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教育・子育て
朝日新聞社

オンライン白熱教室 超一流授業が無料! ムークが変える教育の未来

初出:2013年3月6日〜3月8日
WEB新書発売:2013年3月22日
朝日新聞

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 教師と学生が双方向でつながれる、ムーク(MOOC: Massive Open Online Courses)が世界の一流大学や、トップ教員の間で広がりを見せている。教員は講義の動画やスライド、資料を配信し、受講生は名前やメールアドレスを入力すれば、誰でも無料で受講できる。ムークの普及で、これまで教育機会に恵まれなかった途上国の人々も、アクセス手段さえあれば、先進国の国民と同等のチャンスを得られる一方、既存の大学は、大学外の教師や企業と、フラットな条件で競争をしなければならなくなった。2013年2月にムーク参入を表明し、秋から配信を始める東京大学の動きを交え、ネットで大きく変化する世界の教育の現状をルポする。

◇第1章 学びの革命、世界が舞台
◇第2章 優秀な受講生、企業に紹介
◇第3章 自宅で受講、教室で「宿題」


第1章 学びの革命、世界が舞台

◎受講者450万人、試験・宿題もあり
 体を張った物理学の講義で知られる、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の名物教授ウォルター・ルーウィン氏(77)は、無料オンライン講座「ムーク」の誕生を歓迎している。
 「15世紀の印刷機の発明に匹敵する革命だ。私の目的は、地球上の10億人に教育を提供することだ」
 一度は退職したが、MITが米ハーバード大と12年春から始めたムーク「エデックス(https://www.edx.org/)」の講座に復活し、2013年2月から初級の物理学を教える。


 最初の動画で、受講生にこう呼びかけた。
 「もし君が物理嫌いな学生でも、それは君のせいじゃない。運悪く腕の悪い先生に当たっちまっただけだ。私が君を物理大好き人間にしてみせる。君たち全員だ。人生が変わること請け合いだ」
 ショーのような授業で知られる。教室の中央の天井からつり下げた鉄球を持って教室の端へ。そして、顔の高さまで引き上げて放す。鉄球はものすごい勢いで戻ってくるが、顔すれすれでぴたりと静止。エネルギー保存の法則をわかりやすく見せているのだ。
 ムークでは、教員が講義の動画やスライド、資料を配信し、受講生は名前やメールアドレスを入力すれば誰でも無料で受講できる。大学の講義を単に撮影した動画ではなく、メリハリをつけて10分程度に編集され、ミニテストで理解度を確認しながら進める形式が多い。週に5〜10時間ほど、3〜4カ月間受講し、宿題や試験で基準に達すれば修了証を入手できる。
 英語による講座が多いが、人気講座は利用者らが勝手に字幕を付けて拡散するため、10を超す言語で見られる動画もある。こうして、世界のすみずみまで一流大の授業が広がり、あらゆる地域の意欲ある受講者とつながっていく。1年間で受講生は計450万人を超えた。
 オンライン教育そのものは新しくない。ただ、従来は教材を売る「商売」で、受講者は限られ、大学にとってはさしてもうからないサイドビジネスだった。
 そんな中、2001年にMITが授業の無料公開を発表する。きっかけは教材のオンライン化に乗り遅れた「後発組の焦り」。当時の学長が挽回(ばんかい)策の考案を命じたが、どう試算しても収益は伸びない。諦めからひねり出されたのが、無料という突拍子もないアイデアだった。少なくとも「世界に役立つ知識を広める」との大学理念には合致していた。
 事態は誰も想像しなかった方向に展開していく。
 初年度に参加したのは1千人の教員のうち約50人。「仕事が増える」「なぜ自分の教材を無料で見せねばならないのか・・・

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