社会・メディア
朝日新聞社

電磁波過敏症 ユビキタス社会の落とし穴

初出:朝日新聞2012年3月2日〜7日、9月26日〜29日
WEB新書発売:2012年10月12日
朝日新聞

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 携帯電話の基地局が出す電磁波で健康被害を受けているとして、宮崎・延岡の住民が基地局の操業差し止めを求めた訴訟。電磁波による健康被害が実際に出ているかどうかを争点にした裁判としては全国初のものとして注目されている。2012年10月の判決を前に、基地局を巡る各地の動きと問題点について現地から報告する。
※2012年3月23日に発行した商品に新たな記事を加え、10月12日に【増補版】として公開しました。

◇便利さの陰で/報告・電磁波問題
 ・第1章 学校のそばに基地局
 ・第2章 健康影響 割れる見解
 ・第3章 基地局 身近に急増
 ・第4章 紛争防止 条例頼み
 ・第5章 「健康被害」判断は

(2012年3月 宮崎版)


◇問われる健康被害/携帯基地局訴訟
 ・インタビュー〈1〉 症状深刻、目そむけないで
 ・インタビュー〈2〉 基準値大きく下回る電波
 ・インタビュー〈3〉 電磁波以外の要因、精査は
 ・インタビュー〈4〉 電磁波で症状、可能性高い

(2012年9月 宮崎版)


便利さの陰で/報告・電磁波問題
第1章 学校のそばに基地局/めまい耳鳴り 児童訴え

 宮崎県延岡市の住民30人が、健康被害を理由に携帯電話の基地局の操業差し止めを求めた訴訟が12年2月、結審した。便利さの陰で起きている、基地局を巡る各地の動きと問題点を報告する。

 「耳鳴りがする」「鼻血が出る」。訴訟の原告らが暮らす延岡市大貫(おおぬき)町で2010年夏、自治会が住民に調査をしたところ、162人が、基地局建設を境にこうした症状が「出た」「悪化した」と答えた。この中には、10歳未満の5人も含まれていた。
 基地局周辺での市民による「健康被害」調査は延岡だけなく熊本市や那覇市など各地で実施されている。中には環境変化の影響をより受けやすいとされる子どもが集団で症状を示す例も出ている。
    ◇
 福岡県の太宰府東小学校で2011年春、保護者の有志が「体の不調を訴える子どもが多い」とアンケートをしたところ、回答した全校の4割に当たる135人のうち、94%が何らかの症状を訴えた。
 とくに上の階ほど症状が多く出る傾向があり、3階の4・5年生は「いらいらする」が50%、「体がだるい」が42%などと、1階の1年生に比べ1・5〜2倍の数字が出た。1年生にはないめまいや耳鳴りもあった。


 各教室から約100メートル先に、NTTドコモの携帯基地局の鉄塔が立つ。保護者と市が合同で調べた電磁波の強さは、3階が1階の5・5倍の数字を示し、計測の限界値でとまった。症状の原因は複数あるとみられるが、元PTA会長の笠利(かさり)毅さん(49)は、自宅と基地局の距離が近いほど症状が出ていることなどから、症状の大半は「電磁波による可能性が高い」とみる。


 親たちはドコモ側に基地局の撤去を申し入れたが、電磁波の強さは国の安全基準をはるかに下回っており、「電磁波のはずがない」と断られたという。
 親たちは、電磁波を遮る機能のあるカーテンを自費で窓に取り付ける準備をしているが、市教委の許可がもらえていない。
 「子どもたちは、毎日8時間は学校で過ごさなければならない。一刻も早い対策が必要なのに」。保護者で調査の中心になった九州大大学院准教授、近藤加代子さん(51)は訴える。
    ◇
 海外では、子どもへの電磁波の影響を避けようと、保健省が18歳未満の携帯使用の制限を促しているカナダのような例もある。
 基地局のあるマンションに住み、自身や子どもらも深刻な健康被害を受けたという那覇市の医師、新城哲治さん(49)は「子どもの細胞は成長が活発で、頭の骨も薄いため、電磁波の影響をより強く受ける。私たちは子どもたちを守らなければならない」と訴える。


第2章 健康影響 割れる見解/安全基準「社会が選択」

 「携帯電話、使っても大丈夫なんでしょうか」
 11年5月以降、総務省電波環境課に問い合わせが相次いだ。声は、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)が、携帯電話が出す電磁波について、発がん性が「あるかもしれない」と発表したことを心配するものだった。
 同課の答えは・・・

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電磁波過敏症 ユビキタス社会の落とし穴
216円(税込)

携帯電話の基地局が出す電磁波で健康被害を受けているとして、宮崎・延岡の住民が基地局の操業差し止めを求めた訴訟。電磁波による健康被害が実際に出ているかどうかを争点にした裁判としては全国初のものとして注目されている。2012年10月の判決を前に、基地局を巡る各地の動きと問題点について現地から報告する。[掲載]朝日新聞(2012年3月2日〜7日、9月26日〜29日、10600字)

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