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朝日新聞社

安全基準適合ゼロ! 全国16原発と立地・周辺自治体の防災状況一覧

初出:2013年2月24日
WEB新書発売:2013年3月8日
朝日新聞

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 東日本大震災、福島原発事故から2年。原子力規制委員会が原発再稼動の前提とする、原発から30キロ圏内の「地域防災計画」の整備は進んでいるのか。また、数万人規模の越境避難民をどうやって逃がすことができるのか。他方、新安全基準骨子案に適合している原発は、現時点でゼロだという。そもそも原発は必要なのか。再稼動をめぐる賛否両論、原発に向き合い事故対策に苦慮する立地・周辺自治体の現実を、アンケート調査の結果や資料を示しながら報告する。

◇第1章 原発防災計画 めど5割 30キロ圏首長調査 3月18日期限
◇第2章 原発防災 苦悩の自治体
◇第3章 全国16原発の現状と自治体の防災計画整備状況


第1章 原発防災計画 めど5割 30キロ圏首長調査 3月18日期限

 原発の立地・周辺自治体で、事故対策を定める「地域防災計画」の策定や見直しが遅れている。朝日新聞が各原発から半径30キロ圏にある自治体の首長156人にアンケートしたところ、3月18日の期限までに「めどが立った」と答えたのは約5割にとどまった。現政権による原発ゼロ政策の見直しが進む中、危険性と直接向き合う地域の対策の遅れが浮き彫りになった。
 原子力規制委員会は2012年秋に原子力災害対策指針を一部改定し、防災対策の重点区域(UPZ)の目安を原発の半径8〜10キロから同30キロ圏に拡大。国は3月18日までに重点区域に入る自治体に地域防災計画の「原子力災害対策編」を作るよう求め、規制委の田中俊一委員長は「計画整備が再稼働の前提」としている。
 調査は重点区域内の21道府県と135市町村の首長を対象とし、2月中旬までに全員が回答。計画を「策定した・見直した」「見通しがついた」と答えたのは86人だった。「見通しがついていない」は34人で、作成段階とした36人を含めると、計画ができていない自治体が半数近くに上った。
 見通しがつかないとした34人のうち半数の17人は、新たに重点区域に入った北海道積丹町や鹿児島県出水市などの首長。区域内の人口が全国最多の約93万人の東海第二原発(茨城県東海村)では、区域内9市4町1村の半数の7人が見通しがつかないと答えた。
 その理由(複数回答)で最も多かったのは、「規制委の災害対策指針が明確になっていない」の25人。規制委による避難基準や安定ヨウ素剤の配布基準などの決定の遅れが、策定作業に影響を及ぼしている現状が明らかになった。また、20人が避難手段や避難路の確保が難しく、作業の障壁になっていると答えた。
 UPZ拡大で、敦賀、美浜、大飯、高浜の4原発から30キロ圏に入った福井県若狭町の森下裕(ゆたか)町長は規制委に対し「防災計画のモデルケースを作る取り組みを断念した」と批判した。



□〈地域防災計画〉
 自治体が地震や津波、原子力災害に備えて住民避難などを定めた計画。東京電力福島第一原発事故を受けた国の指針改定で、防災対策の重点区域の目安が半径8〜10キロ圏から同30キロ圏に拡大。区域内の市町村は45から135、人口は約7倍の約480万人に増えた。対象の自治体は計画に過酷事故を想定した実践的な避難訓練の実施などを盛り込む。


第2章 原発防災 苦悩の自治体

◎数万規模どう逃がす
 中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)から半径20〜30キロ圏にある同県島田市。2012年10月の国の指針改定で防災対策の重点区域(UPZ)に入ることになり、事故を想定した取り組みを迫られている。
 「浜岡原発で事故が起きました」。山の斜面に茶畑が点在する同市の切山地区(約60世帯)で2月15日、防災行政無線の音声が鳴り響いた。事故の想定は「南海トラフ巨大地震の津波で停止中の全3基のうち3号機の原子炉水位が下がり、冷却機能が失われた」。市は約30年前から続く県の原子力防災訓練に初めて加わった。
 切山地区の住民35人は点呼を受けた後、県が手配したバスへ。20キロ離れた隣の藤枝市の体育館で一部が放射性物質の付着の有無を調べるスクリーニング検査を体験した。「事故が起きたらどこへ逃げていいか分からず、何千人もパニックになるかもしれない」。参加した三浦なつ子さん(64)は不安そうに語った。


 UPZを31キロ圏に設定した静岡県では、対象自治体が4市から11市町、住民は10倍の約86万人に増加。今回のアンケートでは、島田市を含む9市町と県が3月18日を期限とする地域防災計画の策定・見直しにめどがついたと答えた。
 しかし15日の避難訓練に参加したのは対象人口の0・1%足らずの約400人で、バスを使ったのも初めてだった。県の防災計画のうち避難の時間やルートなどの具体的な中身は未定で、移動手段確保のめども立たない。島田市もアンケートで同様の課題が残っていることを明らかにした。
 県原子力安全対策課の植田達志専門監は補足取材に「県や市町村で対応しきれないことが多すぎる。国は自治体任せにせず、具体的な対策づくりを主導してほしい」と語った。
 UPZ内に19の島が点在し、約2万7千人が暮らす佐賀県玄海町の玄海原発。約1万6千人を占める長崎県壱岐市(壱岐島)も防災計画策定に見通しがついたとするが、現状は厳しい・・・

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