違和感があった。
 ここではない、どこかへ。そんな思いで、上海に飛び出したのは26歳の秋。母方の祖父母は台湾出身で、中国語も多少は話せた。
 生きることにエネルギーのいる街だった。マンションの大家は勝手に部屋に入ってきた。タクシーには他人を押しのけて乗り、屋台では数十円単位のぼったくりに神経をとがらせた。
 すり減る私。ここも違う? こんなはずじゃなかった。遊びにきた家族4人の乗ったバスを見送るとき、嗚咽(おえつ)を漏らして泣いた・・・

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