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朝日新聞社

東電は「全員退避」と言ったのか 福島第一原発事故の「核心」

初出:朝日新聞2012年5月1日
WEB新書発売:2013年2月22日
朝日新聞

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 福島第一原発事故の原因を究明するため、政府、国会、東電が事故調査委員会をつくり、今夏に向け最終報告書をまとめている。これまで出された中間報告と民間事故調の報告書を比べ、未解明の点を整理した。

◇緊急冷却装置後回し 1号機、東電手順書に疑問点
◇進む危機、ずれ続けた対応
◇技術面での分析進まず 核心、どこまで迫れる


緊急冷却装置後回し 福島第一原発1号機、東電手順書に疑問点

 東京電力福島第一原発事故で最初に炉心溶融を起こした1号機について、緊急時に原子炉を冷やす際に最初に冷却装置は使わずに対処する手順書になっていたことが、朝日新聞の調べでわかった。専門家は手順書通りに操作すると事態が悪化するとして、手順書の不備の可能性を指摘。政府事故調査・検証委員会も最終報告に向けて調べている。
 問題の装置は、非常用復水器(IC)という装置。原子炉の蒸気を冷やして水にして原子炉に戻す。元々は電源がなくても作動する設計で、緊急時の重要な冷却装置。しかし、運転を指揮する当直長の手順書には、最初にICは使わずに主蒸気逃し安全弁を開けて原子炉の圧力を下げるよう書かれている。ICが実際に作動したのはこの20年間で一度もなく、運転員はコンピューターでしか訓練していなかった。
 ICがついているのは1号機以外では日本原電敦賀原発のみ。敦賀1号機の手順書は運転開始の1970年当時とほぼ変わらず、ICを優先して使うようになっている。東電の元幹部は「福島第一原発も運転開始時はICを優先して使うようになっていた」と話す。東電はICの手順書の変更は認めているが、元々の手順書がどうだったのかはわからないとしている。
 2011年3月の事故では、現場の混乱で1号機の主蒸気逃し安全弁の操作は手順通りできなかった。ICが自動起動したが、急激に温度が下がると原子炉が損傷する恐れがあるとして約10分後に手動で止めた。その後手動で再起動と停止を繰り返して原子炉をゆっくり冷やそうとしたが、弁が少ししか開かなくなり十分冷える前に止まった。


 日本原子力研究開発機構安全研究センターの更田(ふけた)豊志副センター長は「安全弁をいきなり開けると、圧力が一気に下がって原子炉内の水が沸騰し、空だき状態になる恐れがある」と指摘。「ICが十分に機能していれば、事故が進むのを防げたかもしれない。手順書の検証が必要だ」としている。
 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「運転員の手順書では安全弁またはICで原子炉の圧力を下げるようになっている。安全弁とICに優先度の違いはない」と話す・・・

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東電は「全員退避」と言ったのか 福島第一原発事故の「核心」
216円(税込)

福島第一原発事故の発生から1年余。これまで中間報告書が公表されているが、事実認定や認識に違いがあり、多くのなぞが残る。東電は「全員退避」と言ったのか、緊急冷却の手順に問題はなかったのか。これまで出された中間報告と民間事故調の報告書を比べ、未解明部分を浮き彫りにした。(2012年5月1日、9700字)

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