【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

社会・メディア
朝日新聞社

富士山世界遺産への道 信仰の山の25「資産」を訪ねる

初出:2012年8月1日〜8月18日
WEB新書発売:2012年9月7日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 古くから山岳信仰の地として崇められてきた日本を象徴する富士山。現在、2013年6月の世界遺産登録をめざしているが、その対象となる構成資産は広域に分布する。秀麗な山域の9つの資産に加え、家康の庇護を受けた富士山本宮浅間大社、信玄が安産祈願した富士御室浅間神社、富士講の巡礼者が禊をした忍野八海、巡礼地の山中湖や白糸の滝、溶岩流が森林に流れ込んでできた船津胎内樹型、羽衣伝説で知られる三保松原など、全25の貴重な推奨資産を観光アクセス情報付きで紹介する。

◇第1章 〈富士山域〉神宿る信仰の山
◇第2章 〈富士山本宮浅間大社・山宮浅間神社〉噴火鎮まれと建立
◇第3章 〈三つの浅間神社・人穴富士講遺跡〉山岳修行伝える跡
◇第4章 〈富士御室浅間神社・河口浅間神社〉信玄が安産祈願状
◇第5章 〈旧外川家住宅・小佐野家住宅〉信仰登山者の宿坊
◇第6章 〈山中湖・河口湖〉富士講の巡礼の地
◇第7章 〈忍野八海〉湧水池 竜神まつる
◇第8章 〈船津胎内樹型・吉田胎内樹型〉空洞は人体のよう
◇第9章 〈白糸の滝〉頼朝、立ち寄り一首
◇第10章 〈三保松原〉羽衣伝説残る名勝


第1章 〈富士山域〉神宿る信仰の山/30万人山頂めざす

 夏の夜、3776メートルの剣が峰をめざして、登山客が山道を登る。足元を照らすライトの列は、甲府盆地から見える日もある。
 古来、噴火を繰り返す富士山は神が宿る山とあがめられ、遠くから拝む「遥拝(ようはい)の山」だった。平安時代、修行僧の末代上人(まつだいしょうにん)によって入山が始まり、信仰心を持って登る「登拝(とはい)の山」へと変わっていく。
 世界文化遺産への登録をめざす富士山には、25の推薦資産がある。「信仰の対象」や「芸術の源泉」となるもので、その象徴となるのが独立峰の「富士山域」だ。


 標高1500メートル以上、宗教的な意味から乗馬登山ができなくなる「馬返(うまがえし)」より高い山域を指す。特に神聖とされるのが、8合目(標高3200〜3375メートル)以上の範囲だ。富士山本宮浅間大社の境内になり、8合目は山頂の噴火口(内院)の底部に浅間大神が鎮座する高さとされる。
 山域は九つの要素からなる。山頂に点在する信仰遺跡、大宮・村山口(現富士宮口)や須走口など四つの登山道、吉田口登山道の起点となる北口本宮富士浅間神社、山域と一体となる西湖、精進湖、本栖湖の三つの湖だ。
 7月1日〜8月31日の夏山シーズン。かつて修験者が歩いた四つの登山道を通って、約30万人が山頂をめざす。日の出を拝む「ご来光」、火口の周りを歩く「お鉢めぐり(八葉めぐり)」。富士信仰は現在に受け継がれている。

■アクセス
 富士山へは山梨県側からは富士吉田口(富士スバルライン)が利用できる。8月4〜15日はマイカーでの立ち入りが規制される。
 静岡県側は富士宮口(富士山スカイライン)、須走口(ふじあざみライン)、御殿場口から。富士宮口と須走口も8月19日午後5時までと、同24日午後5時〜26日午後5時はマイカー規制。マイカー規制中はいずれも有料のシャトルバスかタクシーで5合目まで。


第2章 〈富士山本宮浅間大社・山宮浅間神社〉噴火鎮まれと建立/家康の庇護、火口さい銭回収権

 朱色の大鳥居の後ろに、富士山が迫る。富士宮市にある富士山本宮(ほんぐう)浅間大社は、全国に1300余りある浅間神社の総本宮とされる。


 約5キロ北側にある山宮浅間神社が前身とされ、社伝には806年に遷宮されたとある。富士山を拝み、噴火を鎮めようと建立された。
 15世紀ごろ、信仰心を持って富士山に登る登拝(とはい)が盛んになった。富士宮口登山道の起点となり、周辺には宿坊ができた。
 富士山中での諸権利が広がる中、徳川家康の庇護(ひご)を受け、山頂の噴火口に投げ入れられたさい銭を回収する権利を得た。山頂部を管理するようになり、やがて江戸幕府によって8合目以上の支配権を認められた。明治政府によって一時は国有地になったが、最高裁判決に基づいて2004年に権利を取り戻した。
 「浅間造り」と呼ばれる二層構造の本殿は、家康が寄進したもので、国の重要文化財に指定されている。本殿横の「信玄桜」は、武田信玄が手植えした枝垂れ桜の2世と言われる。
 境内にある国指定特別天然記念物の「湧玉(わくたま)池」は、「平成の名水百選」にも選ばれた。富士山の雪解け水が溶岩の間から湧き出たもので、四季を通じて水温は13度、1日平均14万トンの湧水(ゆうすい)量を保つ。かつては、ここで身を清め、登山に向かった・・・

このページのトップに戻る