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朝日新聞社

原発のなくしかた 手がかりは欧州にあった

初出:2012年1月1日〜1月8日
WEB新書発売:2012年2月17日
朝日新聞

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 敦賀原発など14基の原発を抱える「原発銀座」の福井。国内一の集中立地県は、原子力と「共存共栄」してきた。原発がなくなったら、住民の生活はどうなるのか。地域経済は? 人々は? 手がかりを見つけに、廃炉が進む欧州の各地を記者が訪ねた。2012年1月に全7回に渡って、朝日新聞福井県版で掲載された連載「原発のなくしかた」から。

◇序章  廃炉、その先に
◇第1章 工場続々、見えた将来
◇第2章 解体 今は誇れる仕事
◇第3章 依存から卒業した町
◇第4章 衰退救った
◇第5章 賛否争い 不毛な連鎖
◇第6章 廃炉、逃げず向き合う


序章 廃炉、その先に

 原発がなくなったら、福井はどうなるのか。
 地域経済は? 人々は?
 手がかりを見つけに、廃炉が進む欧州の各地を訪ねた。


再生、新エネ拠点として
 ドイツの首都ベルリンから北東へ約200キロ。牧草地や針葉樹林を抜けると、トラックやクレーン車が頻繁に出入りする工業地帯が見えてくる。
 グライフスバルト原発。
 1970年代に1〜4号機が建設され、旧東ドイツの電力の11%をまかなっていた。8号機までできる予定だったが、東西ドイツが統一された1990年に閉鎖された。チェルノブイリ原発の事故で、旧ソ連型の原発に不安が高まったためだ。その後、統一ドイツの所有となり、政府が100%出資した民間会社EWN(北部エネルギー会社)が、廃炉プロジェクトを担ってきた。
 その原発跡地が今、新エネルギー産業の拠点に生まれ変わろうとしている。
 敷地内で異彩を放っているのが長さ1.2キロのタービン建屋だ。220ヘクタールの敷地の中央部を東西に貫く。古くなった赤茶色の外観は原発の頃のままだ。
 建屋に近づくと、けたたましいエンジン音や金属の切断音が聞こえてくる。内部のタービンはすべて取り去られ、今は、海上風力発電の支柱にする巨大なパイプを作る工場がある。
 敷地の南にある建物では、何かを焦がしたようなにおいが鼻につく。もともと原発に使う金属資材の製造工場だったという。今は、菜種からバイオディーゼル燃料を生産する工場に変身した。残りかすは家畜のエサにする。


 製品や資材は工業地帯の外れにある港から、船で欧州各地へ運ばれる。もともとは原子炉冷却水の排出口だったのを造り替えた。
 港にはヨットハーバーもある。立地企業で働く人の余暇のために07年にオープンしたが、一般の利用者にも人気でキャンセル待ちの状態だという。
 港の隣に細いパイプが張り巡らされた施設がある。ロシアから天然ガスを運ぶ全長1224キロの海底パイプラインの終着点だ。2011年11月にロシアのメドベージェフ大統領が訪れ、開通の記念式典が開かれた。
 ガスは年間550億立方メートルが今後、少なくとも50年間送り込まれてくる。原発の送電線を利用した天然ガス発電所の立地計画も持ち上がっている。
 廃炉プロジェクトの最高経営責任者(CEO)ヘンリー・コルデス氏は言った。「原発から新エネルギーへと向かう時代が、我々を後押ししてくれました。この動きは、今後さらに広がっていくでしょう」

■ドイツ グライフスバルト原発




第1章 工場続々、見えた将来/広さも港も企業へ魅力

グライフスバルト@ドイツ

 東京電力福島第一原発の事故を受け、ドイツは明確に脱原発へかじを切った。その北部に、新エネルギー産業の拠点に変わりつつあるグライフスバルト原発がある。約30社が進出。敷地のほとんどは立地企業が買い上げている。


 「当時、閉鎖には原発の作業員も地域の人も落胆した。廃炉を順調に進めるためにも、人々が将来を見通せる何かが必要だった」
 そう話すのは、廃炉プロジェクトを担うEWN(北部エネルギー会社)の前最高経営責任者(CEO)リッチャー氏だ。解体が始まる直前の1994年に就任した。
 将来を見通せる何か・・・

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