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特別版
朝日新聞社

朝日航空部が見た「ニッポン」 ツイート写真ベスト50

初出:2013年7月12日
WEB新書発売:2013年7月12日
朝日新聞

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 大阪空港にかかった虹、夜空に浮かぶコクピット、大阪造幣局の桜並木……。朝日新聞社の航空部員が撮影し、ツイッターなどで話題となった50点の写真を紹介します。カメラマンや記者の航空取材をサポートする新聞社航空部の魅力が詰まった一冊です。航空部の歴史やパイロットの肖像など、航空部を深く知るコラムもついています。

 序
◇〈天使の階段〉
 エピソード1・・・かくして「球」は投げられた
◇〈雲の赤ちゃん〉
 エピソード2・・・始まりは「運送業」だった
◇〈おもしろ地上絵〉
 エピソード3・・・多彩なパイロットたち
◇〈空港百景〉
 エピソード4・・・公開! これが管制官との交信だ
◇富士山
 あとがき


 あのともしびの一つ一つは、見わたすかぎり一面の闇の大海原の中にも、なお人間の心という奇蹟が存在することを示していた。

(サン=テグジュペリ「人間の土地」、堀口大學訳)


〈天使の階段〉


エピソード1・・・かくして「球」は投げられた


 夏の甲子園や地方大会の開会式で、航空部はヘリから始球式のボールを投下している。センター方向からアプローチし、二塁ベースの後方に置かれた朝日新聞の社旗をめがけて投げ降ろす。ボールは、棒を差した社旗にひもでつながれ、社旗には凧の足のように紅白のリボンがついている(写真)。落下しながら、旗が開き、リボンがなびく、というのが美しい投下だが、その分、風に流されやすくなる。


 2013年5月に一線から退いた元パイロット関口博之(61)は07年の甲子園で操縦桿を握った。
 「スタート」。球場内に待機する航空部員から、鳴尾浜沖で旋回待機するヘリに無線連絡が入った。機首を向けて速度35キロほどで近づいた。
 阪神甲子園球場では、バックスクリーンの旗を見て風向と風速をつかむ。日章旗、高野連旗、社旗、いずれもだらりとたれ下がっていた。「風は弱い」と判断、なるべく投下目標の上に近づいてから投下を指示した。ところが、社旗は紅白のリボンをはためかせながら本塁方向にどんどん流されていった。
 「しまった!」。失敗したと思いながら、そのまま球場を通過したときだった。「ストライク、ストライクです!」。球場にいる部員が無線でがなりたてた。球は、本塁ベースの頂点とマウンドを結ぶ直線上、本塁ベースのすぐ手前に落下し、数万の観衆からどよめきと拍手が沸き起こっていたのだった。

 ボール投下のタイミングを決めるのは機長、実際に投げるのは後部席に控えた整備士か航空電子課員だ。操縦士は、風の向きと速さ、ヘリの速度、高度を念頭に、投下後に球が描く放物線をイメージしながら、タイミングを計る。
 「整備士は投げる機械、自分で判断してはだめなのです」。ベテランの整備士で、福岡空港基地の前次長だった浅野正一(59)は振り返る。
 「ボール投下をまかされるようになって2年目くらいだったか、『おおとり』というヘリで、北関東のある県の球場に向かいました。球場の手前でヘリの右スライドドアを開けると、観客の視線を感じながら、投下の準備です。球場上空でベテラン機長のMさんから『投下用意!』の声。緊張しながら構えたけど、いつまで待っても『投下』の合図がこない。目標は通り過ぎてしまうし、球場にいる誘導者は『早く落とせ、すぐ落とせ!』と、無線でうるさいほど催促してくる。『ひょっとして、自分が合図を聞き逃したかも』。そんな思いが頭をよぎり、思わずポイと投げてしまった。その瞬間、Mさんが『あっ』と叫んで、『地上の指示で投げてどうする!』って叱責されたのです。そのとき、思いました。パイロットはさまざまな要因を考えてタイミングをみている、整備士が勝手に判断して投げてはいけないと。このときから、余計なことは考えず、投げる機械に徹すると自分に言い聞かせてきました。そのときのボールはどうなったか・・・

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