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世相・風俗
朝日新聞社

歌よ届け 13人の高校生が詠んだ「恋するキモチ」

初出:2013年3月20日〜4月6日
WEB新書発売:2013年4月19日
朝日新聞

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 「雨上がり『好き』の言葉が橋渡り君との距離はあともう少し」「透明な下敷き越しに君を見て『わたしも好きよ』とフキダシ作る」「あなたへと編んだマフラー抱きしめる今年も鞄で年を越したね」「ゆっくりとつのる思いよ進んでけ君に会いに行く世田谷線」。福井県越前市の市民らでつくる「万葉の里・恋のうた募集実行委員会」は毎年、恋愛を詠んだ短歌を全国から募っている。2012年度に寄せられた歌は、海外からも含めて計1万8177首。このうち高校生の歌22首を含む59首が入賞した。入賞者のうち高校生13人を訪ね、歌に込めた思いを語ってもらった。

第1章 彼のこと、一途に思って
第2章 あの子にすごいと思われたい
第3章 もっとキュン!ってしたい
第4章 母さん、びっくりさせちゃった
第5章 思わず気づかい、それが私
第6章 大人の彼女に思いぶつけた
第7章 熱い思い、手紙の字にこめた
第8章 男子はサラサラ髪が好き、なはず
第9章 「この人!」いつ来るやろ
第10章 返事はダメでも達成感
第11章 土手デート憧れ、女子力磨く
第12章 何話そう…つり革握り考える
第13章 下敷きで本音を隠した


第1章 彼のこと、一途に思って


ふと見ると レンズに私が映ってる 眼鏡の奥はどこを見てるの?

福井・武生商高3年 大山唯


 長い片思いだった。6年間、ずっと見つめていた。話もたくさんした。でも結局、最後まで分からなかった。彼の目に、私はどう映っていたんだろう。
 中学1年の春、大山唯さん(18)は彼と出会った。明るくてまじめで、クラスの人気者。女子の間でも話題だった。「小学校の時にもう告白した女子が何人もいたんだって」「実は、○○ちゃんも好きみたいよ」
    ◇
 いいな。部活でグラウンドを走ってる姿もかっこいい。かっこいいから、好きなのかな。好きだから、かっこよく見えるのかな――。「いま思うと、どこっていうんじゃなく、存在自体が好きだった、かな」。彼がいそうな場所では、思わず視線が探していた。
 「告白しないの?」と仲のいい友だちに言われたことがある。できないよ、自分からは。私、どっちかというと受け身の性格だし。「もし、うまくいって付き合うようになっても、反対にふられても、みんなにうわさされるようなこと、苦手だから」
 実は、彼とはよく話をした。高校に進んでからも、休憩時間に隣に座って、機械に弱いから買ったばかりのスマートフォンの使い方を教えてもらったり、はまっているゲームの進み具合をしゃべったり。そんなとき、眼鏡の奥にある彼の視線がふと気になった。「私のこと、視界にちゃんとは、入ってないよね。入れてほしいな」
 でも去年(2012年)、かなわない恋と知る。彼に彼女がいた。しかも、自分の友だち。ショックだけど、「やっぱり」とも思った。私よりも彼とよく話してたし、雰囲気よさそうだったから。
 「友人Aって感じじゃないかな」。彼の目に映る私を思う。その後、休憩時間に3人でいたこともあった。話をしてると楽しかったけど、余計なことも考えた。「私、邪魔者じゃないかな」なんて。
    ◇
 告白しなかった後悔はもう薄れたし、今さら伝えるつもりもない。彼女と彼と私の関係を壊したくないし、彼には彼女を好きでいてほしいと思う。「すぐに別れるような軽い男でいてほしくないんで」。見た目より、頑固な性格なのだ。
 まもなく故郷を出る。大阪府内の専門学校に入り、小学校から憧れた美容師を目指す。父に一度反対されたけど、夢に向かって押し切った。「唯は一途だよねえ」とよく言われる。それは、恋だけじゃないかも。



第2章 あの子にすごいと思われたい


ないていた。太陽が照る空の下 私の恋もツクツクボウシ

沖縄・知念高3年 鉢嶺宗洋


 大げさに言えば、人生の転機だったかもしれない。
 高校最後の夏は、あの一言で変わった。
 沖縄県の高校3年生、鉢嶺宗洋(はちみねむねひろ)さん(18)のそれまでの生活といったら、「勉強は全く興味なし」。野球部の練習を終えて午後8時ごろに帰宅すると、夕飯→風呂→しばらくボーッとして、就寝。授業中も視線は黒板より隣の友達に向いた。校内テストの上位50人として名前が張り出されたのは、1年春が最後だった。
 片や、彼女は上位の常連。校内ではほとんど合格者の出ない検定試験にも受かるくらいの優等生だ。その子に、2012年夏にあった検定試験の前に言われた。
 「ちょっと無理じゃない?」
 心に火がついた。
 「見返してやろう」と思った。授業そっちのけで、検定試験の勉強に集中した。
 夏休みに入った。「彼女を勉強で追い抜きたい」と思い募り、心の中で勝手にライバルと決めた。生まれて初めて、塾に通い始めた。
 もちろん、別の感情も潜んでいた。あの吸い込まれるような瞳が好きだった。受験生の夏にはつらい。当時の苦衷をつづったのが、今回応募した短歌だった。
 鉢嶺さんはその後、さらなる衝撃に直面する。
 11月。彼女は推薦入試で志望大学に合格し、早々と受験を終えてしまったのだ。
 「ライバル」が消えた。その喪失感は勉学意欲を著しく減退させ、塾からは足が遠のいた。
 「なぜ勉強をしてきたのか。彼女に勝ちたかったのか」
 数日間、真面目に考えた。思い悩んだ末、一つの思いに気づいた。
 「彼女に『すごい』と思われたい。どこかに、そんな気持ちがあった」
 その「発見」をきっかけに、もっと明確な目標が見えてきた。「内地の国公立大に進もう」。各地から集まる学生に交じり、刺激を受けたい。それなりのレベルの大学に入り、学校や塾に車で迎えに来てくれた親にも報いたい。少し不純かもしれないけど、彼女より「いい大学」に進みたい。
 とりあえず今年(13年)は浪人する。来年(14年)、希望通りの大学に受かるのか、それであの子が「すごい」と思ってくれるのか。それはわからないけれど、もうしばらく、自分の心と向き合うつもりだ。



第3章 もっとキュン!ってしたい


グラウンド 小石で綴(つづ)ったスキの文字 地球に書いた君への想(おも)い

福井・武生商高3年 楠木舞


 「舞は理想が高すぎ!」。友達からいつもそう言われる。
 確かに。彼氏の背丈は、できれば180センチあってほしい。クラスで目立つようなキャラクターがいい。2人の時はどんどん話してくれると楽しい。雑誌で紹介されるような、おしゃれな服を着てほしい。
 だから、なのかな……。
 楠木舞さん(18)の恋は、ここのところ、いつも短めだ。好きな気持ちは盛り上がるのに、しばらくするとフェードアウト。「こないだ話したの、いつだっけ?」。そう思い始めると、もうメールも電話も面倒になってる。
 9月の学校祭は、文化祭と体育大会が一緒になった最大のイベントだ。学年を超えたチーム別の応援練習。同じ白組の先輩が気になった。
 「お前ら、もっと声出せ!」と大声で指示するほかの男子と違って、やさしそうなところにひかれた。友だちにメールアドレスを聞き出してもらい、付き合い始めた。
 クリスマスには県外に2人で買い物に出かけた。いろんな洋服を一緒に見て、楽しかった。それが、バレンタインデーの頃になると、「チョコくれる?」のメールに「会う時間がないから、今度ね・・・

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