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朝日新聞社

あなたの近所の「危険な斜面」 「もしも」に備える関東リスクマップ

初出:2012年11月4日
WEB新書発売:2012年11月16日
朝日新聞

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 地震や風水害に頻繁にさらされる日本列島には、危険な斜面が広がっている。都市丘陵部を切り開いた盛り土造成地、地中深くが地すべりを起こす山間部などに、自治体にも把握されていないリスクが伏在している。国土交通省によると、2011年に斜面が崩れる土砂災害は1422件、死者・行方不明者は計85人に上り、過去10年で最悪の規模となった。防災科学技術研究所や国土地理院のデータをもとに作成した関東地域のリスクマップで、『もしも』に備えたい。

◇第1章 盛り土宅地、走る亀裂
◇第2章 土砂災害、盛り土造成地でも
◇第3章 盛り土造成地、進まぬ分布調査
◇第4章 関東の地すべり地形リスクマップ
 [東京]警戒「急傾斜地」2972カ所
 [神奈川]県内の急傾斜地、東部に集中
 [千葉]「発生の恐れ」県内9764カ所
 [埼玉]救助受け入れ「全国ルール必要」
 [群馬]県内対策足踏みも
 [栃木]県境周辺、深層崩壊のリスク大
 [茨城]県内も油断できず


第1章 盛り土宅地、走る亀裂/横浜の勾配地「5強で崩れる」

 地震や風水害に頻繁にさらされる日本列島には、危険な「斜面」が広がっている。都市の丘陵地に開発された造成地、地中深くが地すべりを起こす山間部。自治体による実態把握が進まない一方、リスクや災害の予兆をつかもうとする動きも出ている。
 369万人が暮らす横浜市。国土地理院が数十年ぶりに更新した「土地条件図」を手に、南区にある京浜急行・弘明寺駅に降り立った。南西にのびる道路を10分ほど歩くと、約30年前に造成された勾配の激しい住宅地が広がった。図には盛り土造成地と示されている。
 「ここが危ない」。同行した東京電機大の安田進教授(地盤工学)が、宅地の壁と坂になった舗装路を指さした。幅1センチ弱の亀裂が外壁は縦に、舗装路は横に入っていた。「山を削って盛った土がずれている。この付近の盛り土造成地は震度5強以上の地震で崩れる恐れがある」
 南隣の港南区へ向けて歩くと、盛り土に流れ込んだ水を抜くためのパイプが突き出た擁壁に雑草の生えた亀裂が多数あった。雑草は水が抜けていないことを示しており、地盤が緩んでいる可能性がある。地区内に40年住む男性(87)は「危ないという意識はある。でも、この辺りは大きな地震がないから……」と話す。
 横浜市は2006年から市の面積の4分の3にあたる312平方キロを調べ、10年2月に3558カ所の盛り土造成地を公表した。ホームページで見られるが、地元不動産業者によると、住宅を買う客は耐震性や液状化を心配する一方で、盛り土の危険性を尋ねてくる人は少ないという。


 土質や締め固めが基準を満たし、水抜きができていれば崩れる危険は小さい。安田教授は「造成時期や工法を調べ、危険性を認識することが大切」と指摘する。
 1995年の阪神大震災で斜面が崩れ、34人が死亡した兵庫県西宮市の仁川百合野町地区。斜面はブロックで補強された。土砂が2軒先まで迫った久保和子さん(78)は「激しく揺れたあと、ザーッという大雨のような音がした。夜が明けると、家々がなくなっていた」と振り返る。
 大阪市立大の三田村宗樹教授(都市地質学)によると、斜面災害は盛り土造成地やため池跡地に集中。西宮市周辺の丘陵地では、被害を受けた111カ所の7割が盛り土で起きていた。仁川百合野町地区の現場近くの男性(69)は「斜面が盛り土と知らなかった。リスクがあると知っていたら家を建てなかった」と話す。

◎都市に散在、対策遅れ
 盛り土造成地や土地を削られた切り土地は「人工地形」とも呼ばれ、高度経済成長期に都市部を中心に広がった。
 国は宅地造成等規制法が改正された2006年、危険な盛り土造成地が1千カ所あると見込み、10年で半減させる目標を設定。しかし、危険度を判定して対策工事を終えたのは新潟県柏崎市の1カ所だけ。背景には、自治体による実態把握の遅れや費用負担、住民の合意形成の難しさがある・・・

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