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世相・風俗
朝日新聞社

となりのLGBTさん 性的少数者があたりまえに生きられる日本へ

初出:2013年7月12日〜7月26日
WEB新書発売:2013年8月9日
朝日新聞

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 性的少数派を自然に受け止める社会づくりが、国際的にも求められる時代が到来した。電通総研が2012年、約7万人を対象に実施した調査では、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー・トランスセクシュアル)は、調査対象の約20人に1人(5・2%)にのぼった。ところが日本では、地域や職場に、LGBTを冗談のネタにしたり、敬遠したりする風潮が、未だに残っている。優秀な人材確保や人材の多様性、グローバル標準への対応、消費者からみた企業イメージなどの点で、LGBTを自然に受け入れる職場づくりは、今や企業にとっても急務だ。現状の問題点と課題を追った緊急レポート。

◇第1章 会社では、言えない
◇第2章 本当の自分、隠さない
◇第3章 「職場にいるかも」念頭に


第1章 会社では、言えない

◎ネタにする同僚…明かすと仕事しづらい
 「で、結婚しないの?」
 営業マンとして取引先の担当者を接待する、夜の酒席。何げなく相手が尋ねてきた。
 「ハハ、しないといけないですよね……」。またか、の思いをかみ殺しながら、乾いた笑いをしぼり出す。「早く、この時間が過ぎないかな」
 東京都内の広告関連会社に勤める男性(37)は、男性同性愛者のゲイであることを一切、カミングアウトせずに働いている。偏見が、まだまだ多いと感じているからだ。
 「自分はそうかも」と思ったのは高校時代。社会人になって上京、ゲイの仲間に出会って確信した。社会人2年目の時、男性の恋人ができた。
 会社では、言えなかった。
 「同期の職場に、そういうヤツ(同性愛者)がいるんだって」。同僚が、絶好の笑いのネタを見つけたとばかりに話しかけてくる。「自分も」とは言えず、「そういう人もいるんだ」と合わせるしかなかった。オカマネタ。好きな女性のタイプの話。周囲が盛り上がるたび、つらかった。
 「付きあっている人は?」と聞かれ、いても「いない」と答えたり。「週末どうする?」と聞かれ、同性のパートナーを「彼女」に置きかえてデートの予定を話したり。申し訳ないと思いながら、のらりくらりとウソを重ねた。できればウソはつきたくないから、なるべく私的な話をせずに済むよう、いつしか同僚と距離を置いた。「つれないヤツと思われているかも」と覚悟して働いてきた。
 でも、周りとの間に、作りたくて壁を作っているわけではないことは知ってほしい。
 男性パートナーと同居しているが、少しでも同僚や取引先と距離を縮めたいから、時々はキャバクラや合コンにも行く。本当は「何でも率直に話せた方が、人と人の距離は縮まる」と分かっている。
 でも今は言えない。「仕事を犠牲にしてまで言うつもりも、言う意味もない。言ってプラスになるなら言うが、いま言えば、逆に仕事をやりづらくなると思う」からだ。
 「社会が変わり、言って自然に受け入れられる環境が整えば、考えが変わるかもしれない。でも、今の環境では、言うメリットを感じない」



◎踏み切れない海外赴任…本当は伝えたい
 大手電機メーカーに勤める京都府のレズビアン(女性同性愛者)の女性(34)は、4年前から同居する事実婚状態の女性パートナーがいる。2013年1月、2人で家も買った。
 独り身の時は、会社に言う必要はないと思い、伝えてこなかった。でも今は、仕事中に自分に何かあった時の緊急連絡先は、実家からパートナーに変えたい。精子提供を受けて子どもを持つ計画もあるから、今後の働き方も相談したい。だから、上司には伝えたい、と思い続けてきた。
 なのに、ずっと出来ないできた。日ごろの振る舞いから「とても伝えられないような上司」ばかりだったからだ。
 本音がのぞくのは酒の席。普段は冷静そうな上司が酔い進み、「男は」「女は」と語り出すたび、「これは無理だわ」と思わされた。ひどかったのは、前にいた部署の宴会のクイズ大会。チームリーダー格の先輩社員が、その場にいない同僚男性の「ゲイ疑惑」をからかう質問を繰り出すと、約60人を束ねるボスまでもが止めるどころか大笑い。この人には、絶対に言うものか・・・

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