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朝日新聞社

楳図かずおの製造法 想像力を育んだ紀の国の魔力

初出:2012年7月30日〜8月24日
WEB新書発売:2012年9月7日
朝日新聞

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 ホラー漫画の「へび少女」、SF漫画の「わたしは真悟」、ギャグ漫画の「まことちゃん」など、数々のヒット作品で知られる楳図かずおが、生まれ故郷の和歌山と育った奈良県を通して自身の生き方と恐怖作品を生みだした背景を語る。一族の菩提寺のある高野町の伝説、山歩きや町歩きをしながらストーリーを練った思い出、自宅「まことちゃんハウス」の景観論争や断筆に至る経緯、いじめや原発の話などから、時代の先を読み、人間を深く読み込む楳図の創造力の源泉、自立する信念が伝わる。

◇第1章 「恐怖」学んだ 故郷伝説
◇第2章 「山育ち」が創作のルーツ
◇第3章 ヘビより「恐怖」 人間の心
◇第4章 「頭」に苦しみ 不思議体験
◇第5章 文学性感じる「極楽浄土」
◇第6章 若々しさ 歩いて気分転換
◇第7章 未来開く 自ら描き願う姿
◇第8章 恐怖感じ「ゆがみ」正せ


第1章 「恐怖」学んだ 故郷伝説

 「恐怖漫画」の分野を切り開いてきました。小学4年のころに手塚治虫さんの漫画「新宝島」を読んだんです。こんな漫画を描く人になりたいと5年生から没頭しました。

 ――楳図は絵が天才的にうまかった。赤白のしま模様の外観で有名になった自宅「まことちゃんハウス」には、中学2年生で描いた、少年と少女を元にしたステンドグラスがある。シャガールを連想させる幻想的な作品は、とても中学生のものとは思えない。

 絵はすぐに描けるようになったんですが、どんなストーリーにすればいいのか、分からない。高校を卒業してプロでやっていこうと決心していたので、懸命に考えました。その当時の漫画に「恐怖」という分野がないのに気づきました。なぜ、そう思いついたのか。子どもの頃に父や母が寝物語に話してくれた昔話が原点になったと思います。



 ――奈良県内の山の分校などで教員をしていた父は、話がうまかった。

 奈良県曽爾(そに)村に伝わる「お亀池」という怪談を寝ながら話してくれました。主人公の男がお亀という嫁をもらった。お亀の足跡がぬれているので、不思議に思い、あとをつけると、お亀がヘビになって男を追いかけるという話です。
 母の話もおもしろかった。母は伝説ではなく、身の回りに起こった怖い出来事を題材にしてくれました。山でウワバミ(大蛇)に出会ったら、どうするか。ヘビの弱点である尻尾を手おので狙え、と。大人になってテレビでアマゾン流域の生活を紹介する番組を見ました。現地の人たちが、ヘビの尻尾をごしごしナイフで擦ったら、ヘビはとぐろをまいて、おとなしくなった。母の話は本当だったんです。

 ――ヘビは、楳図漫画が追求した「恐怖」の象徴的な存在になる。楳図は27歳で上京し、「へび少女」などを発表し、注目された。

 ヘビに変身した女性が恋人を追いかける日高川町の道成寺に伝わる「安珍清姫」伝説を読んで、怖さとは何かを勉強しました。その後の大きな財産になりました・・・

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