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朝日新聞社

東電利益供与の真相 元社員が30時間を超す驚愕の証言

初出:2013年8月28日〜8月30日
WEB新書発売:2013年9月13日
朝日新聞

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 「こんなにもらって申し訳ない。いいんですか」。東電本店資材部がゼネコンに示した発注額は驚くほど高額だった。ゼネコンに7割、3割は日安建設に渡った。日安への破格の金額は、原発施設の地元対策(裏仕事)への見返りか。一方、東電幹部も日安から接待を受けていた。不透明な資金の流れを東京地検が追う……。東電で「ウソや隠し事」に関与した元社員が、原発利権の真相を自負と自戒の狭間で告白する。

◇第1章 利益供与だと分かっていた
◇第2章 あり得ない金額だった
◇第3章 きれいごとでは済まぬ


第1章 利益供与だと分かっていた

 本書は、原発で長年働き、裏仕事を担ってきた東京電力元社員の30時間を超える証言に基づく。
 2011年3月11日、今井澄雄氏(64)は宇都宮市内の病院にいた。6歳年下の妻が1週間前に脳梗塞(こうそく)で倒れ、入院していた。激しい揺れを感じたのは、妻の衣類をコインランドリーで洗っている時だ。かつて勤務した福島第一原発が世界を揺るがす事故を起こすとは思いもしなかった。
 3号機で水素爆発が起きた3月14日、妻は帰らぬ人となった。お通夜に福島県白河市や南相馬市の親族は参列できなかった。今井氏は福島第一原発に赴任したころ、白河市の伯父(故人)から投げられた言葉を思い出していた。
 「原発が爆発したら、こっちもおかしくなるだろ」
 今井氏は「そんなこと絶対ないから、心配はしないで」と答えたのだ。
 妻の実家がある新潟県柏崎市の親族は、お通夜に間に合った。妻は柏崎刈羽原発の建設事務所で知り合った東電元社員だった。葬儀所内のテレビで流れる原発事故のニュースを、親族たちは不安げに眺めていた。
 思えば、原発と歩んだ人生だった。忘れられないのは06年夏の記憶だ。東京地検特捜部に呼び出されたのである。
 特捜部は、東電が福島第二原発で発注した土砂処理事業の不透明な資金の流れに注目し、東電関係者だけで荒木浩・元会長ら10人以上を参考人として事情聴取した。今井氏は事業発注時の現場責任者だった。検事の追及は厳しかったが、決して口を割らなかった。
 あの判断は正しかったのか――。妻が他界して1年余が過ぎた12年夏、今井氏は「もう、原発のことでウソや隠し事をしたくない」と決意した。かつて原発利権の取材で接触してきた朝日新聞記者と仙台市内で会い、「自分の経験を明らかにしたい」と切り出した。



◎「東電の影」検事には伏せた
 東京地検特捜部から呼び出されたのは、退職してから約3年後の2006年夏だ。事情聴取された日時や内容を書き留めた資料を見せながら、今井澄雄氏は記者にくわしく語り始めた。
 「検事が『話を聞きたい』と携帯に電話してきたんです。8月5日から連日のように呼ばれた。午前中から午後9時ごろまでほぼぶっ通しでした」
 東京・霞が関の検察合同庁舎での事情聴取は5日間で47時間に及んだという。
 特捜部は06年7月に摘発した中堅ゼネコン「水谷建設」の脱税事件を機に、東京電力発注の事業に捜査を広げた。水谷建設は福島第二原発の土砂を運び出す事業の下請けに入った際、孫請けの「日安建設」に払った外注費のうち約2億4千万円がリベートと国税当局に指摘されていた・・・

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