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政治・国際
朝日新聞社

紅の党〔2〕 「赤い貴族」たちの権力と蓄財

初出:2012年8月14日〜9月11日
WEB新書発売:2012年9月21日
朝日新聞

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 中国共産党の高官の親族には人脈や血脈をビジネスにいかした資産家が少なくない。官僚や党幹部の子弟は「紅二代(革命第2世代)」などと呼ばれ、中国社会で既得権を形成している。希代の野心家、薄熙来の半生を取材した第1部に続き、第2部ではこうした「赤い貴族」とも呼ばれる高官子弟らの権力と蓄財のかかわりを追う。

◇第1章 幹部蓄財、子弟に注ぐ
◇第2章 香港の不動産買いあさる
◇第3章 派手な留学生活、エリートへの肩書作り
◇第4章 留年危機で、中国高官が大学に圧力?
◇第5章 金持ち子弟受け入れ 欧米側にも思惑
◇第6章 英国人はいつ近づき、なぜ殺されたのか
◇第7章 仏建築家と共同経営、同じ「自宅」に
◇第8章 疑惑の仏建築家、役割は闇の中
◇第9章 脚光の弁護士、表舞台から被告席へ
◇第10章 高官子弟、留学中は高級車にロブスター
◇第11章 数千万円の留学費、「大連の企業家が提供」
◇第12章 笑顔の人気者、授業よりiPhone
◇第13章 将来の便宜期待、在米実業家ら集う
◇第14章 「ハーバード大、まるで党幹部養成の分校」
◇第15章 党幹部のハーバード学費、香港企業が負担
◇第16章 20歳で地方に下放、「鋼の意志」得る
◇第17章 習近平氏の姉には「会えません」
◇第18章 ビル利権動かす「習ファミリー」人脈
◇第19章 取材の2日後、会社は解散した
◇第20章 清貧の母「近平の威光で資産築くな」
◇第21章 情実人事の告発者、連れ去られる
◇第22章 「相手は省幹部」諦めるよう説得された
◇第23章 コネ人事の横行、「中国数千年の伝統」
◇第24章 有力者との関係「最大の力であり、保険」
◇第25章 カナダは天国、6億円の豪邸に華人集う
◇第26章 幹部の家族、人と距離置き口数少なく
◇第27章 「きつつきおばさん」指導部のお目付け役
◇第28章 指導部は沈黙、「だから改革は進まない」
◇エピローグ 巨大政党の闇 浮き彫り


第1章 幹部蓄財、子弟に注ぐ/ダイアナ妃も住んだ高級住宅

 エリザベス英女王の公邸バッキンガム宮殿から西へ約4キロ。高級不動産物件が立ち並ぶロンドンのアールズ・コート(伯爵の庭園)地区の一角に、その赤れんが造りの建物がある。
 故ダイアナ妃が結婚前に住んでいた高級マンション。ここに中国共産党の重慶市委員会書記だった薄熙来(ポーシーライ)(63)の息子、瓜瓜(コワコワ)(24)も一時暮らしていた。
 「あっ、ワワじゃないか」。同マンションの営繕を担う男性は、瓜瓜の写真をひと目見て声を上げた。瓜瓜は欧米人から「ワワ」と呼ばれていたという。「よく覚えているよ。寝室が三つある、1階の大きな部屋だった」
 瓜瓜は1990年代末、11歳で渡英。名門ハロー校からオックスフォード大に進学し、このマンションに住んだ。高級店で豪華なパーティーを開く姿が頻繁に目撃されていた。
 瓜瓜が住んだ部屋と似た約150平方メートルの一室はいま、3億円近くで売りに出されている。物件を扱う地元の不動産業者は「セレブが多い国際色豊かな地区の人気物件だ」と話した。


 登記簿を調べてみた。瓜瓜の部屋は2002年4月、タックスヘイブン(租税回避地)として知られる英領バージン諸島にある「ゴールデン・マップ」という会社が、約9千万円で購入していた。
 英フィナンシャル・タイムズ紙によると、部屋の元所有者は「フランス人男性が部屋の購入を求め、ゴールデン・マップの名義で、香港から手続きした」と売買の経緯を語っている。
 このフランス人男性とは建築家のパトリック・ドゥビレール(52)。
 薄の妻で、英国人実業家ニール・ヘイウッド(当時41)殺害事件の被告である谷開来(クーカイライ)(53)と不動産開発会社を設立したビジネスパートナーだ。12年6月、滞在先のプノンペンで中国当局の要請を受けたカンボジア当局に拘束され、現在、中国国内で、薄夫妻のマネーロンダリングをめぐって調べに応じている。
 12年8月9日の同事件の初公判で、谷は殺害の動機について「土地取引をめぐってトラブルになり、息子が脅された」と語った。谷は捜査過程で60億ドル(約4800億円)に上る不正蓄財の海外送金も認めている。
 しかし、裁判ではこうした蓄財についての追及は行われない見通しだ。
 マンションが購入された際、薄は遼寧省長だったが、このレベルの党高官の月収は数万円に過ぎなかった。夫妻が巨額の金をどこから得ていたのかは闇に葬られようとしている・・・

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