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文化・芸能
朝日新聞社

ラララの時代 日本アニメーション誕生50年の軌跡をたどる旅

初出:2013年3月26日〜4月4日
WEB新書発売:2013年4月26日
朝日新聞

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 空をこえて、ラララ、星のかなた……。日本初の30分連続テレビアニメシリーズ「鉄腕アトム」がフジテレビ系列で放映されて、2013年で半世紀になる。同作品は、制作体制の貧弱さから絵の数を減らしたため、ぎこちない動きが「電気紙芝居」と揶揄されたが、それから50年の時を経て、日本のテレビアニメは世界有数の水準にまで到達した。富野由悠季、杉井ギサブロー、高橋良輔、吉川惣司など、「鉄腕アトム」を制作した「虫プロ」出身のクリエイターたちを訪ね、日本アニメの「これまで」と「これから」を展望する。

◇第1章 ガロンの産声 ハッピーエンドは時超えて
◇第2章 練馬完徹所 アニメの新手法、次々
◇第3章 若者の交差点 先頭を手塚が走った
◇第4章 走れ狼少年ケン 東映参入、新たな展開
◇第5章 アトムの子たち ガンダムへの出発点
◇第6章 アニメの国 大人向け制作、息長く
◇第7章 手描きを目指せ 日本版CGに存在感


第1章 ガロンの産声 ハッピーエンドは時超えて

 2013年2月、JR新大久保駅近くの録音スタジオ。新作アニメのアフレコが、佳境を迎えていた。
 「そこはもう少し気持ちを込めましょう」。吉川惣司監督(66)が注文する。「はい」。録音室にいるヒロイン「サラ」役の声優、井澤詩織(26)の緊張した声がスピーカーから返ってくる。「もう1回始めます」。再び画像が流れた。
     ◇
 新作アニメは「魔神ガロン」。宇宙から飛来した巨人ガロンによって人類は滅亡の危機に陥る。軍はガロンが宿した男の子「ピック」を人質にとり、ガロンへの核攻撃を企てる――。
 文明のありかたを問う故手塚治虫のマンガが原作。「鉄腕アトム」の放映50年を記念し、「手塚プロダクション」(新宿区高田馬場)が制作した。単独でのアニメ作品化は初めてだ。約21分の短編で、4月下旬の公開を目指している。
 制作にあたっては、手塚が手塚プロよりも先に創立したアニメ制作会社「虫プロダクション」(練馬区富士見台)の元スタッフが結集した。
 吉川はアトムの放映が始まった1963年に入社した。8ミリで自作アニメを作っていた早熟な高校生だった吉川は、虫プロのアニメーター募集広告を見つけると高校を自主退学して駆けつけた。「アトム」、「悟空の大冒険」、「あしたのジョー」などの作画や演出に参加した。
 プロデューサーは「ワンダースリー」などを演出した高橋良輔(70)。「装甲騎兵ボトムズ」などロボットアニメの第一人者だ。
 吉川は言う。「アニメは本来笑いを前提としたアメリカンスタイルなのに、ユーモアが失われ、子どもたちはそっちのけ。大人を満足させたところで未来はない」。だから今作には「萌(も)え」も「オタク」もなし。誰が見ても分かるハッピーエンドを目指した。
     ◇
 驚いたのは、美少女やロボットであふれる今のアニメで育った若手スタッフ。登場人物のデザインを担当した作画監督の中村路之将(33)は、何度も吉川からダメ出しを受けた。「特にヒロインが難しかった。どうしてもありきたりのキャラになってしまって」
 吉川はひたすら動きを注文した。結果、6500枚の絵が描かれた。ヒロイン「サラ」は一見、男の子のような元気でタフな女性になった。
 作中、サラは様々な表情を見せる。冒頭のシーンもその一つ。ガロンに会おうとがむしゃらに走り回りながら一瞬、コケティッシュな表情を見せる。「こんなに体全体で演技させたのは初めて」。アニメーターの青木一紀(29)は言う。
 丸くてシンプルな手塚キャラは時代遅れ、と言う人もいる。吉川は「とんでもない。立体的な手塚キャラこそ、現在のコンピューターアニメに最適」と断言する。「ディズニーはきちんと時代に適応してきた。手塚先生の絵も模索すべきです。ガロンがその試金石になればいい」
 高橋も「現状に満足しないのが虫プロのDNA。今回の経験をもとに、若手から後継者が巣立つはずです」と期待する。
 ガロンは教材にも提供される。高橋が教授を務める大阪芸術大学はアニメを目指す学生たちのために、このガロンを使う予定だ。



◎哲学・技法「父が求めたもの」

手塚眞・手塚プロダクション取締役

 故手塚治虫氏の長男で、ヴィジュアリストの手塚眞・手塚プロダクション取締役(51)に手塚アニメについて聞いた・・・

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