政治・国際
朝日新聞社

中国軍解剖〔3〕 「戦争を準備せよ」総書記の意向で軍が臨戦態勢

2013年02月15日
(7700文字)
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 尖閣をめぐる東シナ海での緊張を受け、中国軍総参謀部は「戦争の準備をせよ」と全軍に指示を出していた。軍とつながりの強い習近平総書記の意向を受けたもので、習氏の考え方にも軍幹部の意向が強く反映されているようだ。230万人を有し、さらに膨張を続ける世界最大の軍の意思決定や組織の仕組み、脱走事件なども起きた現場の実情、特権意識が市民に嫌われている現状などを伝える。

◇第1章 尖閣、党新組織が手綱
◇第2章 一時は臨戦態勢指示/トップの意向、軍動かす
◇第3章 銃盗み脱走、強盗計画
◇第4章 収賄2600億円、闇の中
◇第5章 特権意識、怒る市民


第1章 尖閣、党新組織が手綱

 1月19日、東シナ海の上空。おわんのような大きなレーダーを載せた米軍の空中警戒管制機(AWACS)が、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の北方向の上空にさしかかったときだった。

 複数の軍事筋が朝日新聞に明らかにした話によると、上海市郊外にある中国空軍基地から、2機の戦闘機「殲(せん)10」が緊急発進(スクランブル)。米軍のAWACSに急接近し、追尾を始めた。これに対し、航空自衛隊の2機の戦闘機F15も緊急発進した。
 日中双方ともに公表していないが、この日、日中の戦闘機は複数回、緊急発進の応酬を繰り返した。AWACSは広い範囲で航空機を探知でき、「飛ぶ管制塔」と呼ばれる。2012年12月、中国機による尖閣周辺の領空侵犯を受け、米軍が1月中旬から投入した。
 防衛省によると、中国機に対する自衛隊機の緊急発進は、日中関係が悪化した12年10〜12月で計91回と急増傾向にある。中国軍幹部は、01年に中国・海南島近くで起きた米中両軍機の衝突を例に挙げ、「(尖閣周辺空域でも)いつ衝突事故が起きてもおかしくない」と警戒する。
 一方、尖閣周辺では海域でも、中国の国家海洋局や農業、警察などの政府各部門がそれぞれ監視船を派遣し、連日のように海上保安庁の船とにらみ合う。
 中国はどのような指揮系統で、尖閣問題に対応しているのか。中国共産党関係者は、日本の尖閣国有化直後の12年9月14日、軍を含めた各部門がそれぞれ個別に動く状況を改めるため、党指導部が新たな専門組織を立ち上げた、と明かす。
 名称は「中国共産党中央海洋権益維持工作指導小組」。党が最重要視する問題での指導体制を確立させるためのタスクフォースだ。モデルは米国の国家安全保障会議(NSC)とされ、ほかに台湾問題、安全保障を含む危機管理での小組の存在が知られている。

◎総書記が束ね役
 いずれも組長と呼ばれるトップは習近平(シーチンピン)総書記(中央軍事委員会主席)。海洋権益維持工作指導小組の副組長は、外交を統括する戴秉国・国務委員(副首相級)で、軍総参謀部の幹部らがメンバーに加わる。


 この小組のメンバーは、無線やテレビ電話で直接現場の監視船や部隊に指揮をする。行き過ぎた現場判断で偶発事故が生じないようにする狙いもある。
 「うちの部隊は残業代が出ない」「もう1カ月も休みがない」。東シナ海の監視船を監督していた元国家海洋局幹部によれば、以前は監視船同士が無線で愚痴を言い合うこともあった。「日本の海上保安庁の職員に比べ、士気や技術が劣っていた」
 ところが小組が新設されたころから、中国側の動きは「統率が取れ、真剣になった」と、複数の日本政府関係者が証言する。
 党関係者は小組新設について、こう説明する・・・

続きを読む

この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

中国軍解剖〔3〕 「戦争を準備せよ」総書記の意向で軍が臨戦態勢
216円(税込)

尖閣をめぐる東シナ海での緊張を受け、中国軍総参謀部は「戦争の準備をせよ」と全軍に指示を出していた。軍とつながりの強い習近平総書記の意向を受けたもので、習氏の考え方にも軍幹部の意向が強く反映されているようだ。230万人を有し、さらに膨張を続ける世界最大の軍の意思決定や組織の仕組み、脱走事件なども起きた現場の実情、特権意識が市民に嫌われている現状などを伝える。[掲載]朝日新聞(2013年2月4日〜2月7日、7700字)

    ビューアで読む

    スマートフォン、iPadでも読めますこの商品のアドレスをメールで送る

    Facebookでのコメント

    ご利用上の注意

    • WEB新書は、インターネットにつないだパソコン、iPhoneなどのスマートフォンやiPadなどインターネットブラウザを搭載した情報端末からの閲覧に対応しています。携帯電話からの閲覧には対応していません。
    • WEB新書は、著作権保護のためパソコンのローカル環境への保存はできない仕様となっています。あらかじめご了承ください。
    • WEB新書の購読には指定の料金が必要です。料金は商品のご購読時に1回発生します。ご購読後は何度でも繰り返しご覧いただけます。商品の閲覧権は1年間保証されます。ただし、著作権者や出版社などの事情により、販売停止や閲覧停止になる場合があります。
    • WEB新書の料金のお支払いはクレジットカードでの決済となります。朝日新聞社が提供する課金・認証サービス「Jpass」への会員登録および、購読手続きが必要です。
    • WEB新書の購読に伴う取引は、「Jpass」を運営する朝日新聞社とお客様との間のお取引になります。
    • 購読手続きが完了した商品は、商品の記事を全文閲覧することができます。購読期間中は「マイWEB新書」に保存され、何度でも閲覧することができます。マイWEB新書へのアクセスおよび、商品の閲覧には「Jpass」へのログインが必要です。
    • WEB新書のサービスの内容や購入手続きに関して不明な点は、こちらの問い合わせ窓口よりお願いいたします。

    このページのトップに戻る