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医療・健康
朝日新聞社

「胃ろう」は本当に必要か? 終末期医療の難題

初出:2012年6月24日〜6月29日
WEB新書発売:2013年4月26日
朝日新聞

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 口から食べ物や飲み物をとれなくなった高齢患者の胃に穴を開け、管を通して直接流動食や薬などを投与する人口的な栄養補給法の「胃ろう」。だが、日本老年医学会の医師1000人のアンケート回答から、中止したり差し控えたりする医師が半数以上いることが明らかになった。その理由とは何か。「胃ろう」は本当に必要なのか。患者・家族の悩み、医師との意思疎通の問題なども含め、高齢者の終末期医療のあるべき姿を探る。

◇胃ろうの手順整備
◇胃ろう 悩む医師・家族
◇胃ろう 本当に必要?


胃ろうの手順整備

 お年寄りが口から食べたり飲んだりできなくなった時、胃ろうなどの人工栄養法を始めるか。始めても健康が回復しなければ、中止すべきか。医師も家族も、悩み、迷っている。朝日新聞社は日本老年医学会と、終末期の高齢者への人工栄養法の実態について共同調査を行った。選択に揺れる患者、家族も訪ねた。

◎人工栄養中止、医師2割が経験 老年医学会
 高齢者医療を担う医師の2人に1人が、過去1年間に胃ろうなどの人工栄養法を途中で中止したり、最初から差し控えたりしていたことが、朝日新聞社と日本老年医学会の共同調査でわかった。中止を経験した医師だけでも2割いた。患者・家族の希望などが理由だ。
 胃ろうの目的は、自分の口で食事をとれなくなった患者が、回復するまでの栄養補給だ。本人の不快感が少ない上、介護者が手入れしやすく、導入数が増えた。厚生労働省研究班の調査では、胃ろうにした認知症の高齢者約1千人の半数が、847日以上、生存していた。一方で、回復の見込みや患者・家族の事情を考慮せずに使うケースも増加。意識もないまま、寝たきり状態が長く続く高齢者の存在が問題になった。
 今回、朝日新聞は同学会と共同で、終末期の高齢者への人工栄養の実態を探るため、同学会の医師会員4440人を対象に12年6月上旬、アンケートを送り、1千人(回答率23%)から回答を得た。この結果、過去1年間に、胃ろうなどの人工栄養を中止したり、差し控えたりした経験のある医師は51%を占めた。中止は22%で、1人あたり平均で4・0回、中止していた。
 中止の理由を複数回答で聞くと、「下痢や肺炎などの医学的理由」が68%と最多で、「本人の苦痛を長引かせる」が30%、「家族の希望」28%と続いた。医師側から家族に中止を提案した医師も12%いた。


 最期が近づいた患者に、過剰な栄養を入れると、むくみや痰(たん)が出て、肉体的な苦痛を伴う。また、意識のないまま、死までの時間が長くなり、本人や家族が望まない延命につながることもある。胃ろうなどを中止すれば、一般的に患者は1週間から10日で亡くなる。
 一方、患者側は中止を希望したが、法的、倫理的な問題があると考え、中止しなかった医師も11%いた。
 また、48%の医師が差し控えを経験していた。平均で6・7回だった。家族の希望が69%で最多で、「患者の苦痛を長引かせると判断」が48%、「本人の意思を家族から伝えられた」が42%と続いた。病院への入院時や施設への入所時に、人工栄養の導入や中止について、24%の医師が書面で意思を確認していた。
 同学会の指針は、人工栄養法について、患者本人や家族の意思を尊重し、支援するのが目的。状況により中止や差し控えも選択肢となる手順を示す・・・

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