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政治・国際
朝日新聞社

太平洋に進出する中国のあくなき野望 南の島国をめぐる米中日の攻防

初出:2013年7月1日〜7月2日
WEB新書発売:2013年7月12日
朝日新聞

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 ヤップ島を含むミクロネシア連邦など太平洋の南の島国に対し、経済力を武器に中国が触手を伸ばしている。リゾート開発を手がける企業「会展旅游集団(ETG)」の狙いとは何か。一方、米国の財政援助の打ち切りを見据え、懸念をもちつつも島国の中国頼みも強まっている。安全保障と財政面で太平洋を仕切ってきた米国はどう対抗するのか。尖閣・竹島問題を抱え、かつて南の島々を占領・委任統治した日本も動く。太平洋地域の領土・領海をめぐる3カ国の利害や思惑を多角的にさぐる。

◇第1章 中国、南の島国に触手/米の援助先 大規模開発
◇第2章 日本の島国外交 手探り/領土問題・資源大国 強まる「磁力」


第1章 中国、南の島国に触手/米の援助先 大規模開発


 太平洋の赤道近くに浮かぶ138の小さな島々からなるミクロネシア連邦ヤップ州。中国の不動産開発業者がここを一大リゾート地に一変させる計画を打ち上げ、島は大揺れしている。
 その中心、ヤップ島は伊豆大島ほどの大きさ。サンゴ礁やマンタに世界中のダイバーが引き寄せられる。
 日本は1914年、ドイツ領だったこの国と隣国のマーシャル諸島、パラオを占領。20年に委任統治が国際連盟に認められた。そして第2次世界大戦で周辺の国々も戦火に巻き込んだ。
 人口約1万1千人のこの島に、不動産開発から飲食店のチェーン展開まで手がける「会展旅游集団(ETG)」(本社・四川省)が目をつけたのは2年前。手始めに8〜10のホテル(4千室)やカジノなどをつくる巨大プロジェクトを立案した。飛行場を整備・拡充して中国や日本から直行便で観光客を連れてくる。上海からだと3時間半。1万人の雇用が生まれる。着陸料を設定すれば月50万ドル(約4960万円)が地元に落ちる、とアピール。2012年夏には州政府と投資協定を結んだ。
 計画の詳細を聞かされていなかった住民らがこれに驚いた。「サンゴ礁やマングローブが壊され、先祖代々の土地から引き離される」と激怒。夏には反対派グループも生まれた。
 賛成派の筆頭は、日系4世のモリ大統領だ。13年2月、反対派のヘンリー・フラン州議会議長に「重要な観光業を発展させる、このめったにない機会をつかもう」との書簡を送った。
 国の収入の4割を、親密な米国からの年約9200万ドル(約91億円)の援助でまかなっている。この援助が23年に打ち切られる。貿易は赤字で、これといった産業もない。海外から投資を呼び込まなければ国家財政が崩壊しかねない。
 事態はいま泥沼化している。州議会は5月、州の行政当局にETGへの投資許可の取り消しを命じたものの無視され、いらだちを募らせている。
 ある反対派メンバーは「ETGが去っても、また中国資本が来るだけ」と言う。小さな島国に多額のお金をつぎ込むリスクをとれるのは、もはや中国企業しかない・・・

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