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朝日新聞社

南海トラフ巨大地震サバイバル! 明暗を分ける事前防災のノウハウ

初出:2013年5月29日、6月19日
WEB新書発売:2013年7月5日
朝日新聞

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 静岡県の駿河湾から九州東方沖までの超広域を揺さぶる南海トラフ巨大地震が起これば、東日本大震災クラスのM9・1で死者32万人超、食料不足9600万食、経済損失220兆円にもなるという。30メートル超の大津波に襲われる地域もある。だが、予知などそもそも困難で、事前防災が重要になるという。では、地域自治体や住民は何をどう備えればよいのか。財源はどうする? 巨大災害を生き抜く有効な方法を、食料など備蓄品1週間分の具体例を示しつつ説き明かす。

◇第1章 南海トラフ地震 予知困難
◇第2章 被災 生き抜く備え 南海トラフ巨大地震対策
◇第3章 備蓄 わが家の1週間分
◇[資料編]


第1章 南海トラフ地震 予知困難

◎家庭備蓄「1週間分を」
 南海トラフ巨大地震は、静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く、深さ約4千メートルの海底のくぼみ「南海トラフ」で想定される地震。トラフ沿いの太平洋沿岸を強い揺れと津波が襲い、最悪の場合、死者が約32万人に上ると見積もられている。
 地震予知の可能性について5月28日、国の有識者会議は地震学者6人による下部組織で議論。「現在の科学的知見からは(地震直前の)確度の高い予測(=予知)は難しい」との下部組織の見解を報告書に引く形で、限界を認めた。
 対策については、事前の備えから災害発生時の対応、復旧・復興まで、段階ごとに提言。甚大な被害が超広域に及ぶ恐れのある地震の特徴を踏まえ、とりわけ、備えについては「事前防災」という新しい言葉を使ってその重要性を強調した。
 地震発生後、数分で沿岸部に到達する恐れがあるとされる津波対策の充実を強く要請。巨大津波に対する備えが必要な施設として、行政関連機関や学校、社会福祉施設、医療施設、避難場所・施設、避難路を挙げた。
 また、震度6弱以上の揺れに襲われたり、浸水深30センチ以上の地域が10ヘクタール以上に上ったりする恐れのある自治体が30都府県、734市区町村の超広域に及ぶと言われるなかで、行政の支援が行き届かない可能性を指摘。
 「地域で自活する備え」として、食料や水、乾電池、カセットコンロ、簡易トイレなどの備蓄を1週間分以上、確保するよう求めた。首都直下地震で帰宅困難者対策として東京都が掲げていた目安の3日間を大きく上回った。
 最悪の場合、40都府県で950万人の避難者が出るとの試算を踏まえ、避難者全員を避難所で受け入れられない事態も想定。自宅の被災状況、避難者の病気や障害の有無から、受け入れを判断する「避難者トリアージ」の方法や広域避難・疎開を検討するよう提言した。近隣県同士の同時被災に備えて、広域連携の枠組みづくりも求めた。
 また、企業活動に甚大な影響を及ぼす可能性があることから、災害時も活動を続ける方法をあらかじめ定めた事業継続計画の策定や、サプライチェーン(部品供給網)や流通拠点の複数化と業種を超えた連携の重要性も指摘した。
 これを受けて、古屋圭司・防災相は「まずは自助が大原則。その上で共助、公助があるということ」と強調。近く閣僚らで作る防災対策実行会議を立ち上げて、対策大綱づくりに向けた議論を始めるという。

□南海トラフ巨大地震の被害想定
 南海トラフ沿いでマグニチュード(M)9・1の地震が起きた場合に考えられる被害の推計を指す。最悪の場合、死者が約32万人、負傷者が約62万人、建物の全壊が約239万戸に上る。3千万人超が断水に見舞われ、2700万軒超が停電。経済的損失は約220兆円と見込まれている。
 トラフでは、過去約100〜150年の間隔で、M8前後の地震が繰り返し起きてきたが、国は東日本大震災を受けて千年に1度の「考えうる最大級」を想定の対象にした・・・

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