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明暗を分けた4原発 福島第二、女川、東海第二も事態は深刻だった

2012年03月23日
(11000文字)
朝日新聞

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明暗を分けた4原発 福島第二、女川、東海第二も事態は深刻だった


 東日本大震災で被災したのは東京電力の福島第一原発だけではない。福島第一原発の事故のすさまじさに隠れて目立たなかっただけで、ほかの原発が決して深刻な事態でなかったわけではなかった。福島第二(東電)、女川(東北電)、東海第二(日本原電)はどういう状況だったのか。深刻な危機に陥った福島第一との明暗を分けたポイントとは。

◇明暗を分けた4原発、その瞬間
◇原発列島ニッポン 安全なのか


明暗を分けた4原発、その瞬間

 東日本大震災で被災したのは東京電力の福島第一原発だけではない。ほかの原発でも重要機器が壊れ、すんでのところで危機を逃れていた。


 2011年3月11日の大震災では、福島第一1〜3号機の3基のほかに、東電の福島第二1〜4号機や東北電力女川1〜3号機(宮城県)、日本原子力発電の東海第二(茨城県)の計8基が自動停止。放射性物質が外に出る寸前の原発もあった。
 揺れに襲われた直後、原子炉の核分裂反応を抑える制御棒はすべてうまく原子炉内に差し込まれた。ここで失敗していれば原子炉が暴走してしまうことになる。とりあえずの歯止めはできた。
 しかし、外部電源(送電線や発電所の受電設備)は、地震で深刻な被害を受けた。福島第一、第二、女川、東海第二の19回線中、地震直後に使えたのは福島第二、女川の1回線ずつだった。
 非常用ディーゼル発電機が起動して電気を供給したが、直後の津波が決定的な打撃になる。想定を超えるか、想定とほぼ同じ高さの津波に襲われ、非常用発電機など原子炉冷却にかかわる重要機器が使えなくなる原発が続出した。
 福島第二原発は3号機を除き、一時は原子炉を冷やす手立てを完全に失った。原子炉格納容器が圧力上昇で壊れるのを防ぐため、放射性物質を含む気体を外に出して圧力を下げるベント(排気)が準備された。第一原発と同様に政府が初めての「原子力緊急事態宣言」を出し、周辺に避難区域を設ける事態に陥った。
 東北電力の女川原発では「原発を守る最後のとりで」とも言われる「緊急炉心冷却システム(ECCS)」の一部が浸水で使えなくなった。
 日本原電の東海第二原発は津波の高さがあと約70センチ高ければ、すべての原子炉冷却手段を失っていたかもしれなかった。
 女川の1号機、東海第二は福島第一同様、送電線からの外部電源をすべて失った。だが、津波の後も非常用ディーゼル発電機が生き残っていたため、時間がかかったものの、なんとか冷却することができた。
 福島第一原発の事故のすさまじさに隠れて目立たなかっただけで、ほかの原発が決して深刻な事態でなかったわけではなかった。


◎東電・福島第一――全電源喪失、甘かった想定
 福島第一原発の半径20キロ圏内は今も立ち入りが禁じられ、住民が避難を強いられている。
 大震災発生時は東電が原発で想定した揺れより1割ほど大きく、鉄塔が倒れたり受電設備が壊れたりして外部電源を失った。その後襲った津波は海岸での想定の5・7メートルに対して13メートルだったと推定され、さらに敷地をかけ上がり高いところで15・5メートルに達した。10メートルの高さにある建屋に海水が流れ込み、非常用発電機や電気設備が使えなくなった。
 冷却手段を失い、1〜3号機は核燃料が溶けて原子炉の底に落ちる炉心溶融(メルトダウン)を起こした。炉内で発生した水素が建屋に漏れ出し、1号機は11年3月12日、3号機は14日に爆発。定期検査中だった4号機は、3号機と共通の配管を通じて流れ込んだとみられる水素で15日早朝に爆発した。
 2号機は壁のパネルが外れ水素ガスが逃げたためか爆発しなかったが、原子炉から大量の放射性物質が放出。1〜3号機から計77京(けい)〜37京ベクレル(京は兆の1万倍)もの放射性物質が大気中に漏れたと推定され、国際評価尺度でチェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」と判断された。
 政府と東電は11年12月、圧力容器底部が100度以下になるなど炉が安定的な冷却状態になったとして「事故収束」を宣言したが、炉内の状態は不明で放射能汚染水の処理など、課題は山積している。
 東電は1〜4号機について30〜40年かけて廃炉にする計画。唯一生き残った非常用発電機を利用して事故を免れた5、6号機については明言していない。
 東電が建設時に想定していた津波は高さ3・1メートル。2002年に自主的に5・7メートルまで引き上げたものの、その後の08年にも社内で高さ15・7メートルに達する津波を試算していたのに、対策をとっていなかった。
 福島第一は東電が最初に運転を開始した古い原発だ。ほかの原発と違い、非常用発電機を頑丈な原子炉建屋ではなく、海に近いタービン建屋の地下に置いていたこと、海水ポンプを海沿いにむき出しにしたままだったことも、津波に対する弱点になった。

■福島第一原発
〈原子炉内の燃料体の数〉
 1〜3号機 計1496体
 4号機(検査中) 0体
 5、6号機 計1312体
〈総発電電力容量〉 469万6000キロワット
〈営業開始〉 1971年3月
〈敷地面積〉 約350万平方メートル
【2011年3月11日 14時46分 地震発生】
 震度 6強
  1号機 運転中
  2号機 運転中
  3号機 運転中
  4号機 停止中(定期点検中)
  5号機 停止中
  6号機 停止中
  外部電源全7回線が使えない状態に(1つは工事中で使えず)
《電源の確保》
 非常用発電機 起動
【津波 11日15時27分ごろ到達】
 最大――15・5メートル
 想定の高さ――5・4〜5・7メートル
 敷地高さ――1〜4号機 10メートル、5〜6号機 13メートル

 1号機 メルトダウン
  非常用発電機:2機=使用不可
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
  電源車、当初うまく接続できず
  15時42分全交流電源喪失
 2号機 メルトダウン
  非常用発電機:2機=使用不可
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
  15時42分全交流電源喪失
 3号機 メルトダウン
  非常用発電機:2機=使用不可
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
  15時42分全交流電源喪失
 4号機 爆発
  非常用発電機:2機=1機使用不可 1機点検中
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
 5号機
  非常用発電機:2機=使用不可
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
 6号機
  非常用発電機:3機=2機使用不可 1機使用可能(5号機にも電気を贈るが、冷却に時間がかかる)
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
【12日】
 1号機 15時36分 水素爆発
【14日】
 3号機 11時01分 水素爆発
【15日】
 2号機 06時00分ごろ 衝撃音の後原子炉壊れる(衝撃音は4号機の音と推定)
 4号機 06時00分ごろ 水素爆発(3号機から流れこんだ水素で)
【20日】
 5号機 14時30分 冷温停止
 6号機 19時27分 冷温停止
【12月】
 1号機 冷温停止状態
 2号機 冷温停止状態
 3号機 冷温停止状態


◎東電・福島第二――電源、1回線だけ残る
 福島第二原発ではメルトダウンや建屋の爆発は起きなかったが、重要機器が津波で損傷、国際評価尺度で「レベル3」にあたる事態に陥った。茨城県東海村で起きたJCO臨界事故(1999年)の「レベル4」の1ランク下、第一原発に次いで深刻だった。
 震災時には全4基が運転中で自動停止。想定していた津波5・2メートルに対し東電の推定で9メートルが原発を襲い、敷地をかけ上がって15・9メートルに達した。1、2、4号機では、炉の熱を海に逃がして冷やす海水ポンプが使えなくなった。炉内で発生した水素や水蒸気で圧力が高まり、格納容器が壊れて放射性物質が大量に漏れ出す恐れがあった。福島第一原発と同様にベントも準備されたが、第一原発と違ったのは電源が残っていた点だ。
 外部電源は地震後、点検中だった1回線を除く3回線のうち、1回線だけがかろうじて残り、炉内の状況が把握できた。非常用発電機も津波後、3、4号機で一部が生き残った。仮設ケーブルとポンプのモーター交換で、炉の冷却を復旧させることができた。
 それでも、すべて安定するのに4日かかった。1号機は11年3月14日午後5時、2号機は同日午後6時、4号機は15日午前7時15分に、炉内の冷却水の温度が100度未満になる冷温停止になった。
 東電は事故後、再稼働を目指すか、そのまま廃炉にするのか、方針を明らかにしていない。

■福島第二原発
〈原子炉内の燃料体の数〉 4基計 3056体
〈総発電電力容量〉 440万キロワット
〈営業開始〉 1982年4月
〈敷地面積〉 約147万平方メートル
【2011年3月11日 14時46分 地震発生】
 震度 6強
  1号機 運転中
  2号機 運転中
  3号機 運転中
  4号機 運転中
  外部電源4回線のうち3回線が使えない状態に(うち1つは点検中で使えず)
《電源の確保》
 非常用発電機 起動
【津波 11日15時22分ごろ到達】
 最大――15・9メートル
 想定の高さ――5・1〜5・2メートル
 敷地高さ――12メートル

 1号機
  非常用発電機:3機=使用不可(15時34分ごろ)
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
 2号機
  非常用発電機:3機=使用不可(15時34分ごろ)
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
 3号機
  非常用発電機:3機=1機 使用不可(15時35分ごろ) 2機=使用可能
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
 4号機
  非常用発電機:3機 2機=使用不可(15時34分ごろ) 1機=点検中
  冷却用など一部のポンプが停止
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
【12日】
 3号機 12時15分 冷温停止
【14日】
 1号機 17時00分 冷温停止
 2号機 18時00分 冷温停止
 【15日】
 4号機 07時15分 冷温停止


◎東北電・女川――高い敷地で危機逃れる
 東北電力の女川原発は事故時に原子炉に注水する緊急炉心冷却システム(ECCS)の一部が津波で使えなくなった。だが、福島第一原発と違って電源が生き残り、被災翌日には安定状態に復帰した。
 周辺は津波で大きな被害を受けたが、高めに設置された主要施設は無事で、敷地内は震災から88日目まで周辺住民の避難場所にもなった。原子炉など重要な施設を高めに置いたことが明暗を分けた。
 当初の津波想定は3メートルで、高めにしたのは、津波の多い地域で、専門家を招いて議論した結果だったとされる。事故時に想定していた津波も13・6メートルと高かった。
 大震災時は1、3号機が運転中だった。地震で、設計上の想定を超す揺れに襲われた。地震の揺れで、1号機タービン建屋の地下では電源盤の火災が起きたが消火された。タービンも損傷した。
 その後、敷地をかけ上った高さが最大約13・8メートルに達する津波に襲われた。地震による地殻変動で付近は1メートルも地盤が低くなったが、主要施設は14・8メートルと高い敷地にあり津波も市街地ほどでなく、難を免れた。
 定期検査中だった2号機は原子炉を動かし始めた直後に被災。冷温停止したものの、津波が原子炉建屋に流れ込み、ECCSの一部が使えなくなった。外部電源は5回線のうちかろうじて1回線が残り原子炉の冷却に成功。翌日未明までに冷温停止した。

■女川原発
〈原子炉内の燃料体の数〉3基計 1488体
〈総発電電力容量〉217万4000キロワット
〈営業開始〉1984年6月
〈敷地面積〉約173万平方メートル
【2011年3月11日 14時46分 地震発生】
 震度 6弱
 1号機 運転中
 2号機 起動中(14時00分から)
 3号機 運転中
《原子炉緊急停止》
 タービン建屋地下で火災(14時57分)
 外部電源5回線のうち4回線を失う
《電源の確保》
 非常用発電機 起動 
【津波 11日15時29分ごろ到達】
 最大――13・8メートル
 海岸で想定していた
 津波の高さ――13・6メートル
 敷地高さ――14・8メートル
 地盤沈下――1メートル

 1号機
  非常用発電機 2機=使用可能
  重油タンク倒壊 約600キロリットル重油流出
 2号機
  非常用発電機:3機=1機 使用可能 2機 使用不可(15時35分、15時42分)
  緊急炉心冷却システム(ECCS)一部使用不可
  14時49分、起動中に停止
 3号機
  非常用発電機:3機=使用せず
  冷却用など一部のポンプが停止
【12日】
 1号機 00時58分 冷温停止
 3号機 01時17分 冷温停止


◎日本原電・東海第二――2日前、6・1メートルの防壁
 日本原子力発電の東海第二原発は想定を超える津波の影響で非常用発電機が1台止まり冷却手段が一部使えなくなった。冷温停止まで通常の倍の3日半かかった。波があと70センチ高ければ深刻な事態に陥った可能性がある・・・

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明暗を分けた4原発 福島第二、女川、東海第二も事態は深刻だった
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東日本大震災で被災したのは東京電力の福島第一原発だけではない。福島第一原発の事故のすさまじさに隠れて目立たなかっただけで、ほかの原発が決して深刻な事態でなかったわけではなかった。福島第二(東電)、女川(東北電)、東海第二(日本原電)はどういう状況だったのか。深刻な危機に陥った福島第一との明暗を分けたポイントとは。[掲載]朝日新聞(2012年3月11日〜3月17日、11000字)

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