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政治・国際
朝日新聞社

フクシマ後「つくる・やめる・売る」世界の原発事情

初出:2012年7月10日〜7月12日
WEB新書発売:2012年7月20日
朝日新聞

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 福島原発事故は世界にどんな影響を与えたか。原発建設が中断したままのブルガリア。初の原発購入に意欲を示すヨルダン。原発推進にゆるぎないインドやパキスタン、中国や韓国。脱原発を目指すものの様々な問題に直面しているドイツやベルギー。原発増設は進まずエネルギー政策が揺れる原発大国のアメリカやフランスや日本……。フクシマ後の各国の動きを多角的に追い、悩む国、造って売りたい国、盛り上がる反原発運動を抑圧する国など原発をめぐるそれぞれのお国事情、買い手が力を強める原発市場などを紹介する。

◇原発に傾く新興国
◇脱原発、送電網の壁
◇市場、買い手優位に


原発に傾く新興国

 東欧ブルガリアの北端、ドナウ川沿いの町ベレネ。ブドウ畑を抜けた河畔に動かぬクレーンが並び、さびた鋼材が積み上がる。ベレネ原発の予定地だ。
 ソ連(当時)の援助で始まった建設は冷戦崩壊でストップ。2007年に欧州連合(EU)加盟が決まって再開に転じたが、親米路線の政権がロシア企業と対立、今春、中止を決めた。
 だがドゥレフ町長(58)は「30年も待ち焦がれてきた。後にひけない」と話す。人口1万人。平均月収は約450レバ(約2万2500円)とEU内でも特に貧しい。原発は8千人の雇用を生み、税収増で予算規模は1・5倍に――。周辺自治体も「中止」に猛反発し、政府の方針撤回を求める決議を採択し、対決姿勢を強めている。
    ◇
 欧州の旧共産圏の国は、経済成長を支えるエネルギーのロシア依存を減らす原発の建設に熱心だ。東京電力福島原発の事故の後も変わらない。ベレネの養蜂業ウラジミールさん(40)は「ブルガリアに津波はない。大地震に耐える最新型と聞いている」と話す。
 ベレネ原発は「ゾンビ」とも呼ばれる。ドゥレフ町長は自信ありげだ。「いずれ、きっと復活する」。ただし、2基で100億ユーロ(約1兆円)と想定の倍になった建設費は、耐震策などでさらに膨らみかねない。


 経済成長を支える原発への依存は新興国で鮮明だ。
 「身分証を」。インド南端のクダンクラム原発は、12年8月の運転開始を控えて約100人の警官が配され、神経質な空気だった。
 福島の事故で反対運動が激化し、州政府は5人以上の集会を禁じた。ココナツ売りのガネシャンさん(42)は13人のメンバーとともに逮捕された。拘束は3週間を超え、今も警察に定期的な出頭が科されている。拘束された人は700人を超えた。「警察が動員されていては声を上げられない」
 政府は、原発の発電能力を20年後に今の13倍、6300万キロワットにするのが目標だ。シン首相は国会で「原発の否定は国に害を及ぼす」と言い切った・・・

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