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社会・メディア
朝日新聞社

こんなカタカナ語はいらない 「ケア」から「アスリート」まで

初出:2013年8月30日〜9月4日
WEB新書発売:2013年9月13日
朝日新聞

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 NHKの放送で外来語が乱用され、分かりにくくて精神的苦痛を受けた――。そんな理由でNHKを提訴したのは、岐阜県可児市の男性(71)。2013年8月29日に第1回口頭弁論があり、NHK側は慰謝料141万円の請求棄却を求め、争う姿勢を示した。確かにメディアやネットで、カタカナ語を耳にする機会は増えている。「ファンド」「コンテンツ」「アウトソーシング」「キャッチアップ」から「ケア」「アスリート」などなど、「日本語でいいのでは?」と思わせるカタカナ語はなぜはびこるのか。日本人はカタカナ語とどう付き合うべきなのか。それとも廃棄すべきなのか。同じように英語の侵略に対抗するフランスの事情なども踏まえて考えてみる。

◇第1章 「NHKの外来語乱用で苦痛」、訴えた男性の危機感
◇第2章 カタカナ語の増殖


第1章 「NHKの外来語乱用で苦痛」、訴えた男性の危機感

 岐阜県可児(かに)市の男性(71)が2013年6月、名古屋地裁に提訴。29日に第1回口頭弁論があり、NHK側は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。
 男性は1年ほど弁護士と話し合い、提訴に踏み切った。「不必要な外来語への言い換えが急速に進み、日本語が失われていくことに危機感があった」という。
 男性は退職後、図書館に通って藤沢周平、諸田玲子らの時代小説を読むうち「日本語の美しさを再認識した」。それにつれて、ニュースなどでの外来語の乱用に不快感と不信感を持つようになったという。

◎外来語の扱い、一長一短ある
 NHKの放送が気になり始めたのは3年ほど前からだ。「ファンド」「コンテンツ」「ネットナビゲータ」――。日本の公共放送がなぜこんなに外来語を使うのか。それが正しいのか、問題なのか、しっかり議論したいと男性はいう。「私はあとは消えていくだけ。議論のための一粒の種を残したい。麦をね」
 提訴後、80代の男性から「ニュースがわからない。よくやってくれた」との反響が届いたという。
 NHKは訴訟内容については「係争中のためコメントを差し控える」とするが、放送での外来語の扱いはどうなっているのか。
 NHK広報局によると、言語学者など外部有識者も加えた「放送用語委員会」などで原則や方針を決め、番組ごとの編集責任者やプロデューサーが判断するという。実際の番組制作の現場では、NHKが編集する「ことばのハンドブック」に準拠しているという。
 外国語や外来語は、わかりにくいものには説明を加えたり、日本語に言い換えたりするよう注意を促している。NHKは「外来語には、新しい感覚を盛り込むプラス面と、わかりにくいマイナス面があり、今後もできるだけわかりやすい工夫をしていきたい」。



◎飛びつくより「一歩遅れて」
 ただ、報道の中の外来語に戸惑う視聴者や読者は少なくないようだ。
 国立国語研究所が2005年に公表した「外来語に関する意識調査」。例えば「ハザードマップ」については、全体の91・1%が「災害予測地図」などに言い換えてほしいと答えた。理由は「分かりやすいから」が7割以上を占めた。 わかりやすいニュース解説で知られる元NHK記者でフリージャーナリストの池上彰さんは「そもそも明治の初め、海外から輸入した外来語を、先達たちは苦労して日本語に置き換えました・・・

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