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朝日新聞社

「iPhone、行け!」 ドコモ、追い詰められた末の大転換

初出:2013年11月13日〜11月16日
WEB新書発売:2013年11月29日
朝日新聞

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 NTTドコモがついにiPhone導入に踏み切った。スマートフォン開発に乗り遅れた国内メーカーは疲弊し、かつてのような二人三脚は望むべくもない。先にiPhoneを導入したソフトバンクやauに顧客を奪われ、追い込まれたあげくの決断。アップル側の厳しい条件を受け入れたが、もちろんそれで一発逆転とはいかず、顧客流出は続いている。「いまはアップルが勝者」と認めざるを得ないドコモの大転換は、日本の携帯電話業界に何をもたらすのか。

◇第1章 初夏に節目、保秘契約 水面下の交渉6年
◇第2章 自前主義と護送船団の終わり
◇第3章 「アップルが勝者」 安値競争続く
◇第4章 試練の巨人が挑む戦略転換


第1章 初夏に節目、保秘契約 水面下の交渉6年

 破格の扱いだった。2013年9月10日午前(日本時間11日未明)。米カリフォルニア州のアップル本社で開かれたスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」新端末の発表会で、「NTT docomo」の文字が大写しになった。
 「エッていう感じだった」。情報漏れを気にしながら渡米し、会場にいたドコモの社長、加藤薫(62)も知らない演出だった。
 アップル上級副社長、フィル・シラー(53)は「ソフトバンク、KDDI(au)に続き、新しい仲間を迎え入れたい」と言った。
 節目は6月だった。加藤は米国でアップルの最高経営責任者(CEO)のティム・クック(53)と固く握手し、「決定的だった」(関係者)秘密保持契約を結ぶ。細部を詰め、情報漏れなどがなければ9月に発表すると固まったという。
 始まりは6年ほど前。「長い目で見て導入が正しいのか」「他社への契約流出を止めるには、売るしかない」。社内で「毎年の定例」と受けとめられたほど交渉ばかりが断続的に続いた。
 だがNTT首脳は、12年秋にゴーサインを出していたと明かす。指示は「iPhone、行け」だった。
 ドコモが販促費を800億円上積みし、NTTが業績を下方修正したころだ。ソフトバンクとauがiPhone5を売り、顧客の流出が激しくなっていた。
 具体化した交渉を、一つの人事が加速させた。
 独自性と自前の技術にこだわり、導入反対の急先鋒(きゅうせんぽう)と目されてきたドコモのマーケティング部長が昇格し、関西支社長に転じた。内定が伝わった春、業界関係者は「いよいよアップルと組むのか」。アップルにも、ドコモのスイッチが入ったとの見方が広がった。
 日本のマーケットの5割弱をおさえるドコモも、ついに米アップルの軍門に下るのか――。そんな見方もあったが、実際は違ったという。
 交渉のポイントは、携帯電話の販売数に占めるiPhoneの比率だった。5割を主張するアップルに対し、ドコモは2、3割にと考えていた。相いれなかった話し合いは、約4割で歩み寄ったとされる。
 ゲームや動画などのコンテンツを売るドコモ独自のサービスも、iPhoneの画面上で表示できることで折り合えた。
 サービス担当の常務執行役員、阿佐美弘恭(57)は「やりたいと考えたことをすべて説明した」。独自サービス「iモード」などを手がけたドコモへの「リスペクト(尊敬)を感じた」と振り返る。
 情報管理を徹底するアップルは8月下旬、神経をとがらせた。「導入態勢が整った」とのドコモ役員の発言が報道されたからだ。「保秘契約を守れない会社ではないか」。約束通り進めるかどうか、クックCEOに委ねられたとされる。ドコモを知る社員らが「非常に誠実な対応をしている」と説明したという。
 アップルは携帯の世界市場で韓国サムスン電子と激しく競う。シェア首位の日本を固めるため、「ドコモとの契約を流したくないとの思いがあった」(関係者)という。
 とはいえ・・・

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