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政治・国際
朝日新聞社

徹底検証・集団的自衛権と9条「戦争の放棄」

初出:2013年2月9日〜2月14日
WEB新書発売:2013年3月1日
朝日新聞

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 安倍内閣が集団的自衛権行使の容認に向け、憲法解釈の見直し論議を再開した。集団的自衛権は、歴代政権が憲法9条との関係で自衛の範囲を超えると解釈し、「国際法上の権利はあるが、行使はできない」とされてきた。尖閣諸島をめぐり日中が緊迫するなか、安倍首相は「安全保障環境の大きな変化」を理由に解釈変更に踏み込もうとする。論点と現状を徹底紹介する。

◇第1章 憲法解釈見直し 再燃
◇第2章 安保法制懇、5年半ぶり始動


第1章 憲法解釈見直し 再燃

◎政府見解「権利あるが行使できず」
 集団的自衛権は1945年に国際連合(国連)が発足した時に定めた「国連憲章」に盛り込まれた権利だ。
 国連憲章は、2条で「すべての加盟国は、武力による威嚇または武力の行使を慎まなければならない」と武力行使を原則禁じた。その一方で、51条では「国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、個別的または集団的自衛の権利を害するものではない」とも明記した。
    ◇
 つまり、加盟国が攻撃されたら、まずは「国連安保理が必要な措置をとる」と定め、攻撃を他のすべての加盟国への挑戦と見なして安保理の決定で国連軍が制裁を加える「〈集団安全保障〉」としての対応が優先されるとした。
 だが、現実的には常設の国連軍はなく、加盟国に自国への攻撃に反撃する「〈個別的自衛権〉」と、自国と密接な関係にある他国が攻撃された場合に共同対処する「〈集団的自衛権〉」の行使を認める格好になっている。
 憲法9条で戦争の放棄を掲げた日本政府は、個別的自衛権は「自衛のための最小限度の武力を行使することは認められている」と行使も可能というのが現在の見解だ。しかし、集団的自衛権の行使は「必要最小限の範囲」を超えるとして、「国際法上は権利があるが、憲法9条の下で、その行使は許されない」との解釈がこれまでとられてきた。
 日本にとって「自国と密接な関係にある国」として考えられるのは、唯一の同盟国である米国だ。日本が集団的自衛権でこうした理屈をとるのは、敗戦を経て生まれた平和憲法と、米国からの軍事力強化の働きかけのはざまで苦悩した特殊事情がある。
 47年に施行された憲法9条2項は、「(戦争放棄を定めた)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」と軍隊の保持も禁じた。一方で、50年に朝鮮戦争が勃発すると、同年に警察予備隊が発足。51年に日米安全保障条約が締結され、その3年後に防衛庁・自衛隊が誕生した。
    ◇
 米国と自衛隊の軍事的な協力関係が深まるにつれ、日本政府は「必要最小限度の自衛の範囲」なら実力組織である自衛隊も「軍隊ではない」と主張しつつ、米軍との連携を深め、自衛隊の装備や任務も拡大させた。憲法違反や軍拡との批判をかわそうと、政府は自衛権を認める範囲を、「個別的自衛権」と「集団的自衛権」で線引きした。
 ただ、このように区別して、集団的自衛権の行使のみを自制する国は異例だ。攻撃された場合に互いに共同対処する相互防衛条約を結ぶ国が多いからだ。
 米国は2001年の米同時多発テロへの報復として「個別的自衛権」を発動し、タリバーンが支配するアフガニスタンを攻撃。一方、米国と同盟を結ぶ英国など北大西洋条約機構(NATO)諸国は、「集団的自衛権」を発動して米国の軍事行動に加わった。

◎対米協力で変遷
 集団的自衛権をめぐる政府の解釈は、はじめから定まっていたわけではない。
 国連憲章が策定された翌年の1946年、当時の吉田茂首相は「自衛権の発動としての戦争も交戦権も放棄した」と国会で答弁している。47年の日本国憲法施行後も吉田氏は「集団的自衛権の実際的な形を見たうえでなければ、答えられない」。当時は自衛隊すらなく、集団的自衛権のイメージがわかなかったようだ。
 だが、50年に警察予備隊が発足すると吉田氏は「自衛権は存在する」と修正。51年に日米安全保障条約が締結され、78年に日米の軍事協力を定めた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)が策定される中、個別的自衛権と集団的自衛権が区別されていく。
 81年の政府答弁書で「日本は国際法上は集団的自衛権を有しているが、行使することは許されない」との見解を確立。自衛権の発動は(1)日本への急迫不正の侵害があり(2)他の適当な手段がなく(3)必要最小限度の実力行使にとどめる、との3要件を満たす場合に限るとの見解も定まった。
 国連平和維持活動(PKO)や湾岸戦争などで日本の「国際貢献」が求められるようになり、米軍などと海外で活動するには「武力行使と一体化」しない範囲で認められるとされた。小泉内閣は2001年、「集団的自衛権について研究してもいいのではないか」としつつ、「憲法第9条は50年余にわたる国会での議論の積み重ねがある。解釈の変更は十分に慎重でなければならない」との政府答弁書を決定している。

◎安倍首相「環境変わった」
 集団的自衛権の行使を認めるべきだとの主張には、主に二つの理屈があった・・・

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