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経済・雇用
朝日新聞社

お客よりも大切な社員 だからケーズは「がんばらない」

初出:2013年7月3日〜7月6日
WEB新書発売:2013年7月19日
朝日新聞

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値引きやポイント還元から、品ぞろえ、アフターサービスまで、家電量販業界の競争は全国至るところで年中繰り広げられている。群雄割拠の業界で異彩を放っているのが、経営理念に「がんばらない」を掲げるケーズデンキだ。「ノルマなし」「残業なし」は当たり前。怠けず、無理せず、基本を確実に実行するという理念はどこから生まれたのか。何度目かの乱世を迎えている業界で、したたかに生き残りを図るその経営に迫る。

第1章 ケーズしたたか『逆路線』/ポイント還元より値引き 「ノルマなしは客のため」
第2章 社員のやる気、生むために
第3章 原点は「値引きなし」
第4章 巨大化の波 正念場の理念


第1章 ケーズしたたか『逆路線』/ポイント還元より値引き 「ノルマなしは客のため」

 真っ白いエアコンが、ずらり並ぶ。旧甲州街道にほど近い「ケーズデンキ府中本店」(東京都府中市)。訪れた2013年6月下旬は、夏の商戦の真っ最中だった。
 値札をみると、他の家電量販店とちょっと違う。他の量販店でおなじみの「ポイント還元」の表示がないのだ。どれも「現金値引き」にこだわる。
 買った金額に応じてポイントをつけ、再びお店に足を運ばせるのは、業界では当たり前の「囲い込み」の手法だ。だが、ケーズは「お客を縛るのはよくない」とそれを否定する。
 店舗戦略も他社と異なる。都内にある10店は、どれも府中本店のように都心を外した立地だ。都心のど真ん中でしのぎを削る業界他社とは一線を画している。
 水戸市生まれのケーズは1990年代後半、同じ北関東が地盤だったヤマダ電機(群馬県高崎市)、コジマ(宇都宮市)と三つどもえの値引き競争を展開した。「YKK戦争」と呼ばれ、家電量販の世界は戦国時代に突入した。
 その後、ヤマダは業界で初めて売上高2兆円を突破し、業績不振のコジマはビックカメラの傘下に入った。明暗分かれた両ライバルと比べ、ケーズ最大の特徴は、その経営理念だ。
 「がんばらない」。ケーズデンキを展開するケーズホールディングス会長の加藤修一(67)が掲げる理念は、かなり風変わりだ。
 その象徴が「ノルマなし」「残業なし」だ。
 これは「一番大切なのは社員。次いで取引先、3番目がお客」という加藤の理念にもとづく。
 高い目標をかかげて社員に無理をさせると、短期的には業績が上がるが、やがて息切れしてしまう。無理な売り込みはお客のためにもならない・・・

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