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医療・健康
朝日新聞社

介護だって、やっぱり金儲け 全てのしわ寄せは働き手と高齢者に

初出:2013年9月29日〜10月14日
WEB新書発売:2013年11月22日
朝日新聞

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 超高齢社会を突き進むニッポン。介護業界はまさにバブルの真っただ中にある。相次ぐ大型の企業合併や買収には、「ファンド」や介護ビジネスに参入してきた新興勢力が顔をのぞかせる。「介護を成長産業に」という安倍政権はかけ声は大きいが、結局得をするのは事業者ばかりではないのか。効率最優先で、「償却切れ」の入居者たちは追い出され、低賃金のままの働き手は疲弊して施設の体制は貧弱になっていく。迷路の出口は、どこにある?

◇第1章 介護バブル、群がるファンド
◇第2章 「なぜ突然値上げするのか」
◇第3章 「介護施設を選挙事務所」
◇第4章 「医師や介護スタッフ来ない」


第1章 介護バブル、群がるファンド

 介護業界が熱いまなざしを送る大型M&A(企業合併・買収)の交渉が大詰めを迎えている。
 「かなりのプレミアム(買収額への上乗せ)がつくとは思ったけれど」
 有料老人ホームなど約30の施設を運営する生活科学運営(東京)の買い手を決める交渉。買収に動いた大阪の中堅介護事業会社の社長は、買収額が当初の想定よりもつり上がっていることに驚かされた。
 買収候補をしぼる1次入札では、10社以上が応札したといわれる。「2次入札に残った社は、100億円前後の買収額を提示したはず」。買収交渉で複数の社と組んだ金融機関の担当者はこう話す。
 入札は、投資家から募ったお金を元手に投資する「ファンド」のジェイ・ウィル・パートナーズ(東京)が実施した。1年前に別のファンドから引きつぐ形で生活科学運営の経営権を握り、財務を立て直して今回、売りに出した。
 買収が過熱しているのは、介護の需要は増える一方なのに、介護保険から給付されるお金を使って運営する有料老人ホームなどの施設が増えすぎないように、国や自治体が新設の認可数を抑えているからだ。落札するために、本来の価格に上乗せする「のれん代(プレミアム)」の相場は、「年間のもうけの5〜6年分」から最近では「10年分」とうなぎ登りだ。
 東京・白金の高級住宅地にたつ10階建ての「ザ・レジデンス白金スイート」。「50歳以上」という入居制限があるシニアむけ分譲マンションで、訪問介護の事業者や定期的に医師が訪れるクリニックもテナントに入る「サービスつき」を売り物にしている。「村上ファンド」の村上世彰氏が新たに始めたビジネスだ。
 2010年、破綻(はたん)した大手介護業者から安く買い取り、1区画8千万円台〜1億数千万円で販売した。「相場から見て安い価格で売り出したから全部売れちゃった。その後値上がりして資産価値はずっと上がっていますよ」と村上氏は言う。

◎5年で「償却切れ老人」
 「老人ホームころがし」のような例もある。
 東京都渋谷区の有料老人ホーム「トラストガーデン南平台」などの4施設は、介護会社が破綻した後の08年以降、ジェイ・ウィルなどによって少なくとも4回、転売された。



 なぜ転売が繰り返されるのか。ホーム経営の裏側を、あるファンドのマネジャーが明かしてくれた。
 入居の際に家賃を一括して預かる「一時金」を、施設側は入居から一般的には5年間、毎年分割して取り崩し(償却)、「家賃収入」として懐に入れる。6年目からはそれがなくなるので、償却期間を過ぎても入居が続く老人からは、介護費などしか徴収できない――。「長生きすればするほど施設側は収益が出にくくなる。なるべく『償却切れ老人』を減らし、家賃収入が計算できる新しい入居者に入れ替えて収益力を上げ、早めに売ろうとする」
 複数の介護施設で働いてきたある施設長は「けがや病気をきっかけに、『償却切れ老人』を、『医療が必要になったのでうちではもうお世話できる力がない』などと体よく追い出す施設が増えている」という。収益力を高めれば価値が上がり、また買い手がつく。
 「介護を成長産業に」という安倍政権のかけ声とともに、買収合戦が激しくなる。その陰で入居者の安心は遠のき、効率優先のしわ寄せで働く人たちが疲弊する。

◎老人ホームを青田買い
 9月17日にも、新たなM&Aが成立した。
 関門海峡をのぞむ北九州市門司区の住宅街に、リゾート施設を思わせる3階建ての建物がたつ。不動産やカラオケ事業から介護に参入したウチヤマホールディングス(北九州市)が運営している老人ホーム「さわやか和布刈(めかり)弐番館」だ。
 買ったのは、シンガポールに拠点を置く「パークウェイ・ライフ・リート」。「不動産投資信託(REIT〈リート〉)」と呼ばれる金融商品を運営している。不動産を買うお金を投資家から集め、買い取った物件の家賃収入などを「配当」として投資家に返す。ウチヤマからは門司区の施設のほかにも三重県の鳥羽など四つのホームをまとめて買った。
 ウチヤマの山本武博・経営企画室長は「売れたのは開設後1〜2年の施設。どこもまだ半分は空室があるのに、早く成約したいという感じで、まるで青田買いのようだ」という。5施設を計約45億円で売り、ウチヤマには十数億円の売却益がころがりこんだ。
 パークウェイは、リートでは日本国内で最大の介護施設のオーナーになっている。これまで総額800億円で計44件の介護施設や病院を買収してきたが、このうち日本国内の施設が40件を占める。
 「これから団塊世代が後期高齢者になって、介護や関連の市場も成長が見込める。優良な投資先としては世界屈指。日本は買いだ」。パークウェイ・ライフ・リートを運営するヨン・ヤンチャオ最高経営責任者(CEO)は、日本へのさらなる投資に意欲をみせる。



◎効率優先、人員は最低限
 買収合戦の過熱で施設が値上がりしても、その恩恵は働く人に届かない。
 「そんなこと書いちゃダメ。マズいから、書き直して・・・

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