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朝日新聞社

生活保護問題 監視強化で自殺者激増? 知られざる制度の穴

2012年06月22日
(5500文字)
朝日新聞

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 人気お笑い芸人の母親が生活保護を受けていたという報道を機に、生活保護と扶養義務に注目が集まっています。厚生労働省は扶養義務を徹底するため、自治体に確認をきちんとさせる方針を打ち出しました。現状と課題について考えます。

◇親族調査、徹底に限界
◇老親扶養義務は時代遅れ?
◇調べるほどに深まる傷


親族調査、徹底に限界

◎そもそも申請者と疎遠
 貧しい親や兄弟を扶養する義務を、身内にどこまで求めるべきなのか。生活保護を支給する側の自治体も、課題を抱えている。
 働くことができず経済的に行き詰まった人が、生活保護を受けたいと市町村の福祉事務所に申請すると、ケースワーカーと呼ばれる担当者が世帯の収入や資産を調査する。親や子、兄弟など親族に扶養の可否を尋ねる調査も、この時におこなう。
 本人に関する調査では、必ず家庭訪問をして、高級品の有無など持ち物を調べたり、銀行に問い合わせて預貯金を調べたりする。一方、遠く離れて暮らす親族への調査は、書類の郵送が基本だ。「できれば実地に調査する」とされるのは、「相当の扶養能力」が認められる場合だけだ。
 関西のある市の生活保護担当課長は「「子どもや兄弟に『扶養できるか』と尋ねて実際に扶養してくれるのは、おそらく1割にも満たない」という。「住宅ローンがきつい」「子どもの教育費がかさんで」。身内の回答からは、暮らしに余裕がない言葉が並ぶ。「そもそも生活保護の申請者は親族と疎遠な人が多い。十分な所得がある身内もまれ」と指摘する。
◎ケースワーカーが不足
 多くの収入があるのに、特に理由もなく親族の扶養を拒むケースもある。法律的には、自治体は家庭裁判所に申し立てて、生活保護にかかった費用を徴収することができる。だが、ベテランのケースワーカーたちは「親の扶養をめぐって自治体が家裁へ申し立てた例は聞いたことがない」と口をそろえる。
 扶養義務の不履行がそのままにされるのは、なぜか。
 大きな理由の一つがケースワーカーの人手不足だ。厚生労働省によると、2000年度に約75万世帯だった生活保護世帯は、09年度には約127万世帯まで急増。ケースワーカー1人あたりの担当数は、00年度の78世帯から09年度は96世帯に増え、社会福祉法で定める都市部の標準数の80世帯を上回っている。
 大阪府内の生活保護担当職員は打ち明ける。「家庭訪問や事務処理に追われている。援助してもらえる可能性が低いのに、扶養義務の調査に手間をかけてはいられない・・・

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生活保護問題 監視強化で自殺者激増? 知られざる制度の穴
216円(税込)

高い収入を得ている人気お笑い芸人の母親が、生活保護を受給していたという報道を機に、社会保障のあり方をめぐる議論が広がっている。資産がなく、働くことができない人に最低限度の生活を保障する生活保護と、親族間の扶養義務はどう両立させるべきなのか。監視や規制の強化は、何をもたらすのか。諸外国ではどんな制度になっているのか。現状と課題をまとめてみた。[掲載]朝日新聞(2012年6月7日〜6月12日、5500字)

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