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政治・国際
朝日新聞社

海の資源争奪戦 日本の海洋政策「失われた10年」を取り戻せ

初出:2013年11月4日〜11月5日
WEB新書発売:2013年11月15日
朝日新聞

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 パプアニューギニア、フィジー、沖縄など太平洋の海底には、金やコバルトなど豊富な鉱物資源が眠る「熱水鉱床」が広がる。「海をどう生かすか」。近年、中国、韓国、欧米など、探査権を獲得して開発に乗り出す国が急増している。一方、日本は法整備に手間取って大きく出遅れた。自前の産業基盤作りも課題だ。危険で高コストの「原発依存」を改め、割安なエネルギー・鉱物資源の確保が急務の日本は海洋資源立国へ進むことができるのか。国際機関など関係者の話や資料を交え、主要国の海洋資源争奪の現状を追う。

◇第1章 天然ガスの楽園 パプア開発合戦
◇第2章 海洋開発、日本も本腰


第1章 天然ガスの楽園 パプア開発合戦


 赤道のすぐ南、太平洋に浮かぶ700の島々からなるパプアニューギニア。2013年9月、最大のニューギニア島の中部の町、キウンガからヘリコプターで東に15分飛ぶと、地平線まで広がる熱帯雨林の奥地に突然、鉄塔が立つ「基地」が現れた。オーストラリアの資源開発会社、ホライゾン・オイルの天然ガスの探査現場だ。


 高さ約50メートルの掘削機が泥水をはきながら地下2300メートルを掘り進む。双発ヘリが時折、ワイヤにぶら下げた資材を落とす。「周りにあるのは木だけで道路もないから」と現場責任者のグラスダル氏(57)。大阪ガスなどとの共同事業で、19年の天然ガスの生産開始を目指している。
 パプアでは700超の部族が土地を管理。境界や権利があいまいでインフラも未整備だった。急成長の新興国が資源を消費するようになり、各国企業が「ラストリゾート(最後の楽園)」と乗り込んできた。
 先陣を切ったのが米石油最大手エクソンモービル。09年にパプア初の液化天然ガス事業に着手。約190億ドル(約1兆9千億円)を投じ、14年後半から年間690万トンを生産する。半分は日本向けだ。日本の年間輸入量の約4%にのぼる。
 海の底へも熱い視線が注がれる。東部の島の沖合ではカナダの資源開発企業ノーチラス・ミネラルズが世界初の海底鉱物資源の商業開発を進めている。水深1600メートルから銅や金を採取し、中国に輸出する計画だ。

◎豊かな海底 争奪
 四国とほぼ同じ大きさのフィジーは金や銀の産出国。大規模な銅の採掘に向けた調査も進んでいる。広大な海が、この南太平洋随一の人気リゾート地を「資源大国」の座に押し上げようとしている。
 どの国も、海岸線から約370キロ沖までを「排他的経済水域(EEZ)」として、鉱物資源の存在を調べたり開発したりする権利を持っている。
 フィジーのEEZ内の海底には金や銀、亜鉛などを含む「熱水鉱床」が広がっているとみられ、カナダのノーチラス・ミネラルズや韓国政府が探査権を得ている。土地・鉱物資源省のマラカイ・フィナウ鉱物開発局長は「いま韓国勢がリードしている。順調にいけば数年後に採掘を始めるだろう」と話す。
 韓国は自国の周辺の海に有望な海底資源がないため、太平洋進出に熱心だ。トンガ海域でも熱水鉱床の探査権をとっている。
 どこの国の領海やEEZにも入らない公海での権益争いはもっと激しい。
 公海の海底資源は「人類共同の財産」(国連海洋法条約)。欲しい国は、管理者の国際機関「国際海底機構(ISA)」から探査権を得る必要がある。
 ISAによると太平洋では10年の時点で、日本、フランス、ロシア、中国、韓国など7カ国が、マンガンと鉄が主成分の「マンガン団塊」の探査権を取得していた。
 13年に入って日本が中国とともに、コバルトやニッケル、白金などを含む「コバルトリッチクラスト」の探査を認められた。現時点で太平洋で探査権を持つのはのべ14カ国、3カ国が申請中という急増ぶりだ。
 「太平洋にはあらゆるタイプの鉱物資源がある。世界で最も豊かな地域だ・・・

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