親族間の殺人事件、会社同僚の性被害、高齢者の交通事故…。いつまでも癒えない傷に苦しみ続ける犯罪被害者たちがいる。その姿を通して見えてきた課題とは。朝日新聞岡山版に2012年3月31日から4月2日に渡って掲載された特集「犯罪被害者たち」より。
◇身内犯人「公」は冷淡/母失い、今も髪切らぬ次男
◇強姦後も続く「地獄」/息子に抱きつかれても怖い
◇88歳が運転、父奪った/急ブレーキ踏めるはずない
「ママに会いたい。天国はどこ? 胸を刺せばママのとこに行けるの?」
大崎利章さん(47)は次男(9)の言葉に背筋が凍った。次男は泣きながら、こぶしで胸を突くようなそぶりを繰り返した。
目の前で、包丁で刺される母を見た。自分も追いかけられて刺された。当時7歳の子にはあまりにも重い現実だった。
大崎さんは何も言わず、ベッドの上に座る次男を抱きしめた。
◇
2年前の2月。倉敷市林にあった大崎さんの家で、同居していた弟(45)に妻(当時38)を刺殺された。長男(16)と次男も頭や背中を刺されたが、一命は取りとめた。
次男は母親っ子だった。葬儀での出棺の時、嘔吐(おうと)しすぎて血を吐いた。いきなり「死んでやる」とナイフを持ち出したこともある。
事件の約1カ月後、次男は重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。今も、隔週で岡山市内の精神科に通う。
2012年3月、大崎さんの取材をした時、次男も一緒だった。髪は、小さな背中を覆うように腰まで伸びていた。あの日から、髪を切らなくなったという。
「ママに似てるでしょ」
黒髪のロングヘアーだった母。そんな母に、自分を重ねようとしていた。
長男もPTSDと診断されている。
「僕が柔道着でナイフをふるい落としていれば、ママは助かった。どうしてできなかったんだ」
この2年、事件の記憶がよみがえっては、自分を責め続けているという。
中学校の柔道部に所属していた。部活から帰宅した直後に風呂場付近で襲われ、20針以上縫った。背中や脇腹に残る生々しい傷痕。水泳の授業や身体測定の時は、一人だけシャツを着て傷を隠す。
大崎さん自身も、事件のことが頭から離れない。「自分がもう少し早く帰宅していれば」。事件後の1年ほどは、ほとんど眠れなかった。食事ものどを通らず、10キロ以上も痩せた。ふくよかだったころの面影は、もうない・・・
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親族間の殺人事件、会社同僚の性被害、高齢者の交通事故…。いつまでも癒えない傷に苦しみ続ける犯罪被害者たちがいる。その姿を通して見えてきた課題とは。朝日新聞岡山版に3月31日から4月2日に渡って掲載された特集「犯罪被害者たち」より。[掲載]朝日新聞(2012年3月31日〜4月2日、5100字)
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