医療・健康
朝日新聞社

これが認知症の世界です 本人と家族と社会、みんなで共に生きよう

初出:朝日新聞2013年9月21日〜10月19日
WEB新書発売:2013年11月8日
朝日新聞

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 「アルツハイマーでも生きていけるんだ」「変に隠さない方がサポートしてもらえるし、気が楽だ」。認知症を知ってほしいと、本人と家族42人がウェブで語る。認知症が原因で社会に損害を与えたら、責任は介護家族にあるのだろうか。何か補償の仕組みはないのか。「一人暮らしの認知症」への対応はどうすれば……。「記憶は無くなっても、感情は残る」「接する側の気持ちや状態が、認知症の人の態度に表れる」など、専門医が症状に気づくための9大法則・1原則を示し、認知症本人の世界を理解し大切にする重要性を伝える。

◇第1章 生きていけると伝えたい
◇第2章 家族の責任、どこまで 徘徊中、線路に…遺族に賠償命令
◇第3章 どうする一人暮らし


第1章 生きていけると伝えたい

◎42人がウェブを通して語る思い
 認知症の本人と介護家族が体験を語る動画などを見ることができるウェブサイト「認知症の語りデータベース」が公開された。合計42人の「語り」には、「認知症を知ってほしい」との思いがこもる。9月21日は世界アルツハイマーデー。
 栃木県下野市の若井晋(すすむ)さん(66)=サイトでは匿名=は59歳のとき、若年性アルツハイマーと診断された。動画では、最初におかしいと感じたときのことを、言葉を探しながら丁寧に語っている。
 「ええと……字が書けなくなったのが、まあ最初ですね……その後、何か、こう自分で、こう、てん、何ていうかな(中略)はっきり見えないような、こう、こう感じがいつもあって」
 晋さんは脳神経外科医。語学が堪能で、東大教授として国際地域保健を研究していた。それだけに「なぜ自分が」という思いが強く、当初は変調をなかなか受け入れられなかった。
 妻の克子さん(67)は動画で「もう(夫が病院に)行きたがらなくて」と当時を語る。「できなくなったことを紙に書き出して、『やっぱり一度行ったほうがいいんじゃないかな』と主人に見せました」
 駅で迷って帰れなくなった、現金自動出入機(ATM)でお金をおろせなくなった……。晋さんはそれを見てしばらく考え、「じゃ、行くよ」と答えた。通院を促されるだけだと反発してしまうが、具体的な状態を確認し、受診が必要だと納得できたようだった。
 診断から7年。4人の娘・息子は自立し、2人暮らし。晋さんがいつの間にか外出しており、探し回った日もあった。症状は徐々に進み、トイレにたどり着けなかったり、靴を履く際に左右を戸惑ったり。それでも2人はお互いの顔を見て、よく笑う。克子さんは「病気になってどうしようと戸惑う段階を乗り越えたら、また新しい生活があるんですよ」と話す。
 アルツハイマーになったら何もできない。かつて晋さん自身がそう思っていた。しかし認知症を公表していた豪州のクリスティーン・ブライデンさんの来日講演を聞き、自分の症状に向き合えるようになった。動画の語りには、今度は自分が認知症の実情を伝えたいという思いがにじむ。
 「アルツハイマーでもちゃんと、あのー生きていくことができるんだっていうことを、わたしが、少なくともわたしが、あの、声、声を出していきたい、というふうに思うんですよね・・・

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この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

これが認知症の世界です 本人と家族と社会、みんなで共に生きよう
216円(税込)
  • 著者石井暖子、中林加南子、立松真文、友野賀世、伊豆丸展代
  • 出版社朝日新聞社
  • 出版媒体朝日新聞

「アルツハイマーでも生きていけるんだ」「変に隠さない方がサポートしてもらえるし、気が楽だ」。認知症を知ってほしいと、本人と家族42人がウェブで語る。認知症が原因で社会に損害を与えたら、責任は介護家族にあるのだろうか。何か補償の仕組みはないのか。「一人暮らしの認知症」への対応はどうすれば……。「記憶は無くなっても、感情は残る」「接する側の気持ちや状態が、認知症の人の態度に表れる」など、専門医が症状に気づくための9大法則・1原則を示し、認知症本人の世界を理解し大切にする重要性を伝える。[掲載]朝日新聞(2013年9月21日〜10月19日、5800字)

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