【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

経済・雇用
朝日新聞社

パナソニックシンドローム リストラで巻き返す家電の巨人の苦悩

初出:2013年11月1日〜11月8日
WEB新書発売:2013年11月22日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本を代表する企業の一つであるパナソニックは、2013年9月中間決算で、過去最高の純利益1693億円をあげた。実に3年ぶりの黒字転換だ。ただ、その内訳を見ると、先行きを楽観視できるような状態ではない。為替の影響を除いた実質ベースで、前年同期比マイナス7%の売上減を、534億円の給与カット、215億円の工場集約といった計1202億円のリストラでカバーした結果の利益だからだ。要するにパナソニックの今は、ものを売ってもうかっているとは言い切れない。リストラで得た利益や時間の猶予を、名門企業ははどう未来へつなげようとしているのか。徹底取材で明らかにした。

◇第1章 車・住宅軸に、稼ぎ方模索
◇第2章 続くリストラ、黒字事業も
◇第3章 家電より車、部品売り込む
◇第4章 「家まるごと」新たな柱に
◇第5章 世界定着へ「現地化」追求


第1章 車・住宅軸に、稼ぎ方模索

 「プラズマテレビの時代が終わったら、全員辞めてもらう」
 プラズマを生産する兵庫県尼崎市の工場で、30代の元従業員は2012年、上司から告げられた。「パナソニックは全国に工場がある。職場がなくなるなんて、考えもしなかった」
 だが、液晶テレビに押され、尼崎工場で稼働している建屋は、ピーク時の3棟から、いまは1棟だけになった。同僚たちは次々に会社を去った。自分も3月、早期退職した。
 そして10月31日、津賀一宏社長はプラズマを「13年度末で撤退する」と正式に発表した。プラズマの時代が、終わった。
 パナソニックが「薄型テレビの本命」とたたえてきたプラズマは、今や経営難の元凶とされる。
 「当社は普通の会社ではない。しっかり自覚しなければならない」
 ちょうど1年前の同じ日、津賀社長は13年3月期の純損益が7650億円の赤字に陥ると発表した。原因にあげたのが「家電中心」「国内中心」というこれまでのビジネスモデルと、プラズマをはじめとしたデジタル家電への過剰な投資だった。
 わずか6年前には、デジタル家電を軸に、売上高10兆円をめざす将来像を描いていた。9兆円の売上高を、3年間で1兆円伸ばす。薄型テレビ、ブルーレイ、デジタルカメラ、携帯電話といったデジタル家電で、伸びのうちの7千億円を稼ぎ出す――。
 全国に散らばった工場群も、当時の円安を味方につけ、この計画を支えることになっていた。だが、テレビや携帯は韓国勢などとの安値競争に敗れ、売上高は7兆円余りに減少。赤字も続きプラズマ、国内の個人向けスマートフォンなど軒並みデジタル家電から手を引かざるを得なくなった。
 会見で津賀社長は「テレビは白物の一種」と明言。これを含め「家電2兆円」を死守する方針だ。
 では、パナソニックは何でもうけるのか。
 「自動車2兆円」「住宅2兆円」――。津賀社長は5年後に二つの事業の売上高をほぼ2倍にすると言い続ける。いずれも消費者との間に自動車などのメーカーが挟まり、安定した収益を得やすい。
 4月には、事業ごとの経営責任をはっきりさせるため、全社を4部門49事業部に再編。各部門は、14年3月期からの3年間で売上高を6〜12%伸ばす目標を掲げた。
 それから半年。車と住宅の「ツートップ戦略」は早くも形が見え始め、中間決算の過去最高益を支えた。「事業改革は道半ばだが、方向性に間違いはない」。口調は淡々としつつも、津賀社長の表情には明るさがあった・・・

このページのトップに戻る