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スポーツ
朝日新聞社

スポーツを震災と放射能から取り戻せ! 被災地の震災2年目

初出:2013年3月1日〜3月7日
WEB新書発売:2013年3月22日
朝日新聞

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 福島原発から20キロ離れた大型サッカー練習施設「Jヴィレッジ」に、除染や賠償を進める東電福島復興本社が置かれた。線量計が欠かせぬなか、二本松の子どもらは体育館でサッカーの練習に励んでいた。津波で甚大な被害を受けた釜石市は「ラグビーの街」に戻すべく、19年のW杯会場誘致を進めていた。陸前高田の少年らは甲子園を夢見、手作りのグラウンドで野球をしていた――。放射能、仮設住宅と隣り合わせの被災地の現実を、希望の象徴、スポーツに重ねて追う。

◇第1章〈Jヴィレッジ〉芝荒れても復興諦めない
◇第2章〈釜石市のW杯会場誘致〉ラグビーの街、取り戻せ
◇第3章〈二本松・陸前高田の少年団〉夢追う環境、少しずつ
◇第4章〈福島の高校野球連合チーム〉復興に差 先見えぬ不安
◇第5章〈岩手の総合型地域クラブ〉軽い運動、自立への一歩
◇第6章〈プロバスケ・仙台89ERS〉地域密着 身銭切っても
◇第7章〈JFL・福島ユナイテッド〉県民に元気を、Jへ挑戦


第1章〈Jヴィレッジ〉芝荒れても復興諦めない

◎サッカー界も恩返し誓う
 かつてユニホームやジャージー姿の選手が行き交っていたホテル棟のロビー周辺は、福島第一原発事故の収束作業にあたる作業員たちの休憩所になっていた。
 いすに座ってくつろぐ人、缶コーヒーを手に喫煙する人、そして、放射能から身を守る防護服姿でバスの出発を待つ人……。
 福島県広野町と楢葉町にまたがるサッカー練習施設のJヴィレッジ。福島第一原発から20キロの距離にある。東日本大震災後から事故の対応拠点となり、2013年1月には賠償や除染を進める東京電力福島復興本社が置かれた。



◎除染水の保管所
 ホテル棟4階から見下ろすと、取材で慣れ親しんだ光景は見る影もない。天然芝ピッチは11面あったが、正面に見える3〜5番グラウンド(G)は砂利が敷かれた駐車場に。右の2番Gには下水浄化槽が設置された。左に目を移すと、7〜11番Gはアスファルトが敷かれ、除染に使った水の保管などに使われている。
 唯一、手を加えていない1番Gを歩く。土がひどく掘り返されている。「昨年、背丈ほどに伸びたセイタカアワダチソウを刈ったら、ミミズを好むイノシシのえさ場になった」とJヴィレッジの高田豊治副社長は苦笑した。


 1997年、原発増設の「見返り」として東電が130億円をかけて建設し、合宿や大会などで約100万人が利用した。社長は福島県知事。J1広島のGMなどを歴任した高田副社長は、96〜03年と09年から現在まで運営を担ってきた。
 東電に貸し出す形になり、スポーツ施設の機能を失っても高田副社長は10人以上の職員を雇用し続け、地域振興に目を向けた。
 楢葉町からは避難住民の体操教室を受託し、中学生のサッカースクールもいわき市で再開。12年7月にはいわき市の仮設住宅団地の隣にフィットネスジムを開業。利用者は楢葉町の人が約6割だが、「いわき市民も増えている」とスタッフの永井隆太郎さん。収入の多くを占める東電への施設使用許諾料や賠償金とともに、こうした収入で灯をともし続ける。楢葉町の人々から「町の復興の象徴に」という声も出る。

◎合宿誘致めざす
 12年10月には練習施設への復興計画を打ち立てた。時期は明示しないものの、「日本代表やJリーグクラブの合宿を誘致し、風評被害を払拭(ふっしょく)したい」とした。再開を視野に先行投資にも着手。電気料金を抑えるべく、ホテル棟照明のLED化と自前の太陽光発電の計画が固まり、13年夏には1番Gで芝の養生も始める。
 「サッカー界が受けた恩恵を考えると、ここの復興をやめるべきでない」と高田副社長はきっぱり言う。「原発が誰が見ても安心できる状態になるまで、利用してはもらえない。でも、そうなれば……」
 13年1月には日本女子代表の佐々木則夫監督が見学にきた。キャンプをよく張ったJリーグクラブからも「ぜひ使う」と言われる。地域への恩返しを誓うサッカー関係者とともに、Jヴィレッジは東電から返還される「その時」を待っている。



第2章〈釜石市のW杯会場誘致〉ラグビーの街、取り戻せ

 岩手県沿岸部のJR釜石駅から車で北に約20分。2月中旬、校舎の取り壊しが進んでいた。釜石市鵜住居(うのすまい)町の釜石東中学校と鵜住居小学校の解体現場。仮設住宅に住むという男性は「このあたりは何もなくなってしまった」とつぶやいた。


 東日本大震災によって釜石市は、死者・行方不明者が1千人を超える甚大な被害を受けた。津波で、校舎の周囲の住宅や建物は流された。土の地肌がむきだしになり、いまも壊れた車が山積していた。
 この校舎の跡地を生まれ変わらせようとするひとつの計画がある。・・・

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