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朝日新聞社

生活再建が見えない! 仮設暮らしと福島原発の現実

初出:朝日新聞2012年9月11日〜9月13日
WEB新書発売:2013年4月12日
朝日新聞

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 東日本大震災、福島第一原発事故から1年半。家や仕事を失った被災者たちはどんな暮らしをしているのか。原発事故は本当に「収束」したのか。被災地はどこまで復旧したのか。仮設暮らしの悲喜こもごも、被災3県沿岸部の状況、放射能汚染との地道な闘いなどから見えてくるのは、政治の掛け声とは大きくかけはなれた厳しい現実ばかり。福島県の「仮のまち」整備もこれからだ。逆境に生きる人々の祈りと希望、いますぐ取り組むべき課題がひしひしと伝わる。

◇第1章 汚染との闘い続く
◇第2章 よみがえれ大地
◇第3章 生活再建の日いつ
◇第4章 仮のまち 整備始動へ
◇第5章 仮設暮らしの現実


第1章 汚染との闘い続く

 東京電力福島第一原発事故で広く飛び散った放射性物質は、1年半たってどうなっているのか。今後、将来にわたってどう変わっていくのか。自然減に加えて除染でどこまで減らすことができるのか。被災した住民は、自らの将来をどうすればよいかを判断する材料は乏しい状況だ。判断に役立ててもらうため、国は実態調査を進めて放射能汚染がどう変わるのか、地道にデータを積み上げている。
◎福島第一、たまった汚染水20万トン
 30〜40年かかるとされる廃炉に向けた準備がようやく始まったが、原子炉の溶けた燃料を冷やす冷却水の流量は不安定な状態が続いており、放射能汚染水も増える一方で、東電は対策に追われている。
 同原発1〜3号機の原子炉圧力容器への冷却水の注水量が12年8月下旬、冷却に必要な量を一時的に下回るトラブルが起きた。事故直後を除くと初めての事態だ。東電の12年9月10日までの調査では、注水用の水をタンクから原子炉へ送る配管が、配管の材料であるポリエチレンの切りくずでふさがれた可能性が高いことがわかってきた。
 東電は注水量の調整を続けており、原子炉格納容器の空気や圧力容器の底部の温度は35〜55度の範囲に収まっているが、根本的な対策はまだ講じられていない。
 注水などに伴い、放射能汚染水が1日約450トン発生している。浄化処理して一部は原子炉の冷却に再利用しているが、残る約20万トン(12年9月4日現在)はタンクにためている。東電はタンクが満杯にならぬよう70万トン分まで増設する予定だ。
 汚染水は、原子炉建屋へ地下水が流入することでも増える。流入を防ぐため、東電は建屋の西側に12本の井戸を掘り、地下水をくみ出す計画だ。
 廃炉に向けた準備では、東電は12年10月上旬、2号機に続き1号機の原子炉格納容器内をカメラで確認したり、放射線量、汚染水の水位、温度を測ったりする。溶けた燃料の取り出しに向け、内部の状態を把握するためだ。温度計も設置して中の様子を常時監視できるようにする。
 今後、高い放射線量の原子炉内で、人間に代わって格納容器内の調査、水漏れ修理、除染などができるロボットの開発も進める。
 燃料プールの燃料は12年7月、4号機で試験的に2体を取り出した。その後、燃料の状態を確認したが、大きな異変はなかったという。13年12月に本格的に取り出しを始め、発電所内の共用プールに移す。取り出しに向けて、クレーンを備えた建屋カバー設置の基礎工事も進みつつある。
 原子炉建屋から放出されている放射性セシウムは12年8月現在、1〜3号機の合計で毎時約1千万ベクレル。12年2月以降、放出量は下げ止まっている。


◎土壌・川・森 複雑に拡散
 猛暑日となった12年8月下旬、福島市で文部科学省による放射性セシウムの土壌分布調査が行われた。
 金属板で深さ5ミリ刻みから1センチ刻みで土をはぎ取る。研究室に持ち帰り、深さごとの放射性物質の濃度を測る。地中から異物が出て作業が中断することもある。この日も2時間掘ったところで、大きな木の根に阻まれた。「モグラの穴に出くわし、時間がかかることもある」と調査員は話す・・・

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生活再建が見えない! 仮設暮らしと福島原発の現実
216円(税込)

東日本大震災、福島第一原発事故から1年半。家や仕事を失った被災者たちはどんな暮らしをしているのか。原発事故は本当に「収束」したのか。被災地はどこまで復旧したのか。仮設暮らしの悲喜こもごも、被災3県沿岸部の状況、放射能汚染との地道な闘いなどから見えてくるのは、政治の掛け声とは大きくかけはなれた厳しい現実ばかり。福島県の「仮のまち」整備もこれからだ。逆境に生きる人々の祈りと希望、いますぐ取り組むべき課題がひしひしと伝わる。(2012年9月11日〜9月13日、14900字)

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