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朝日新聞社

もう原発の電気はいらない 「電力会社は私が選ぶ」

初出:2012年1月29日〜2月6日
WEB新書発売:2012年8月31日
朝日新聞

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 電力会社を選べる仕組みが日本にあれば、どうなっていたか。地域独占が続く日本でも、福島原発の事故で政策の見直しが始まった。電気を消費者が選んで買える仕組みは、エネルギー政策や電力会社の判断を変える力を秘める。1月29日〜2月6日にかけて朝日新聞総合面で連載された特集「電力のかたち」から。

◇第1章 電力会社 私が選ぶ
◇第2章 原発、家庭を縛る
◇第3章 節電、無理せず賢く
◇第4章 競争で生まれた活力
◇第5章 送電網独占に風穴
◇第6章 電気料金、お手盛り
◇第7章 原子力、かさむ費用
◇第8章 脱化石燃料の道
◇第9章 どう合意、模索続く
◇終章 消費者が変える未来


第1章 電力会社 私が選ぶ

 電気を消費者が選んで買える仕組みは、エネルギー政策や電力会社の判断を変える力を秘める。地域独占が続く日本でも、福島原発の事故で政策の見直しが始まった。「電力のかたち」が変わろうとしている。

◎エコ度で料金で 欧州の今
 「福島での事故に、がくぜんとした。もう原発の電気はいらない」。ベルリン郊外に住むマンフレート・ホフマンさん(73)夫妻は、「100%再生可能エネルギー」が売りの電力会社「リヒトブリック」と契約している。火力にも原発にも頼らず、ノルウェーの水力発電などから仕入れた電気を買えるからだ。
 原発を稼働させている大手「バッテンファル」との契約は打ち切った。以来8カ月、不自由はない。停電もなく電気が届き、メーターも同じものを使い続ける。月12ユーロ(約1200円)ほど電気代が上がったが、「将来世代のために正しいことをしている」。
 電力会社の変更は簡単だ。ネット上には電気代を比べるサイトがあり、申し込みもできる。選んだ会社に契約先の顧客番号などを伝えれば解約を代行してくれる。携帯電話を乗り換えるようなものだ。
 会社員のアンネ・アイヒホルストさん(35)も、パンフレットに付いていた申込書の郵送だけで手続きが済んだ。料金は月3ユーロほど高いが、エコな電気を気持ちよく使う満足を得た。電力会社を選べるがゆえだ。

◎小売会社、次々
 ドイツでの電力小売りの自由化は1998年。各地の発電会社や「電力市場」から電気を仕入れ、家庭などに売る「小売会社」が続々と生まれた。自由化の流れを止めるようなトラブルはなく、暮らしに欠かせぬ電気を見知らぬ会社に託す抵抗感は和らいだ。
 電気の供給元の選択肢は地域ごとの平均で約150社に及び、連邦ネット庁によると新規事業者と契約する世帯が2010年には15%を超えた。巨大電力会社も無視できない存在になりつつある。
 欧州の電力供給は、海に例えられる。張り巡らされた送電線から電気が一つの市場に流れ込むからだ。原発も火力も風力も、色がついていない電気が集まり、企業や家庭に届けられる。
 独連邦消費者センター連盟のビルギット・ホルフェルトさんは言う。「エコ電気を買う人が増えれば、それだけ海に流れ込むエコ発電が増え、原発の電気は減る」。電気も、消費者の意をくんでつくる商品にほかならない。
 欧州では90年に英国で自由化が始まった。英仏の海底ケーブルがあるとはいえ日本と同じ島国から、経済統合を進めて競争を促す欧州連合(EU)全体に広がった。07年には小口客の家庭も外国の会社と契約可能になった。


◎競う海外資本
 業界の寡占化が止まったわけではなく、売り惜しみが起きたこともある。原発大国のフランスではEUが定めた最低限の自由化にとどまる。それでも、競争をもたらし、新しい業界を芽吹かせる。
 英国では電力会社の分割、発電と送電の分離、民営化が進んだ。99年には地域独占が完全に終わり、企業も家庭も電力会社を選べるようになった。独、仏、スペイン勢が進出して6大電力の四つが海外資本となり、競い合う。
 複雑化したサービスや料金から最適なものをどう選ぶか。電力やガスを売る会社と消費する企業とをつなぐ仲介業が生まれた・・・

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