世相・風俗
朝日新聞社

生きづらくたって大丈夫 拒食から恋愛まで 4人の女性の人生アルバム

初出:朝日新聞2012年2月21日〜6月1日
WEB新書発売:2012年6月15日
朝日新聞

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 きっかけは中学1年の時。仲良しのクラスメートから「一緒にダイエットしよう」と誘われた。「やせたい」思いが恐怖感に変わり、拒食症で入院。約2年後、襲ってきたのは「食べたい」という衝動だった。20代から30代を中心に女性の仕事や恋愛、人生への思いをつづった朝日新聞の人気連載「彼女の事情」。

◇第1章 食べて吐いて、私に気づいて
◇第2章 女の園、心はすっぴん勝負
◇第3章 私のせい?離れられない
◇第4章 美の追求、一緒に夢みる


第1章 食べて吐いて、私に気づいて

〈第1話〉ちょっとダイエット いつしか恐怖に
 「病気で学校に行けない時期もありましたが、挑戦をあきらめませんでした」
 大阪のオフィスビルであったIT関連会社の採用面接。みな子(22)は細身の体に黒のパンツスーツで決めて、すらすらと自己アピールした。ふと、感慨がこみ上げた。
 私にも、こんな日がきたんだ。
 大学3年生。もう10年、摂食障害という心の病と闘ってきた。最近になって症状が落ち着くまで、働けないんじゃないかと不安だった。
 きっかけは中学1年の時。仲良しのクラスメートから「一緒にダイエットしよう」と誘われた。身長の伸びが止まり、体形が横に大きくなっているようで不安だったし、ちょっとご飯の量を減らすぐらいから始めてみた。
 しばらくして、「やせたい」思いが「体重が増えるのが怖い」という恐怖感に変わった。母のお弁当を断り、手のひらより小さい幼児用の弁当箱に自分でつめ、学校にもっていった。家の食事もほとんど残すようになった。「なぜ残すの?」と母は困り切った顔。でも食べられない。
 体を動かさないと太ってしまう。強迫観念が離れず、ふらふらになってバレー部の練習に打ち込んだ。帰宅後は近くの公園を泣きながら走った。心と体がバラバラ。
 14歳のみな子は、身長159センチで30キロまでやせていた。見かねた養護教諭が母と面談し、精神科への入院が決まった。夜。「ごめんね、ごめんね」と母は泣き崩れた。
 約2年後、退院した時は高校生。今度は、「食べたい」という衝動が襲ってきた。
 菓子パン、ケーキ、クッキー、アイスクリーム……。学校の行き帰りにスーパーに駆け込み、3人分ぐらいの食べ物を買う。それを抱えてデパートのトイレにこもり、胃に詰め込んだ。おなかがパンパンになると、ミネラルウオーターを飲んで吐き出した。
 食べては吐いて。体重は3カ月で20キロ増えた。
 過食行為の苦しさにもまして後からこみ上げる罪悪感。
 恥ずかしい私。衝動から逃げられない私。自分が嫌。消えてなくなりたい――。不安から逃げたくて、リストカットを繰り返した。
 育ったのは瀬戸内海沿いの街。優等生だった。中高一貫の名門中学に合格した。
 はた目には幸せそうな家庭だっただろう。だが、父は仕事だ、酒だと深夜にしか帰らず、母は姑(しゅうとめ)と折り合いが悪かった。みな子が2階で寝ていると、両親が怒鳴り合う声がよく聞こえた。
 たぶん、夫婦仲を修復しようとしたのだろう。「お父さんと話をしてきて」と母からよく頼まれた。嫌。だけど、そう言えなかった。両親の顔色をみながら、行ったり来たり。私って、いけにえ・・・

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生きづらくたって大丈夫 拒食から恋愛まで 4人の女性の人生アルバム
216円(税込)

きっかけは中学1年の時。仲良しのクラスメートから「一緒にダイエットしよう」と誘われた。「やせたい」思いが恐怖感に変わり、拒食症で入院。約2年後、襲ってきたのは「食べたい」という衝動だった。20代から30代を中心に女性の仕事や恋愛、人生への思いをつづった朝日新聞の人気連載「彼女の事情」。摂食障害をテーマにした「トンネルの向こう」、統合失調症をテーマに「姉と生きる」など4シリーズを収録。[掲載]朝日新聞(2012年2月21日〜6月1日、12100字)

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