政治・国際
朝日新聞社

本当に「脱原発」は実現するのか 再稼働に突き進む野田政権の裏側

2012年04月20日
(9300文字)
朝日新聞

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 東京電力福島第一原発事故から1年あまり。野田政権は、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働を地元に要請した。中長期の原発政策が定まらないまま、野田政権は原発再稼働へひた走り、脱原発派は危機感を募らせている。菅政権の「脱原発」はかすみ、「減原発」すら怪しくなってきた。

◇再稼働に突き進む
◇経済界、必死の攻勢
◇安全対策、その場しのぎ
◇「脱原発」失速 野田政権
◇電力8社、蓄え3兆円


再稼働に突き進む

 野田政権が2012年4月14日、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働を地元に要請した。東京電力福島第一原発事故から1年あまり。水面下で再稼働への道のりを敷いてきたのは、政権と地元の2人のキーマンだ。


◎仙谷氏が旗振り
 12年4月14日午後の福井市。枝野幸男経済産業相が県庁で西川一誠知事と会談しているころ、民主党の仙谷由人政調会長代行が党県連の議員を集め、こう訴えた。
 「脱化石燃料と脱原発を一緒にやらなければいけないが、至難の業だ。現時点では、再稼働に向けて政治決断せざるをえない」
 仙谷氏は「拙速」と批判されても「我々は電力なしには成り立たない生活にいる」と一歩も引かなかった。
 仙谷氏は閣僚ではないのに、大飯原発の再稼働をめぐる関係閣僚会合に毎回出席している。政府の肩書はなく「オブザーバー」。12年4月13日の朝、同僚議員にこう耳打ちした。「ごちゃごちゃ言うやつはいるが、今晩決める。あす枝野を福井にやる」
 その予告通り、12年4月13日夜の閣僚会合で再稼働は妥当と判断され、枝野氏の福井県訪問日程も決まった。
 なぜ仙谷氏なのか――。
 11年5月。当時の菅直人首相が中部電力浜岡原発(静岡県)の停止を決断した直後、官房副長官だった仙谷氏はテレビ番組で早くも「地震確率をみると、日本海側、瀬戸内の原発はまず心配ない。私どもは原発政策を堅持する」と明言。翌6月のエネルギー・環境会議では「原発の再稼働をやらなければ電気が足りなくなる」と力説した。
 東京電力をはじめ財界とのパイプを持ち、党内にもにらみが利く仙谷氏は再稼働に向け主導権を握った。
 菅政権は当時、九州電力玄海原発(佐賀県)の再稼働の判断を迫られていた。仙谷氏は官房長官だった枝野氏とともに早期再稼働に慎重な菅氏を説き伏せ、ストレステスト(耐性評価)実施と関係閣僚会合という再稼働に向けた政治判断の枠組みを受け入れさせた。
 野田佳彦首相になると、再稼働問題を仙谷、枝野両氏に丸投げする。細野豪志原発相、官邸との橋渡し役である斎藤勁官房副長官を加えた4氏が水面下で議論を重ね、道筋をつくるようになった。
 仙谷氏は東電の経営改革も仕切る。東電の総合特別事業計画は柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を前提としており、再稼働しなければ火力燃料費が収益を圧迫して、国民負担の増加につながりかねない。「安全対策では比較的優等生」(再稼働慎重派議員)とされる大飯原発を再稼働しないまま2012年夏の電力不足を乗り切れば、柏崎刈羽原発の再稼働が遠のく恐れがある。野田首相が進める消費増税の理解を得るためにも負担増は避けたいところで、「再稼働は自明の理」(仙谷氏周辺)だった。
 人権派弁護士でならした仙谷氏は、12年4月14日の会見で「雇用や経済を考えると地元の人は再稼働反対の声を上げられない。弱者の味方ではなかったのか」と問われると、「極めて失礼な話」と反発、こう続けた。「私はいまだに弱者の味方だ。電力業界の味方ではない。ミクロの方に弁護士のように寄り添うのが政治家ではない」

◎知事巧み、要望通す
 京都府や滋賀県、大阪市といった周辺自治体が大飯原発の再稼働に反発を強める中、沈黙を守っていた福井県の西川知事は12年4月14日の会見で、「最終的には立地の県が判断すべきものだと思う」と強調した。
 周辺自治体の反発も影響し、初の関係閣僚会合で「政治判断」が先送りになった12年4月3日。西川知事はブログで、北陸でも吹き荒れた暴風に触れ、こうつづった。「南からの強風に翻弄(ほんろう)されている」
 政権が暫定的な安全基準を決めた12年4月6日のブログでは「おぼろ月である」。安全基準は西川知事が再稼働の条件として求め続けたもので、本来なら「満月」。だが、安全基準は世論の「拙速」批判を浴びた。
 全国最多の14基の原発を抱える福井県は、財政も経済成長も地場産業化している原発に頼っている。西川知事には、「脱原発」が進んで県内の基盤が揺らぐことへの懸念があった。
 そこで11年4月19日、海江田万里経産相(当時)に「定期検査中のプラントの再稼働は喫緊の課題だ」と訴えた。将来的には安全規制の抜本改革の必要性を説く一方、国の責任で暫定的な安全基準をつくることを提案した。
 だが、政権は提案を踏まえず再稼働に進んだ。海江田氏は11年5月9日、電力会社による緊急安全対策を根拠に「運転再開は安全上支障がない」と宣言。国際原子力機関(IAEA)に報告書を出し、11年6月18日には再び安全宣言をした。原子力安全・保安院から説明を受けた満田誉副知事は当時、「専門家が審査した形跡がない」と突き放すしかなかった。
 専門家のお墨付きがなければ、県民の理解も得にくい。風向きが変わったのは11年10月に全国の停止中の原発に先駆け、関電が大飯原発のストレステストの報告書を提出してからだ。
 保安院は地震や津波、老朽化などで複数の意見聴取会を開き、専門家による福島原発事故の検証も始めた。11年11月に大飯原発を訪れた細野原発相は「国はできる限り責任を持って知事の要請に応える必要がある」と強調。西川知事は11年12月県議会で「国は県の要請を受けて意見聴取会を設置し、事故の知見を安全対策に反映する検討をようやく始めた」と答弁した。
 県への支援も潤い出す。悲願の北陸新幹線の県内延伸が昨年末に決定。おおい町長らが「再稼働の条件」と明言していた原発周辺道路の整備も、422億円の総事業費を国と事業者が全額負担すると確約した。
 西川知事は12年2月23日、県庁に牧野聖修経産副大臣を呼んで伝えた。「政府の真剣な姿勢と安全確保対策があるなら、地元として協力は惜しまない」。政権が「再稼働は妥当」と判断する1カ月以上前に、早くも前向きな姿勢を伝えていたのだ。


経済界、必死の攻勢

 野田政権が、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働に正式なゴーサインを出す1週間前の12年4月6日。ある経済人には、政権の決断がいち早く伝えられていた。
 「決めました。枝野大臣も同じ考えです・・・

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本当に「脱原発」は実現するのか 再稼働に突き進む野田政権の裏側
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東京電力福島第一原発事故から1年あまり。野田政権は、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働を地元に要請した。中長期の原発政策が定まらないまま、野田政権は原発再稼働へひた走り、脱原発派は危機感を募らせている。菅政権の「脱原発」はかすみ、「減原発」すら怪しくなってきた。[掲載]朝日新聞(2012年4月15日〜18日、9300字)

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