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経済・雇用
朝日新聞社

サーベラス対西武、攻防の裏側 巨大投資ファンドに「これは戦争だ」

初出:2013年6月26日〜6月29日
WEB新書発売:2013年7月12日
朝日新聞

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 Dear Goto san(親愛なる後藤さん)から始まるビジネスレターが、西武ホールディングス社長、後藤高志あてに届いた。差出人は、筆頭株主サーベラスのトップ、スティーブン・ファインバーグ。2012年10月のことだ。その中身は、「鉄道5路線の廃線や埼玉西武ライオンズの売却」など、約50項目の経営改善策。この書簡が、経営の主導権をめぐる、西武とサーベラスとの間の泥沼の戦いの引き金を引いた。全世界で2兆円を運用し、「黄泉の番犬」を意味する社名を冠する投資ファンドは、いったい何を狙っているのか。日本企業は、海外マネーにどう向き合うべきなのか。グローバル時代の全ビジネスパーソン、必読のドキュメント。

◇第1章 西武経営陣「これは戦争だ」
◇第2章 廃線・球団…要求か、アイデアか
◇第3章 株価で対立 異なる道筋
◇第4章 第3幕は天王山 舞台はNY


第1章 西武経営陣「これは戦争だ」

 時計の針が午後3時に近づく。2013年6月25日、埼玉県所沢市の本社わきのビルで開かれた西武ホールディングスの株主総会は、開会から5時間近くたっていた。
 白い半袖シャツ姿の社長、後藤高志は、総会の議長として表情を変えずに告げた。「過半数の賛成を得られませんでした。第4号議案は否決されました」
 筆頭株主の米サーベラスが、取締役を一気に8人選ぶよう提案した議案。西武の取締役会の過半数を握り得る案はついえた。
 サーベラスによる株式公開買い付け(TOB)で西武に軍配が上がって3週間あまり。むしろ緊張は高まった。社内には「取締役会を牛耳られたら、もう終わりだ」との見方があった。
 なりふりかまわなかった。株主総会の招集通知に同封した冊子の表紙には、「会社(西武の)提案には賛成、株主提案には反対してください」。サーベラスの全提案に反対しているとの赤い文字に下線をつけ、総会に出席/委任状を返送/議決権行使書を返送/ネットを利用の4パターンを紹介。エンピツ、ポスト、パソコンのイラストを添え、お年寄りの株主を意識して字は大きくした。
 こだわったのは、総会で緊急動議が出た場合などの賛否を白紙で委ねる「委任状」集めだ。どこに○、どこに日付と記入例を示し、代理人の欄を空白にして返信用封筒に入れ、「当社まで」。サーベラスによる動議への備えだ。経営陣の一人は「これは戦争だ。あらゆる戦法を想定して対応した」と話した。



◎委任状獲得 西武の攻勢
 「ここから気を引き締めていこう」。西武ホールディングス(HD)の社長後藤高志は1日、サーベラスによる株式公開買い付け(TOB)の結果を伝える幹部の電話にこう応じた。サーベラスの株の買い増しは目標に届かず、経営への影響力の拡大は限定的だった。それでも、株主総会にかけられる人事案がある限り、安心できなかった。
 総会には、すべての株主が来るわけではない。出席者が少なく、議決権の3割超を握るサーベラスが、その場で緊急動議を出せば、何がおきるか分からないとみていたからだ・・・

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