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朝日新聞社

非正社員として働くということ 非正規公務員とパートの厳しい現実

初出:2012年6月29日〜8月3日
WEB新書発売:2012年8月24日
朝日新聞

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 長引くデフレ不況とリストラで、正社員として働くことが年々難しくなる日本。公務員でありながら有期契約、賃金や社会保障や福利厚生も不利で、不安定な働き方を強いられる「非正規公務員」、会社の屋台骨として働き、勤務時間も仕事内容も正社員と同じなのに福利厚生、有給休暇では正社員と大きな差をつけられている「パート」。正社員でないというだけで、なぜこんなに差別されなければならないのか――根っこから腐り始めている不安な「しごと」の現場をレポートします。

◇第1章 非正規公務員
  (1)経験積んでも雇い止め
  (2)毎春、終業式後に失業
  (3)福祉の現場、誇りが支え
◇第2章 パートで生きる
  (1)「家計の足し」今は昔
  (2)仕事は正社員並みなのに
  (3)労組に入ってもの申す


第1章 非正規公務員

(1)経験積んでも雇い止め/低い待遇 ほど遠い安定

 働き始めて7年目。でも、この先いくら頑張っても、もう2年も働けない。中部地方の市立保育園で1年更新の嘱託職員として働く保育士の女性(38)は、再来年の春に職場を追われる。嘱託の雇用は「最長8年、再雇用は不可」と市が決めているためだ。
 「仕事がないと、やっていけない。これまで積み重ねた経験を評価してほしい」
 高校1年の長男(15)と小学2年の次男(7)を育てるシングルマザー。生命保険の外交員や工場の派遣労働者をしてきたが、不安定な収入に悩んできた。なんとかしたいと思って見つけたのが、いまの保育士の仕事だ。短大でとった資格があり、子育ての経験も生かせると思った。
 2歳未満のクラスを担当し、経験の浅い保育士の指導もする。月給は16万円余。額は後輩の正規職員より少なく、昇給もない。生活に追われ、貯金はほとんどできない。
 再来年の春以降も働くには正規職員になるしかない。だが、年齢が壁になり、採用試験さえ受けられなかった。
 長男の将来の夢は薬剤師。「私立大は絶対無理。せめて国公立を目指せるだけの勉強はさせてあげたい」。近くの別の市町で保育士の空きを探すか、違う仕事を見つけるか。まだ答えを出せないでいる。
 正規職員の削減圧力が高まる公務員の職場で、人手不足解消のため非正規職員を増やす動きが広がっている。産業別労働組合の自治労によると、その数は自治体職員だけでも60万人に上るとみられ、職員の4人に1人を占める。統一したルールはないが、多くの自治体では雇用期間に上限があり、働く人々には雇い止めの心配が尽きない。
    ◇
 12年6月下旬の新潟県長岡市。県農業総合研究所の非常勤職員、笹崎美由子さん(60)は大豆畑で腰をかがめて苗を間引いていた。6月末で15年近く続けた仕事を失う。非常勤なので定年はないが、「勤続5年で雇い止め。その後、6カ月間は再雇用しない」という県のルールができたためだ。
 半年後に募集があっても、「もう無理かも」と、復職はほぼ、あきらめている。「まだ体力はあるのに、残念。制度だから仕方ないけど……」
 品種改良や病害虫対策を調べる研究者や技術員を手伝うため数カ月単位で繰り返し雇われてきた。技術員の高橋一寿さん(58)は「任せてきたのはコツのいる仕事ばかり。雇い止めは研究にも大損失」。日給は7千円余。8時間弱の勤務の大半は戸外で、つらくて辞める人も多い。
 「もっと働きたい!」。廊下の労働組合の掲示板には、蛍光ペンでそんな寄せ書きをしたビラが残る。12年7月からの勤め先は決まっていない。


 雇用が続いても、待遇の低さは一向に改善しない。
 東海地方の公立図書館で働く非常勤職員の女性(50)は、勤続7年目。仕事は以前と同じだが、月給は2年前より1万5千円近く減り、初任給に逆戻りした。手取りの年収は200万円に届かない。
 理由は・・・

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